新たなフォルムを探究する、ディオール 2026年春夏 オートクチュール。
Fashion 2026.01.29
ショーの招待状と共に届いたのは、シクラメンの小さな花束だった。ショー前日から、インスタグラムには隕石やシクラメンの花畑、杉本博司撮影の白いドレス、アンモナイトやオパールなどの写真が次々とアップされ、ジョナサン・アンダーソンが手がける初のディオール オートクチュール コレクションへの期待を掻き立てる。

ロダン美術館の中庭の特設会場。ピンクの濃淡のシクラメンで描かれたDIORのロゴ。
1月26日。アニャ・テイラー=ジョイ、ディーヴァ・カッセル、ジェニファー・ローレンス、ディオール ジャパン アンバサダーの八木莉可子など、華やかなゲストがロダン美術館にやって来た。庭園に設置されたのは、恒例となったディオールの特設会場。プリーツを寄せた布を思わせるグレーの外壁に白とピンクのシクラメンを散りばめたDiorのロゴがゲストを出迎える。会場の天井もまた、シクラメンの花に埋め尽くされている。
黒いルックに身を包んだリアーナが着席すると、程なくしてショーが始まった。

鏡ばりの壁、天井はシクラメンの花畑。
ヴィヴァルディの「四季・秋」のドラマチックな弦楽演奏と共に登場したファーストルックは黒いロングドレス。肩口にはシクラメンのアクセサリー。細かいプリーツがツイストしながら体を包み、丸く広がったスカートがモデルの歩みと共に揺れる。

ファーストルックは黒いプリーツのドレス。白、オレンジの色違いのドレスが続く。© ADRIEN DIRAND
コレクションの源になったのは、隕石や化石、鉱物や18世紀の布地など時の痕跡を刻んだオブジェ。ジョン・ガリアーノがアンダーソンに贈った、黒いシルクのリボンを結んだシクラメンの花束。そして、擬人的な作品で知られる陶芸アーティスト、マグダレン・オドゥンドの作品が与えたインスピレーション。それらがクリエイターの中で溶け合い、昇華されて生まれたコレクションだ。

球体のようなフォルムを作り上げた軽やかな3着のドレスがショーの始まりを告げた。

「鳥籠」という名のルックは、テクニカルニットをツイストし、球体のような新しいフォルムに。ヴィンテージ風の猫バッグにも注目。

フェザーで縁取ったフリルを散りばめた、「メレンゲ」という名のドレス。シューズとヘッドアクセサリーにはシクラメンの花束が。

マグダレーヌ・オドゥンドの作品からインスパイアされた抽象的な花のモチーフ。腰回りの膨らんだフォルムがアーティスティックな表情。
オートクチュールはアイデアの実験室というアンダーソンは、このコレクションで新たなフォルムを模索した。古代の女性像を思わせる丸いフォルムを帯びたオドゥンドの彫刻作品への共鳴を得て再構築したのは、球体のように丸みを帯びたフォルム。アシンメトリーに体を包み込んだり、身体のリズムに合わせて揺れる花冠のようなシルエットなど、構築的なフォルムが提案された。
クリスチャン・ディオールが愛した花々は、ガリアーノの花束を経て、2026年春夏 オートクチュール コレクションの主役となった。シクラメン、勿忘草、アザミ、藤、そしてオドゥンドのセリグラフィにインスパイアされた抽象的な花々が、ジャカードのモチーフに、刺繍に、あるいはアクセサリーになり、羽根のようにカットされたオーガンザが花びらとなってスカートを飾る。カラーの花を思わせる、アシンメトリーな襟元の表情も美しい。圧巻は、1949年のミス ディオールのドレスにオマージュを捧げる、ピンクの濃淡のシルクの花びらを一面に刺繍したビュスチェドレスだ。

ドレープのアシンメトリックなドレスには、ジョーゼットの金蓮花があしらわれている。

鱗のようにカットされたフェザーに覆われた、花冠のようなフォルムのミニドレス。色とりどりのフェザーで花が描かれている。

1949年春夏のミス ディオールのドレスにインスパイアされた、構築的なシルエットのビュスチエドレス。
メゾンのDNAへの目配せは、ミス ディオールのドレスだけではない。ウエストからボリュームを持って膨らむ「バー」ジャケットのフォルムは、ロングコートやショート丈のジャケットにアレンジされた。

「バー」ジャケットを再構築したショート丈のジャケットは、シクラメン柄のジャカード。スカートは白いフェザー。

アシンメトリーな襟元のロングコートは、「バー」ジャケットの再解釈。

1948年秋冬のサイクロンドレスからインスパイアされたスカート。シルクの花びらが散りばめられて。

モヘアのニットのウエストにビロードのリボンをあしらったドレス。
また、1948年秋冬コレクションのサイクロン・ドレスを現代に甦らせたルックも登場。ロウゲージのニットをドレスアップピースに仕立て上げるなど、アンダーソンらしい現代性も健在だ。
メゾンの歴史をつなぎ、新しい時代を感じさせるオートクチュールコレクションとなった。
来場セレブをチェック!


















text: Masae Takata (Paris Office)





