ジャック・マリー・マージュの世界に没入できる、日本初のフラッグシップギャラリーへ。
Fashion 2025.09.12
ロサンゼルス発のラグジュアリーアイウエアブランドのジャック・マリー・マージュ(以下JMM)が、日本初となるフラッグシップギャラリーを表参道にオープン。
JMMのこだわりの製品の数々はもちろん、創設者ジェローム・ジャック・マリー・マージュとSIMPLICITY主宰の緒方慎一郎のコラボレーションによる空間も必見。エントランス奥には、書家・新城大地郎による「母」の書が飾られている。
JMMは、ジェローム・ジャック・マリー・マージュによって2014年に設立されたブランド。ロサンゼルスを拠点に、文化・大陸・時代を横断するインスピレーションをもとに、限定生産のラグジュアリーアイテムを展開している。製品は日本とイタリアの熟練職人の手で製作され、伝統技術と先端的な生産手法を融合させた"現代の遺産"ともいえる逸品を生み出している。

3階建ての本ギャラリーは、芸術性と職人技の聖域ともいえる空間であり、JMM限定生産のアイウエアをはじめ、レザーグッズ、ジュエリー、アートオブジェが日本の職人文化と美意識への敬意とともに、没入感ある空間で展開。空間の設計は、建築、インテリア、和食・茶道・和菓子といった日本の文化芸術を融合させたデザインで知られる、SIMPLICITY(シンプリシティ)主宰の緒方慎一郎とのコラボレーションによって実現した。ジェローム・ジャック・マリー・マージュとのコラボレーションについて、緒方は「ジェローム氏は日本文化への興味も深く、共通言語が多くありました。引き戸を引く所作、職人的な細部へのこだわり、華美な装飾性を廃したミニマルさなど、度重なるディスカッションですり合わせながらデザインを微調整していきました」と語る。
プライベートレジデンスのような親密な空間が広がる。
ジェロームと緒方は、ギャラリー空間を「船」に見立て、ギャラリーのエントランスを「マザーシップ(母船)」と名づけた。「1階は船体の中に入ったような床壁天井が檜で構成された空間から始まります。奥には『母』の書がJMMのカラーを彷彿とする漆の赤で縁取られ、キーワードである"母船"を象徴する空間となります」と緒方は語る。
神聖な素材である檜で仕上げられた床と壁に囲まれた空間の奥の書は、宮古島出身の書家・新城大地郎によるもの。彼の祖父は高名な禅僧であり民俗学者の岡本恵昭。それを受け継ぎ、禅や沖縄の精神性を背景にしたその書は、伝統的な書を現代的に再解釈した作品となっている。「母」の一字に込めた想いについて新城は、最近父親となった自身の経験とあわせて「JMMの哲学と思想から生まれたアイデアから、職人一人ひとりの手仕事によって誕生するJMMの作品は、唯一無二の命が誕生する奇跡と同様、美しいものがこの世に放たれた証だと思います。それらを育む母体は創造性と愛を持った無限のエネルギーです。我が子が誕生する以前、大きなお腹に耳を当てた時に私に跳ね返してきた子どもの鼓動を忘れません。そんな鼓動がまるで聞こえてくるような、生命力を感じるような作品『母船』を目指しました」と述べる。
生命力にあふれた新城大地郎の書。
船のエンジンルームに見立てた地下1階は、「JMMの心臓部」。「メガネをお客様一人一人のために仕上げていくアトリエをもち、一枚板のカウンターはお客さまが選んだメガネと静かにゆっくりと対話する場所となります。2階はキャプテンキャビンをイメージし、ジェローム氏の好奇心を詰め込みました。古い美術品、家具、書物、オブジェがジャック・マリー・マージュのデザインの種を感じさせてくれます」と緒方。2階はジュエリーおよびカスタム専用スペースも擁し、そこでは江戸後期の六曲屏風が設られたバーで、ゲストはウイスキーを片手にゆったりとくつろぐこともできる。一方地下1階ではシンプリシティ監修による和菓子とお茶でおもてなし。ここには新城のもうひとつの作品も展示され、時間と感性をめぐる旅にさらなる詩情を添える。
地下1階では、新城のもうひとつの作品を観賞しながら、シンプリシティ監修の和菓子とお茶もいただける。
空間全体は、まるでプライベートレジデンスのような親密さを醸し出し、アメリカ西部、フランス帝政期、日本の歴史からのインスピレーションが絶妙に融合。希少な骨董品や芸術品、瞑想石などの博物館級の品々が展示され、それらはナバホ族のラグ、ヴィンテージのイタリア製チェア、17世紀ヨーロッパの光学機器の壁と巧みに対比されている。
JMM 東京 表参道ギャラリーは、JMMのグローバルなビジョンを日本ならではのかたちで体現している。伝統と革新が調和する、美意識と職人技の聖域だ。「Embrace The Spectacle(この壮麗さを受け入れて)」への招待状を手に、美しき"母船"に乗り込んで。
本ギャラリーには、13世紀の大鎧や19世紀の陶器製の籠、希少な能面のコレクションなども展示されている。
表参道の並木道からほど近い閑静な場所に佇むギャラリー。
text: Natsuko Kadokura