日本発のデイリーラグジュアリーブランド、セアンがパリで秋冬コレクションを発表。
Fashion 2025.03.28
3月初旬、10日間にわたって開催された、パリ・ファッションウィーク。同期間には公式日程だけで70以上のショーと40近いプレゼンテーションが行われるほか、世界各国からやってくるクリエイターが新コレクションを発表する。このファッションウィークで、生まれて間もない日本発のブランドが世界に向けて発信した。
セアン、25−26秋冬コレクションより。巻きつけるように着るコート、ニットウエア、パンツの組み合わせ。
SCEARN―セアンは、聞香(hear the scent)、瞑想(meditation)、伝統(tradition)からとったアルファベットを組み合わせた造語。「心の声を聴き、自分と向き合い、自分らしさを見失わない」という気持ちで日本の伝統美をモダンに再解釈して世界に発信しようというデイリーラグジュアリーブランドだ。24年10月、オンラインショップとして誕生。昨シーズン、デビューコレクションをパリで発表し、今回は2回目のパリでのお披露目となる。
セアンがクリエイティブディレクターに迎えたのは、韓国のコンテンポラリーブランド「ARCH THE」を発信するクリエイター、ウンシル・ジュ。隣国の感性が汲み取る日本の伝統と芸術のエッセンスを、上質な素材とミニマルで清々しいデザインに表現したセアンのコレクションは、ファンを少しずつ増やしている。
ストール、ニット、スカートの同色コーディネート。
25−26秋冬コレクションが発表されたのはマレ地区のショールーム「IDEAL」。いずれも東洋発の6ブランドが集まる空間は、アジアに共通する静かな空気に満ちている。
セアンの秋冬コレクションは「包む」がテーマ。包むという行為に秘められた相手への尊敬、オブジェへの敬意、自分自身の謙虚な気持ちへと思いを馳せながら、包むという行為から生まれるねじり、結び目やドレープの表情をデザインに昇華。白と黒、 茶を中心に、赤と紺を差し色に交えた無地ばかりのコレクションだけに、素材と仕上げの美しさが際立つ。
山形産のシルクサテンオーガンジー、徳島の顔料染めを施したウォッシュドナイロン、環境配慮型のロープ染色で染めた広島のデニムや近江晒加工による風合いが特徴のテクスチャードコットンなど、日本の手仕事から生まれる上質素材にこだわった服作りもまた、このブランドの信条だ。
捻ったディテールがポイントのジレとスカート。
身に纏うとドレープが出るブラウス、パンツにオーガンジーのスカートをコーディネート。
ふんわり肩を包むストール、ニット、パンツの組み合わせがモダン。
日本の価値観をモダンな形で発信し、世界に目を向けたいというセアン。
身に纏うことによって表情が生まれる服は、日本の着物にも通じる。優しく肩を包むケープ、ダブルフェース仕上げのコート、袖を通すと美しいドレープが生まれるトップスなど、やさしく体に寄り添ってくれるワードローブは、いまの気分にぴったりだ。
text: Masae Takata(Paris Office)