イネスが語る「アズディン・アライアはアーティストだった」

Fashion 2017.11.28

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2017年のガラパーティにて、イネス・ド・ラ・フレサンジュとアズディン・アライア(2017年1月26日、パリ)。Photo : Bertrand Rindoff Petroff/Getty Images

11月18日土曜日、77歳で亡くなったファッションデザイナーのアズディン・アライア。彼のショーに何度も出演したイネス・ド・ラ・フレサンジュが、その思い出を語る。

モデルをしていた若い頃、熱気あふれるティエリー・ミュグレーのショーの楽屋で、仕上げたばかりのコートを腕いっぱいに抱えて駆け付けた小さな男性を覚えています。モデルたちはみんな彼のことを知っているようで、アズディン! アズディン! とファーストネームで呼びながら、ハグしたりふざけ合ったり。

この小さな黒いシルエットの男性が、女性をこの上なく美しく装わせる人物だと知るよりも前に、私はこんな風に、モデルたちに愛されている人物として彼を知りました。

まだそこまでアライアが知られていない頃、私たちモデルは、ベルシャス通りの彼の小さなアパルトマン兼事務所兼アトリエに仮縫いに行ったものです。小さなショーはここで行われていました。

アズディンはカッティングも縫製も、ドレーピングもできる人。徹底したプロフェッショナリズムはいつもユーモアに彩られ、大笑いやエピソードや思い出話、ジョーク、そしてワインとおいしい料理がつきものでした。

彼は女性たちを愛し、どんな階層の人たちにも知り合いがいました。
ちょっとしたVネックセーターと安全ピンだけを使って、ささっと、おしゃれに変身させてあげた女中さんの思い出話もすれば、1960年代のブルジョワの奥様たちも大好きでした。

当時は私たちに支払われるギャランティはなくとも、私たちはそれを承知の上で、無料でショーに出演しました。お礼はドレスのプレゼント。彼の「着てくれたらうれしい」という言葉は本当に誠実でした。

当時はオートクチュールのように個々に採寸をしてから洋服をつくる方式でした。だからドレスを選んでから、仮縫いのためのアポイントをとります。アズディンはすべてを手がけていて、プルミエ・ダトリエ(アトリエのチーフ職人)はいません。

鏡の前で、ジャージーのドレスを身に纏いました。
2枚の布がドレープを描きながら背中部分で交差すると、私は背中をぴんと伸ばして、両肩を後ろに引きました。
そう、自分に見とれてしまったんです。

アズディンは私の後ろに立っていて、いたずらっぽいあの微笑みを浮かべていました。
彼には、このたった1秒のナルシシックな満足感がわかっていたのでしょう。
突然のフェミニニティを見て取り、彼の魔法に私がかかったことを喜んでいたんです。

これが彼の愛したこと。

ドレスの力で自分の中に隠れている素敵な女性像を見つけ出し、おしゃれでグラマラスでこの上なくパリジェンヌらしいフェミニニティをアウトプットしてあげること。

モードはアートではないかもしれないけれど、アズディンはアーティストでした。
彼には自分の世界と嗜好、彼が崇める女性たちの神殿があり、自分に適さないシステムはさっさと拒否していました。

自分が愛するものは自分の仕事と自由、友人と愛犬たち、パリ、才能、クオリティとエクセレンスだ、と理解していたのです。お金にも栄光にさえも興味がなく、くだらない人たちのことは丁重に追い払っていました。

大の仲良しがモデルで女優の、アルレッティだったのも不思議ではありません。チュニジア人の彼は、小生意気なパリっ子“ガヴロッシュ”で、人を揶揄する下町の“ティティ・パリジャン”のようなユーモアを持っていました。

彼はたくさんの友人たちを深い悲しみの中に残していきました。ティナ・ターナー、ナオミ・キャンベル、ジル・ベンシモン、長年の友人レイラ・マンシャリ。そしてアライアの服を身にまとった妻を愛するたくさんの男たちも。

彼が持ち去ったものは、パリのエスプリや、1960年代のオートクチュールの思い出、鞄いっぱいの浮わついたおしゃれ心や生きる悦び、クチュールと布地の知識がつまった分厚い教科書のような知性と知識。

黒いチャイナ服しか着なかった彼だけれど、今度は軽やかな翼に合わせて、白の洋服を身につけなくてはいけないでしょう。

「天国の子供たち」(「天井桟敷の人々」のフランス語原題)が集まっています。
彼らに面白い話を語り聞かせながら、アズディンは天使たちのおしゃれ指南を始めているに違いありません!

さよなら、マエストロ!

イネスより。

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texte : Marion Dupuis(madame.lefigaro.fr)

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