なぜCFCLは特別なのか。デザイナー 高橋悠介がブランドの哲学と美意識を語る。
Fashion 2025.12.07
ダンスなど身体表現との親和性が高い服作りをするジャパンブランドにクローズアップ。3Dコンピューター・ニッティングの技術を使い、着ることで地球にも貢献ができる、まさに現代らしいブランドの核に迫る。
CFCL

©FukukoIiyama/EOL
愛の物語を綴る『EOL』では、シームレスな衣装が踊りにさらなる浮遊感を纏わせた。
イッセイ ミヤケ メンのデザイナーを経て独立した高橋悠介が、21年春夏コレクションからスタートさせたCFCL(シーエフシーエル)。"現代を生きる人々の道具としての衣服"を標榜し、洗練されたスタイルでありながら、自宅で手入れでき、かつ環境にも配慮した服を、3Dコンピューター・ニッティングの技術を用いてデザインする。ストレッチ性がある着心地のいいニットでデザインを追求していく過程で必然的に生まれたのが、シグネチャーである「ポッタリー」シリーズだ。
「現代の服のルーツを辿るためには、西洋のデザインの歴史と向き合う必要がありました。クリノリンのようなフィット&フレアなシルエットは中世から見られます。ウエストマークしながらヒップとの差を誇張する膨らみのあるドレスは、非常に西洋的であり、洋服の王道に近いスタイルだと考えました。コンピュータープログラミングニットを使い、ブランドのコアとしてそれを再解釈したものを作っています」(高橋)
そうして生まれた「ポッタリー」のコルセットを締めたようなシルエットは、バレエのチュチュを彷彿させる、舞踊との親和性が高いデザインでもあった。
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着心地のよさと美意識が共存するクリエイション。
かねて身体表現に興味を持ち、和洋問わず、さまざまな舞台に足繫く通う高橋はコスチューム制作にも意欲を見せていたが、早々に実現する機会は訪れる。24年に気鋭のクリエイターが集結する次世代オペラ『魔笛』、25年はネオクラシカルバレエ『EOL』の舞台衣装を手がけ、注目を集める。
「バレエのレオタードも衣装も、背中を見せるカットが非常に特徴的。その要素を感じられるように、背中が大きく開いたデザインをディテールの中に落とし込んで形にしました」

©K.Miura
現代的な演出を取り入れた『魔笛』。近未来的シルエットと役柄に合わせた色彩を提案。

©CFCL Inc.
『EOL』の衣装制作から生まれたカプセルコレクションより。切り替え部分に透け感のある素材を使い、ドレープの美しさを際立たせたポッタリー HS ルーセント スリーブレス ドレス
一方で、服作りに特定のモチーフを取り入れることはしないと断言する。
「バレエが好きな理由は、立ち居振る舞いを含めた品格や歴史的背景を学べる総合芸術だからであって、具体的なモチーフを持ってこないようにしています。衣装を手がけた際、ダンサーが踊りやすいかを念頭に服と向き合うと同時に、バレエと向き合うことにもなりました。着心地について新たな発見があったし、独自の品格といったものを体得できたように感じています」

左:舞台でも採用されたルーセント ロングスリーブ トップ 右:背中が大きく開いたポッタリー HS スリーブレス ミニ ドレス/以上CFCL

23年春夏コレクションのプレゼンテーションでは、アーティストのナイル・ケティング(写真中央)をセノグラファーとして迎え、フィジカルな演出でパフォーマーとともに宇宙から地球を見つめる世界観を表現。
*「フィガロジャポン」2025年12月号より抜粋
editing: Eri Arimoto




