オンライン発表で見るべきムービー8

Fashion 2020.09.02

コロナ禍により、オートクチュールやメンズコレクションではオンラインで新作を発表するブランドが多かった。でもリアルタイム配信を見逃すと、どんどん溜まってどれから見ればいいのかわからなくなる?!
そこで、まず見るべきおすすめの映像を4つの切り口で厳選紹介します。

ブランドらしさが伝わる、プラダとエルメス。

プラダ 2021年春夏メンズ&2021年春夏プレコレクションレディス

ウィリー・ヴァンデルペール、ユルゲン・テラーなど、5人のクリエイターが映像作品を制作。ナイロン素材、ミニマリズム、スポーツウェアといったプラダらしさを凝縮したようなコレクションをそれぞれの解釈で表現した。冒頭でスタイリッシュなイメージを打ち出しつつも最後にランウェイ形式できちんと服を見せることも忘れずに付け加え、フィジカルなショー同様フィナーレでミウッチャ・プラダがおじぎをするといったユーモアも。環境が変化する中求められるシンプリシティへの呼応でもあり、2021年春夏ウィメンズより共同クリエイティブ・ディレクターとしてラフ・シモンズが加わる前に、プラダの真髄を改めて振り返るようでもあった。

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エルメス 2021年春夏メンズ

フランス人アーティスト、シリル・テストの演出の元、ショーが始まるまでのバックステージの様子をライブ配信した。撮影場所はパリ北部に位置するアトリエ。ガラス張りの自然光溢れる広大な空間で、窓からは緑も見え、気持ちのいい空気が流れている。アーティスティック・ディレクター、ヴェロニク・ニシャニアンはじめスタッフが準備に勤しんでいるものの、決してピリピリしてはおらず、モデルたちも終始リラックス。コロナ禍について、ヴェロニクは「本質的な部分だけを抜き出し、無駄を省き、洗練し、そして磨き上げる」いい機会になったと言う。環境の変化にも焦ったり悲嘆にくれたりすることはなく、品格あるメゾンらしい態度で「シンプリシティ、ノンシャラン、軽やかさ」を表現している。

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 映像ならではの表現で魅せたセリーヌとディオール。

セリーヌ 2021年春夏メンズ

南仏にあるサーキット、シルキュイ・ポール・リカールでランウェイ形式で撮影されたコレクションは、昨年「PORTRAIT OF A TEEN IDOL」キャンペーンに起用されたTikTokスター、ノエン・ユーバンクスのような「Eボーイ」と、スケートカルチャーをイメージした。同じくTikTokで人気を博したTIAGZが手がけるキャッチーな音楽とリンクしたカメラワークやエフェクト加工は映像だからこその表現。エディ・スリマンが愛するユースカルチャーの「ドキュメンタリー」だと言うが、6人のアーティストを巻き込んで彼らのフレーズを服に用いるなど、深みも与えていた。Z世代の内実を知らない大人たちも新鮮で魅力的なモードとして興奮させる仕上がり。エディの手腕に脱帽させられる。

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ディオール 2020-21年秋冬オートクチュール

イタリア人映画監督、マッテオ・ガローネを起用し、メゾンの建物をイメージしたトランクにコレクションのミニチュア版を並べて、神話に登場するような森の生き物たちに見せてまわるというストーリーを描いた。十数分のセリフもない短い映像だが、5人の女性シュルレアリストたちに着想を得たという美しいドレスと幻想的な世界観が相まって一気に引き込まれる。オマージュを捧げたのは1945年にパリで開催され、その後世界に巡回した人形衣装展『テアトル・ドゥ・ラ・モード』。そこでは第二次大戦後の物資不足で十分に生地を使うことができなかったデザイナーたちがミニチュアのマネキンに新作を着せたが、当時の苦境とコロナ禍には通じるものがあるのかもしれない。パリに赴いて実際の洋服に触れることが難しいいま、私たちにもトランクを運んできてもらいたくなる。

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 グッチとメゾン マルジェラは、制作過程がわかる楽しさが。

グッチ Epilogue コレクション

1542年に建てられたローマのPiazza Sacchettiを舞台にコレクションの広告キャンペーンの撮影の様子を12時間にわたって配信し、そのうちの約20分のナラティブではアレッサンドロ・ミケーレの話やレファレンスも公開した。モデルを務めたのはアレッサンドロとともにコレクションを作り上げたグッチのスタッフたち。あらゆる役職についている彼らは皆個性的な風貌で、グッチの服が国籍、年齢、性別、体型を問わず誰にでも似合うことを改めて思い知らされる。アレッサンドロはこのコレクションを2020-21年秋冬ウィメンズのショーから続く三部作の最終幕としつつも「序曲のようでもある」とも言う。モードの慣例を破り、ものづくりの舞台裏を明かした後、どんな未来を考えているのか。次章を楽しみにしたい。

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メゾン マルジェラ 2020-21年秋冬アーティザナル

「Hope (希望)、heroism(英雄主義・勇敢さ)、 hedonism(快楽主義)」をキーワードに作り上げられたコレクションの発表までのプロセスをニック・ナイトが映像化した。ジョン・ガリアーノがスタッフとオンラインミーティングする様子も公開されており、彼がユーモアを交えながら饒舌にイメージを語る姿や、さまざまなリファレンスが交錯するPC画面は見もの。GoProやドローン、サーマルカメラを駆使し、アトリエでの服づくりやフィッティングも撮影されている。コロナ禍でますます透明性が求められていることを察知して作り上げられたという貴重なドキュメンタリー映画のようなフィルム。服に込められた思いをダイレクトに知ることができる。

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フィジカルと融合した、ルイ・ヴィトンとロエベ。

ルイ・ヴィトン 2021年春夏メンズ

7月のパリ・デジタル・ファッションウィーク期間中に「ズームと仲間たちの冒険」というアニメーションフィルムを公開。パリ郊外アニエールにあるルイ・ヴィトン家の邸宅から荷物が運び出され、それらを積んだコンテナが船でアニメキャラクター、「ズームと仲間たち」と共に東に向かって出発する、という様子が描かれた。8月6日にコンテナはまず上海に到着。大規模なショー形式で「少年時代」をテーマとしたコレクションを発表し、世界同時配信した。随所に「ズームと仲間たち」が出現し、アーカイブや現行品をリサイクルしたものも。海外への渡航が難しいからこそコレクションを世界中に輸送してフィジカルなショーで見せるという新しい試み。9月2日には東京でショーが開催され、当日19時から公式ホームページにてライブ配信が行われる。

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ロエベ 2021年春夏メンズ

ロエベは24時間デジタルイベントを開催。ジョナサン・アンダーソンも出演し、曲線をテーマとしたコレクションについて解説する他、制作に関わったアーティストをはじめとするさまざまなゲストと話を繰り広げた。さらに、いつもタッグを組んでいるM/M(Paris)と「show in a box」を制作。マルセル・デュシャンがスーツケースに作品のレプリカを入れた「Museum in a box」に着想を得て、型紙、カラーパレット、生地スワッチ、レコードなどを詰め込んだ。観客はボックスを持ち運び、自分の好きな時間と場所で、リアルな生地を手に取り、型紙でフォルムを確認しながらコレクションを楽しむことができる。まさにフィジカルとデジタルを組み合わせた「フィジタル」を実践した。

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texte : ITOI KURIYAMA

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