デートのために服を選ぶのは時代遅れ?
Fashion 2024.12.14
初デートというのは、誰しもが頭を悩ませるもの。その場にふさわしい服装選びとなれば、なおさらだ。しかし、2024年のいま、このプレッシャーがもはや必要ない理由をふたりの専門家が説明してくれた。
2020/21年秋冬パリ・ファッションウィークでの、モデルのマティアス・ル・フェーヴルと歌手のシンデレラ・バルタザール。(パリ、2020年2月25日)photography: Edward Berthelot / Getty Images
11月11日、『ニューヨーク・タイムズ』の読者がファッション批評家ヴァネッサ・フリードマンに対し、初デートのための理想的な服装は「ジーンズ、白いTシャツ、そして黒いブラジャー」かどうかを質問した。ヴァネッサ・フリードマンは、「完璧な服装など存在しないが、白は避けたほうがよいでしょう。大切なのは、全ての意味で自分が快適であること」だと述べた。つまり、2024年においても、ロマンチックなデートのための完璧なコーディネートを見つけることは簡単ではないようだ。特に、2020年以降、コロナウイルスの影響でファッションの様相が様変わりしたことから、より一層その難しさが増している。
現在のトレンドにおいて、"快適さ"はますます重要な位置を占めており、かつてのドレッシーで快適とは言えないアイテムは後退している。ソーシャルメディアで活躍するファッションコンテンツクリエーターのヴァレンティーヌは、数々のデート経験を通じてこの変化を感じ取っている。「私の考えでは、デートで目立とうとする時代は終わりました。準備を整えることは重要ですが、もはやスリットの入ったドレスやボディラインを強調するアイテム、開襟シャツなどは必要ありません」と彼女は語る。彼女にとって、初デートはそれ自体が十分プレッシャーがあるので、快適に感じられる服装が重要で、とりわけ、自分らしくいることが最も重要だと考えている。「完璧な服装とは、自信を持ち、快適に感じることができる服。それは、誰かを演じる服ではありません。」
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ナチュラル志向
このコメントは、初デートでのナチュラル志向が進むもうひとつの要因、つまりTikTokの台頭と関係している。コロナ禍で急成長したこのソーシャルメディアは、競合のInstagramが長年推奨してきた「洗練されたスタイル」に影を落とすのに時間はかからなかった。Z世代が愛用するアプリでは、フィルターなしの短い動画が主流で、他人の目を気にせず、自由に自分を表現する文化が広がっている。TikTokでは、インフルエンサーたちがますます自然体を重視し、自己受容について語り、従来のルールを打破している。その結果、完璧に整えられた服装でのデートが、むしろ「古臭い」と見なされることもある。29歳のロレーナ(元パリ在住、現在カナダ在住)はこう語る。「一番大事なのは、ありのままでいること、リアルな自分を見せること。」彼女は、以前はデートのために必死でクローゼットを空にし、ルームメイトに助けを求めていたが、今ではシンプルな信念に基づいている。「今は、自分が心地よく感じる服だけを選んで着ることにしています。」
彼女にとって、この問題は主に女性に関係しているものだ。「正直に言うと、この不安を感じるのはほとんど女性だけだと思います。デート前にクローゼットを空にする男性の話は聞いたことがありません。女性はデートのためにかなりのエネルギーを使っておしゃれをするのに、デートの場所に着いてみると、目の前の男性はカーハートのジャケットを着ているなんてことも。そんなに気にしても仕方ないじゃないですか?」ヴァレンティーヌは、過剰に頑張ることはしない方がいいという考えだ。「過剰にエレガントすぎたり、セクシーすぎたりするのは古臭いです。男性がシャツを着てきた時、そのシャツが初対面のためだけのものなのか、普段のスタイルなのかはすぐにわかります。それが気になります。」ファッションの専門家である彼女は、「着飾ること」が初デートでの駆け引きのひとつであることは認めつつも、自然体のほうが断然好ましいと感じている。結局、誰でも白いスニーカーを履いているほうが、バックル付きの靴を履いているよりも、ずっと親しみやすく、少しは堅苦しさが減るものだからだ。
映画『プリティ・ウーマン』(1990年)でジュリア・ロバーツがデートで着た赤いドレス。photography: Kirk McKoy / Los Angeles Times via Getty Imag
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自分らしくいること
映画が示す例は、確かにプレッシャーを与えがちだ。『ラ・ラ・ランド』でのライアン・ゴズリングの完璧なキャメルスーツ、『グリース』でのオリビア・ニュートン=ジョンのシャツ、そして『プリティ・ウーマン』でのジュリア・ロバーツのハリウッド風の赤いドレス......。スタイリングの観点から言えば、映画のデートシーンは非常に高い基準を設けている。そのため、こうした衣装を事前に考えて準備しなければならないものだと、誰もが思い込んでしまうのは当然のこと。しかし実際には、そんなにプレッシャーを感じる必要はない。
「映画のデートシーンでは、カジュアルな服装の人物を見た記憶がありません」とロレーナは語る。「ただし、2024年のドラマシリーズ「Nobody Wants This」におけるクリステン・ベルは別かもしれません。彼女はとても自然体で、デートの時に着ている服はすべて私も家にあります。」このNetflixで大ヒットしたロマンチックコメディドラマでは、ジョアンというキャラクターがシンプルなスタイルを選び、最初のエピソードから「エミリー、パリへ行く」のアンチ・ヒロインとして位置づけられている。「アレクサ・チャンのように、ジョアンは控えめで女性らしいルックから、ロックでセクシーなスタイルに変わることができ、時には、同じ一日でその変化を見せることもある」と雑誌「マリー・クレール」の記事で触れられている。「この例は励みになります。なぜなら、子どもの頃から私たちは『魅力的であること』を教えられてきたからです」とロレーナは続ける。
服装を気にせず出かけることには、良い面もあるかもしれない。「気になる男性と出会ったとき、その日はとても女性らしい服を選びました。でも翌日、ジーンズにバギーとボンバージャケットを着て道を歩いていたら、偶然彼に再会。その瞬間、彼の視線が変わったのに気づいたのです......その方が彼はずっと気に入っていたようでした。」それなら、ロマンチックなディナーの際、ネクタイやハイヒールはもはや必要ないのだろうか? もし自分に似合っていて、快適に感じるなら、そんなことはない。場所によってドレスコードを必要とする場合もある。「デートに出かける前の服装の感じ方は、その日のデートの結果に影響する」とロレーナは締めくくる。だからこそ、自分の直感を信じることが大切なのだ。
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From madameFIGARO.fr
text: Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi