ヴァンドーム広場の歴史遺産、ショーメ本店がリニューアル!

Jewelry 2020.03.15

創業1780年。1812年に、ほかのジュエラーに先駆けてヴァンドーム広場15番地に居を構えたショーメ。後にジョゼフ・ショーメが12番地に定めた本店が、18カ月に及ぶ大工事を経てリニューアルオープンした。皇帝ナポレオンと皇后ジョゼフィーヌ夫妻をはじめ、数々の王侯貴族に愛され、240年にわたって時代とともに歩んできたジュエラーの新しい「メゾン・メール」(母なる家)は、単なる旗艦店ではない。顧客と歴史遺産、サヴォワールフェールが集う場所だ。

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ショーメ本店、ヴァンドーム広場12番地のオテル・パルティキュリエ(邸宅)は18世紀初めの建築。19世紀半ばには、ショパンや、後にナポレオン3世の皇后となるウジェニーが住んでいた。1907年以来、ショーメの本店に。

建物は、輝きに満ちた文化遺産。

扉を開けると、円形のショーケースを囲むように、ホワイトとゴールドの明るいスペースが広がっている。正面のショーケースからは、太陽の光を思わせる放射状の光が広がり、壁にはショーメを象徴する黄金の麦畑が風にそよいでいる。生まれ変わったショーメ本店は、光あふれる広々した空間が心地いい。

ヴァンドーム広場12番地は、100年以上前からショーメが本店を置いてきた18世紀建築のオテル・パルティキュリエ(邸宅)。

「歴史を語るオテル・パルティキュリエですが、度重なる部分的な改装を経て一貫性を失い、メゾンの基本機能の繋がりが失われていました。今回のリノベーションの基本方針はいたってシンプルです。第一に、メゾンの3本柱である顧客、文化遺産、サヴォワールフェールを1カ所に集めて連動させること。第二に、歴史を語る建築と、創業以来大切にしてきた自然のテーマをよりよく語る場所にすることです」(ジャン=マルク・マンスヴェルト CEO)

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ショーメのCEO、ジャン=マルク・マンスヴェルト(Jean-Marc Mansvelt)。ロレアル、ルイ・ヴィトン、ロロ・ピアーナなど、大企業、リュクスメゾンを経て2015年より現職。

1階と2階は顧客を迎えるブティック、3階は文化遺産を語るヒストリーサロン、4階は職人たちが働くハイジュエリーのアトリエ。オフィス部門を他に移して、歴史的アドレスである12番地には、あえてジュエラーの神髄だけを集めた。

「窓やドアを大きく改装し、トランスペアレンスを意識して、館内に光を取り入れました。壮大な建築の中に、ロマンティックでポエティックな軽さをもたらしたのです。威圧感を与えるような小さな部屋の連なりではなく、開放的な空間をそぞろ歩きながら、小さなコーナーを発見していくように」(ジャン=マルク・マンスヴェルト CEO)

内装のいたるところに、多様な職人技が駆使されているのも、本店ブティックの特徴のひとつ。金色の麦の束を象ったショーケースのスタンド、刺繍の施された壁のファブリック、漆喰の壁に型押しされた植物のモチーフ、樹木のレリーフなど、さまざまな素材と手法で、自然へのオマージュが捧げられている。

「ジュエリーとは、デザイン画に職人の手で命を与えること。職人の手仕事はメゾンにとって重要な遺産です。このリノベーションでは、さまざまな手仕事の職人技に光を当てました」(ジャン=マルク・マンスヴェルト CEO)

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エントランスを入ると、ホワイトとゴールドを基調にしたブティックが姿を現わす。メゾンを象徴する麦の穂は、正面のアラバスターの壁やウォールナットの木壁にはエングレービング(彫刻)で、ブルーのファブリックには金糸刺繍で、とさまざまな職人技で空間を彩る。正面のショーケースには、リニューアルオープンを記念した本店限定のハイジュエリーのリングコレクション「トレゾール ダイユール」が。

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美しい曲線を描く階段に導かれて、2階へ。ショーケースの脚部は黄金色の麦の束。壁にもエングレービングで植物の葉のモチーフが描かれている。

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美しいサロンでリュクスな買い物時間。

2階は、ひと繋がりの空間でありながら、いくつかのスペースにさりげなく仕切られ、ゆっくりジュエリー選びをするための落ち着いたコーナーが設けられている。15点のマイヨショール(ティアラの模型)が飾られたコーナーもあり、どのスペースにもヴァンドーム広場を見下ろす窓がある。

婚約や結婚のためのジュエリー選びには専用の「サロン・マルメゾン」へ。ここは、ジョゼフィーヌの暮らしたマルメゾン城からのモチーフとゴールドの天井に彩られた、晴れやかなインテリア。座り心地の良いソファがあり、大きな三面鏡の後ろにはフィッティングルームも備えられ、ドレスに合わせてゆっくりとジュエリーが試着できる。

再び1階へ下りると、アフターケアやパーソナライズを扱うふたつの部屋にたどり着く。歴代のアトリエ写真やデザイン画が飾られたバーカウンターのある部屋は、職人を交えたアフターケアの打ち合わせのために。ヴァンドーム広場に面した「サロン・アーケード」には、パーソナライズできるアイテムが。創業240周年記念のメダル「レジャンド」や「リアン」をはじめとするウォッチコレクションが展示され、日付やメッセージの刻印を提案している。

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奥まで通路が延びる2階は、ショーメ・ブルーの配色が効いている。円形のショーケースから、光を思わせる放射状のモチーフが広がる。接客テーブルでは、目の前の窓からヴァンドーム広場が望める。

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壁に並ぶのは、15個のマイヨショール(ティアラの模型)。手にとって試着できる遊び心のあるスペース。

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サロン・マルメゾン。ゴールドと白が基調の晴れやかな部屋は、婚約や結婚を控えた顧客のための個室。ジョゼフィーヌの居城だったマルメゾンの風景がチェストに、庭園の地図が絨毯に。

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ブナの森を描いたレリーフの壁とオーク材の色合いがシックな「サロン・アーケード」。本店限定のメダル「レジャンド」や「オルタンシア」コレクション エデン ウォッチなどが並ぶ。

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ヴァンドーム広場本店で限定販売されるハイジュエリーのリングコレクション「トレゾール ダイユール」。16世紀にマリッジリングとして生まれた「ハウスリング」の伝統を思い起こし、世界の建築物にインスパイアされたデザインが個性的。上左から、ジャポニズムの新解釈「サクラ リング」(ピンクゴールド、ブラック ジェイド、ラッカー、バゲットカットダイヤモンド、ラウンドブリリアントカットダイヤモンド2.08ct)¥36,400,000、ベルエポックのパリの輝きを讃える「オリアン リング」(イエローゴールド、ロッククリスタル、カボションカット エメラルド1.35ct、1.25ct、ラウンドブリリアントカットダイヤモンド)¥36,400,000、中国・乾隆帝の宮殿の雰囲気が漂う「キアンロン リング」(ピンクゴールド、ラッカー、ラウンドブリリアントカットダイヤモンド、オーバルカットピンクトルマリン7.89ct)¥15,800,000、中東のインスパイアによる「シェエラザード リング」(イエローゴールド、ラッカー、ラウンドサファイア、カボションカットラピスラズリ)¥9,970,000/以上ショーメ ※2020年3月時点の予定価格

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ナポレオンとジョゼフィーヌの物語。

ブティックを出て、大階段から3階へ。天井高が高く、歴史的に最も格式の高い3階は、メゾン・ショーメの歴史と遺産を物語る「ル・グラン・サロン」だ。エントランスで出迎えるのは、ショーメの名を世に知らしめた最初の重要顧客、ジョゼフィーヌとナポレオンの肖像画。6つの部屋を持つこのフロアでは、マイヨショール展示や、歴史的ピースとアーカイブを組み合わせた展示が行われている。重要な顧客などを招くほか、文化遺産公開日などの特別な機会には一般客を迎えることも考えているという。「文化遺産は人々と分かち合うべきもの。ですが、ただ美しいピースを見せるのは意味がない。展覧会の企画はいまもいくつか進行中だが、歴史的背景や他のアートとの関連など、コンテクストの中でジュエリーを語り、見る人とエクスチェンジするような、新しい形の展覧会を考えたい」(ジャン=マルク・マンスヴェルト CEO)

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ヘリテージが展示される「ル・グラン・サロン」のエントランス。ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの肖像画が。ナポレオン1世の宝剣や夫妻の戴冠式の冠は、ショーメの創業者ニトの仕事。1780年の創業からほどなくして皇帝夫妻御用達のジュエラーとなった。

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「サロン・ショパン」。19世紀半ば、当時いくつかのアパルトマンに分かれて賃貸されていたという12番地。この部屋にショパンが滞在し、1849年、最後のマズルカを作曲した。音楽をテーマにした天井画がショパンを讃え、1920年代のプレイエル・ピアノが置かれている。歴史建造物の指定を受け、当時の姿のままに修復された。

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サロン・ショパンの隣は、壁に250点のティアラのマイヨショールを飾った「ティアラのサロン」。銅と亜鉛、ニッケルの合金で作られたマイヨショールは、ティアラやネックレスのデザインを、実際の制作前に3Dの模型にしたもの。ガラスケースには歴史的ピースも展示されている。

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もともと食堂として使われていた部屋らしく、食材にまつわる天井画が描かれた「パールのサロン」。修復された部屋にショーメ・ブルーのペイントが、現代的な印象を与えている。

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膨大なアーカイブと職人技が命。

文化遺産を語る展覧会を支え、クリエイションのインスピレーションにもなるのは、クレール・ギャネ率いるヘリテージ部門。想像を絶する数のコレクションとアーカイブ資料を管理し、メゾンと顧客の物語を読み解いている。

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ショーメ・ヘリテージ・ディレクターのクレール・ギャネ(Claire Gannet)。ヴィヴェンディをはじめとする民間企業での広報活動、コメディ・フランセーズなど公の文化団体のスポンサーシップ責任者を経て、2018年11月より現職。

「ジュエリーのコレクションは350点、デッサンは6万点。マイヨショールは500点。そのうち350点がティアラで、250点を『ティアラのサロン』に展示しています。写真が発明された当初からスタジオを作って撮り始めた作品写真は35万点。受注の台帳や日誌などのアーカイブ記録は、全部並べたらヴァンドーム広場1周半にもなるでしょう!」(クレール・ギャネ ヘリテージ・ディレクター)

顧客の注文内容や対話を細かに記した日誌、デザイン画や習作を見ると、同じ家族に伝わるジュエリーが、時代とともにデザインを変えてきたことなどが手に取るようにわかるという。

「ナポレオンとジョゼフィーヌ、ナポレオン3世とウジェニーのカップルや、王侯貴族のためのティアラはもちろん重要です。ですが特筆すべきは、240年の歴史の中でどの時代にも顧客に愛され、時代の空気とともに歩んできたこと。アーカイブ資料はまるでジュエリーのサーガ、顧客の物語そのもの。こうした文化遺産をシェアしていくことこそが大切なのです」(クレール・ギャネ ヘリテージ・ディレクター)

4階に位置するのは、ハイジュエリーのアトリエ。この同じフロアに、ヘリテージ部門のすべてが同居している。歴史的ピースやアーカイブの文書から浮かび上がる物語は、アトリエとともに読み解かれ、再現されたり、現代に生まれ変わったりしながら、メゾンのクリエイションに生かされていく。

「クリエイションの場であるアトリエとヘリテージが隣同士にあり、いつでも協働できる。これ以上理想的な形はありません」(クレール・ギャネ ヘリテージ・ディレクター)

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ハイジュエリーのアトリエは、中庭側から広場側に引っ越してきた。ヘリテージ部門と隣同士、1階のブティックにもダイレクトに下りて顧客との対話も便利。文字どおり、ヴァンドーム広場12番地は、ジュエラーの3本柱が集まる「母なる家」。窓の外にはヴァンドーム広場の塔があり、塔上のナポレオン像がアトリエを見守るかのようだ。

ショーメ パリ ヴァンドーム本店
Chaumet

12, place Vendôme 75001
tel:+33-(0)1-44-77-24-24
メトロ:OPERA
営)10時30分〜19時
休)日
www.chaumet.com

●問い合わせ先:
ショーメ
tel : 03-5635-7057

texte:MASAE TAKATA (PARIS OFFICE)

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