Kawakyun 手の中のレザー小物をアートで彩る、ヘラルボニーの挑戦。
Fashion 2025.11.15
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既存の美術の枠にとらわれない発想で制作された芸術作品を世界へと広げるヘラルボニー。鮮やかなアートを纏ったレザー小物に込められた想いとは。

「異彩を、放て。」 ――心を射抜くこの言葉を掲げるヘラルボニーは、主に知的障害のあるアーティストたちの作品をもとに、ライフスタイルを彩るプロダクトを生み出してきた。身に着けるだけで心が明るくなるような色彩や、既成概念を超えた自由な表現が、小さな驚きと喜びをもたらしてくれる。そんな彼らが新たに手がけるのは、上質なレザーとアートが出会った美しい小物たち。その背景にある物語を聞いた。
ヘラルボニーを立ち上げたのは、岩手県出身の双子の兄弟、松田文登さんと崇弥さん。「自閉症の長兄へ向けられる冷たい視線を変えたい」という信念と、幼い頃から触れてきた福祉の世界を「特別なもの」ではなく「ひとつの文化」として広げたいという想いが原点にある。ヘラルボニーのアイテムには、誰かの才能を日常に迎え入れるという、温かなストーリーが息づいている。コラボレーション事業も数多く手がけ、近年は鉄道や空港の空間ラッピングなどを展開する。障害のあるアーティストと企業との橋渡しとなり、日本発のソーシャルブランドとしても注目を浴びている。
日常に寄り添う革小物をキャンバスに。
そんな松田兄弟の情熱的な活動に共鳴し、長年勤めた大手アパレル企業を離れ、リテールディレクターとして加わったのが大平稔さんだ。バッグやスカーフ、インテリアにまで広がる鮮やかなコレクションを通して、アートと人、人と社会を繋ぐ存在感のあるアイテムをいくつも生み出してきた。

アパレルブランドでの25年のキャリアを経て、2024年よりヘラルボニーのリテールディレクターとして活躍する大平稔さん。「異彩を放つ作家が持つ"本物"の魅力や美しさを届けたい」と、日々社会とアートの橋渡しをする活動を続けている。
「アーティストの原画は一点もの。だからこそ、より多くの人に触れていただけるように、プロダクトという形に落とし込んでいます。障害のあるアーティストの作品に出会えるタッチポイントを増やすために、どんなアイテムなら日常に寄り添えるのかを常に考えています」
ヘラルボニーのアイテムには、ペイント作品を織りで表現したネクタイや、線画の細かなタッチをプリントした大判のスカーフやバッグなどの布製品が多いが、昨シーズンよりレザー小物のラインもスタートした。名刺入れやキーケース、スマートウォレット、メガネケース、IDケース。手に収まるサイズの革製品は、使うほどに愛着が深まる存在だ。そこにアートを纏わせることで、さらに特別なものへと昇華する。

カードケースやIDケース、キーケースやメガネケースなどの、ヘラルボニーの革小物。別売りのストラップに、重ね付けしていく楽しさも。
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原画の色彩を再現し、上質なプロダクトに仕立てる職人技。
制作を担うのは、東京に直営店を構えるエルゴポック(HERGOPOCH)。メイド・イン・ジャパンの技術を誇る革製品の老舗との協働で、上質なアイテムが誕生した。ヘラルボニーが採用するレザーは、ドラムの中で丁寧に革を打ちほぐし、自然なシワやシボを生かした柔らかな質感の牛革。
「課題のひとつは、原画の色彩を忠実に再現できるかどうかでした。濃淡を細かく調整し、4〜8パターン近く色出しするなどし、より原画に近い色を一緒に探していきました。さらに、内側の無地の革色バリエーションがあるかどうかもとても重要でしたね」
たとえば、独自のタイポグラフィーを描くmarinaさんの作品をプリントしたカードケースは、ベースとなる白いレザーの上に鮮やかな赤を重ねることで、文字を浮き立たせた。透明度の高い水彩を操るSATOさんの作品では、淡い色の重なりが美しく再現されている。いずれも作品の世界観と響き合うカラーレザーの内張が施され、開いた瞬間にも心躍る。

アーティストの描いた作品がプリントされたカードケース。左はmarinaさん、右(写真提供:ヘラルボニー)はSATOさんによるもの。
工房での製造過程も、手仕事の積み重ねだ。半裁(牛一頭分の革を背中で二分割したもの)の牛革を職人が丁寧に伸ばし、均一な張りを保ちながらプリンターにかける。ロスを極力出さず、手間を惜しまないその姿に、大平さんも感銘を受けたという。さらにカードケースの縁を仕上げる「菊寄せ」の技法は、ごく限られた職人だけが成し得るもの。ミリ単位で革を寝かせながらカーブを整える姿は、まさに匠の技そのものだ。
「革の魅力は、耐久性があり、経年変化を楽しめること。買った瞬間の美しさが、時間とともに柔らかさや風合いを増していく。長く愛され、簡単には手放せない存在になってほしいと思っています」

四隅に生じる革のたるみを、細かく均一にヒダを寄せて処理する「菊寄せ」。カードケースの内張に使われている美しいカラーレザーも魅力。
日本の革職人の技と、アートが織りなす新たな価値。そこに宿るのは"長く愛されるものになってほしい"という想いだ。さらに大平さんは、オールレザーのバックパックなどの新作にも挑もうとしている。
「自分で選んだ"お気に入りのアート"を、日常に持ち歩けること。それを自分で選べるということが、"意思の自由さ"。それこそが、ヘラルボニーの考えるラグジュアリーの本質なんじゃないかなと思うんです」
現在、ヘラルボニーは国内で243名の障害のあるアーティストと契約している。2024年からは世界規模のアートプライズを開催し、パリにも拠点を設立した。情熱を糧に生まれるアイテムは、革というキャンバスを纏い、世界へと羽ばたいていく。

ヘラルボニーの常設店舗「HERALBONY LABORATORY GINZA」。アーティストたちの作品を纏った衣類や小物が、数多く並ぶ。隣はギャラリースペースとなっていて、アーティストたちの原画が展示されたりイベントが開催されたりしている。
「日本では障害のある人が人口の9%以上を占めるといわれていますが、日常で交わる機会はまだ少ない。けれど家族や親戚に目を向ければ、その存在はもっと身近なはず。だからこそ、日常のアイテムを通じて、その見えない壁を取り払っていきたいんです」
アートとファッションが共鳴し、社会に新しい風を吹き込む。ヘラルボニーの革小物は、使う人の手の中で物語を紡ぎ、文化として根づいていく。
https://heralbony.com/
*日本タンナーズ協会公式ウェブサイト「革きゅん」より転載
photography: Mirei Sakaki text: Miki Suka





