世界一高価なオリジナル・バーキンを購入した日本人元サッカー選手とは?
Fashion 2025.09.08
彼はプロサッカーリーグのフォワードとして活躍後、中古ブランド市場の起業家に転身した。そしてこの度、オリジナル・バーキン、すなわち1984年のジェーン・バーキンとジャン=ルイ・デュマの出会いから生まれた、かの有名なエルメスのバッグのプロトタイプを860万ユーロで購入した。
彼がファッション界で羨望の的となるのに要した時間はたった13分33秒。2025年7月10日、パリのサザビーズのオークションで嵜本晋輔(さきもとしんすけ)は「最初のバーキン」・バッグを860万ユーロで落札した。ハンドバッグの落札価格としては史上最高額となったことで、この43歳の元日本人サッカー選手は一躍注目を浴びることになった。
ピッチからオークション会場へ
サザビーズのオークション会場をどよめかせる前、嵜本晋輔は日本のスタジアムを熱狂させていた。日本のJ1リーグでフォワードとしてプレーしていたのだ。だが早々に引退すると心機一転、ビジネスの世界へ身を投じた。こうして彼が立ち上げたのが中古ブランド品を扱う会社、今日の「「バリュエンスホールディングス」だ。「ヴァニティ・フェア」誌によれば、同社は通販サイトの「Allu(アリュー)」やアートラウンジ「Valon(バロン)」を運営しており、日本における中古品市場のメインプレイヤーのひとりだ。
今回世界最高額で落札された「オリジナル・バーキン」は日本へ到着次第、展示発表会がおこなわれる予定となっている。ただしこのバッグが市場に出回ることはないだろう。「転売目的で購入したのではなく、世界的な文化遺産を守り、広く社会に共有するという大きな意義」のためだと本人自らSNSで発信しているからだ。「この取り組みが持続可能性と文化の保全という当社の価値観と一致する、社会的に意義のあるものだと信じており、こうしたコミットメントを体現するため、保管・展示してまいります」とも英語で語っている。
影のコレクター
彼のInstagramアカウントのフォロワーは7,000人余り。嵜本晋輔は派手な存在ではないが、その投稿からは、洗練された趣味の持ち主であることがうかがえる。2015年に早くも高級ブランド「トム・ブラウン」を着た姿が確認されているし、日本国内の選ばれた場所に建つ個性的な建築作品をセカンドハウスのように使える「Not A Hotel」にも好んで滞在する。
所有するプライベートコレクションには、日本人アーティストVerdy(ヴェルディ)の作品、イギリス人画家ジョージ・モートン・クラークの油彩画、ダミアン・ハーストの「桜」シリーズの版画などが含まれている。ただ彼が「オリジナル・バーキン」を落札するとは誰も予想していなかった。
購入者の正体が明らかになるまで、SNSでは多くの憶測が飛び交った。多くの人が、ラグジュアリーな趣味で知られ、世界有数の富豪ジェフ・ベゾスと最近結婚したローレン・サンチェスではないかと考えていた。また一部では、すでに驚異的なバーキン・コレクションを保有し、2024年にクロコのモデルを7万ドルで転売したキム・カーダシアンではないかとの声もあった。
歴史に残るオークション
このオークションはすでに歴史に名を刻んだ。昨年10月、パリのフォーブール・サントノレ通りに移転したパリのサザビーズ本社で厳重な警備のもと、展示されたオリジナル・バーキンは、長年にわたって多くの女性たちやファッション愛好家の「究極の理想」だった。実用的でミニマル、なのにとてもフェミニンなバッグは、ジェーン・バーキン同様、言葉では言い表せない魅力を持つがゆえに世界中の憧れとなり、ポップカルチャーの象徴ともなった。
シャルロット・ゲンズブールの母であるジェーン・バーキンが10年間愛用したこのバッグは、2000年5月にパリのヴィンテージ専門店「レ・トロワ・マルシュ」のオーナー、カトリーヌ・Bに売却され、2025年7月10日、誕生から40年以上を経て、嵜本晋輔の手に渡った。
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text: Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr)