考えずに色を混ぜる:2025年に始まるファッショントレンド「ミキシマリズム」とは?
Fashion 2025.01.15
「今年のファッショントレンドは(〜中略〜)大胆な柄や多様なプリント、虹のように色を重ねた究極のミキシマリズム(Miximalisme)です」。Pinterestで公開されたファッションの最新レポートでは、2025年の主要トレンドのひとつ「ミキシマリズム」がこう紹介された。これまで唱えられていたクワイエットラグジュアリーとは全く異なる、色を多用した個性的なスタイルトレンドを色彩のエキスパート、ジャン=ガブリエル・コースが解説する。
ミキシマリズムとは、2つの要素を組み合わせた造語で最初の「ミキシ」は混ぜること、後半の「マリズム」は過剰で豊かなものに美しさを見出すことを指す。つまりPinterestの予測では、2025年のトレンドスタイルは、必ずしも調和しないモチーフ同士やカラー同士を組み合わせること。このトレンドは、インテリアにもファッションにも当てはまりそうだ。
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これまでは、"3色でコーディネートの原則"(やぼったく見せないために3色以内でコーディネートしようというカラールール)が唱えられていたけれど、色彩の専門家で『色の力 消費行動から性的欲求まで、人を動かす色の使い方』(日本では吉田良子訳、CCCメディアハウス刊)の著者である、ジャン=ガブリエル・コースに言わせれば、これは極めてフランス的な"エレガンスの指針"なのだそう。「3色までと考えること自体、3つの音だけでシャンソンが作れると言っているに等しい考え方。フランス人の多くがビビッドカラーを恐れています。1色使うだけでも一苦労で、それ以上なんて考えも及ばないでしょう」。
さらに続けてこうも指摘する。「たとえば同系色で考えてみましょう。色合いがバラバラのベージュのクッションを3つ並べたら、チグハグになりがちです。ですが10個並んでいたら、収まりがいいかもしれません。今回のトレンドは、複雑さが調和をもたらすものなのです」。
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ランウェイではこれまで、シックで控えめなクワイエットラグジュアリーが主流だった。ここ2年ほどはミニマリズム全盛時代だっただけに、今回のトレンドには意外性を感じる人もいるだろう。ところが、ミキシマリズムは流れを完全に逆転させる。陽気なビタミンカラーを直感的にコーディネートして着る時代がやってきたのだ。真っ赤なセーターにワインレッドのレザージャケットを合わせ、マスタードイエローのベルベットパンツ、フォレストグリーンのストラップシューズといった感じ。
この最新トレンドには、色に関するこれまでのタブーやルールを一掃する効果がありそうだ。これまで「ピンクと赤」「紫と緑」「ネイビーと黒」「オレンジと黄色」は避けるべき色の組み合わせだったけれど、何十年も前からタブー視されてきたそんな組み合わせも「あり」になる。プリントもしかり、ストライプとドット、チェック柄と千鳥格子、ヒョウ柄とパイソン柄をミックスしたってOK! 2025年のパントン・カラー・オブ・ザ・イヤーであるブラウンカラー「モカムース」なんておとなしすぎて古臭く感じるぐらいだ。
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カラースタイルは1980年代からのカムバック。
カラフルファッション自体は新しいものではない。1970年代末から1980年代初頭にかけて(正確には1973年の第一次オイルショック後)、カラフルなファッションが流行った時期があり、「1980年代の、不況から脱した時代に人々はビビッドカラーの服を着ていました。色の調和を無視することが1980年代のクチュリエにとってひとつの挑戦だったのです。当時のイヴ・サンローランやクリスチャン・ラクロワは、赤とピンクをよく組み合わせていました」(ジャン=ガブリエル・コース)
1990年代にはその熱はおさまり、ミニマリズムがランウェイもストリートも支配。カルバン・クラインの無地シャツがファッショニスタのスタンダードとなった。クチュリエのコレクションもショップのウィンドーもすっきりしたスタイルに移行し、黒が復活。これは、2007年から2008年頃にかけてトレンドで世界的な金融危機に揺れた不安がつきまとう時代のこと。そして今、コロナ禍を経てカラフルファッションがついにカムバック。復活の中心は2000年代初頭の派手なファッションを懐かしむSNSコンテンツクリエーターたちだ。「色はハッピーであることを決して忘れてはなりません」とジャン=ガブリエル・コースも語る。
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北欧がトレンドの発信地!
陽気なカラートレンドが再登場した裏にはコペンハーゲンの存在がある。コペンハーゲンはここ数年、ファッショントレンドの発信地のひとつだ。快適な素材、大胆なシルエット、ミニマリズムとマキシマリズムを融合させたスタイル、そしてとりわけ色使いが特徴的。ビタミンカラーを多用してセーターやシャツ、ワンピースを重ね合わせ、トータルルックでも提案する。制約のない大胆なスタイルからたくさんのマイクロトレンドが生まれ、インスタグラムのアルゴリズムに乗ってヨーロッパ中のファッショニスタに広まったのだろう。結果として、コペンハーゲンのファッションウィークはいまやニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリと並ぶ場所となっている。
デンマークのブランド、ガニーがコンテンツクリエーターに支持されて成功を収めたのも北欧の強いDNAのおかげだ。強烈なプリントとブライトカラーをこよなく愛するバーバラ・ポッツとキャサリン・サックスのデザイナーコンビが手掛ける、サックス・ポッツの名前もしかり。そしてもちろん、最初に国際的な成功を収めたスウェーデンのブランド、アクネストゥディオズも。「スペインのデシグアルも、新しく生まれ変わろうとしているハイパーカラー・ブランドですね」とジャン=ガブリエル・コース。
では、誰もが上手にミキシマリズムを取り入れることは可能なのだろうか?これには、ジャン=ガブリエル・コースは、「やってはいけないコーディネートもカラーパレットもない」と断言。大切なのは「無理せず直感に従いながら、3色以上を使ってみることです」。ミキシマリズム・ルックを成功させるカギは恐れを捨てて、悩まず無心にワードローブから選び取ること。「私に言わせれば、最良のお手本はエルメスです。スカーフには3色よりもずっと多くの色が使われています。でも誰もエルメスのスカーフが趣味悪いと思わないでしょう?」
「ミキシマリズム」:複数の色をスタイリッシュに着こなしたLOOKたち。
photography : Launchmetrics
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From madameFIGARO.fr
text : Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr)