纏うアート、ハイジュエリーの物語 ショーメが表現する、みずみずしいハイジュエリーの話。
Jewelry 2022.02.01
6つのフレンチメゾンが仕立てた、ドラマティックなマスターピース。話題作からとびきりの逸品を選び抜き、職人技やモチーフの秘密を解説。
Chaumet
日本にオマージュを捧げる赤い花。
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「レ モンド ドゥ ショーメ」コレクションより、「シャン ドゥ プランタン」ネックレス(WG×ダイヤモンド×ルビー×オニキス×ロードライトガーネット)¥101,310,000、リング(WG×ダイヤモンド×ルビー×ブラックスピネル)¥59,400,000(ともに予定価格)/ともにショーメ
1780年に創業したショーメは、フランスきっての老舗。創業者マリエティエンヌ・ニトは、王妃マリー・アントワネットのお抱え宝石商で、やがて皇帝ナポレオン1世に引き立てられた人物。現在、ヴァンドーム広場のオテル リッツ パリがある場所には、かつてニトの店があったという。
それほどの由緒を持つだけに、歴史的な逸話には事欠かない。ナポレオンの皇后ジョゼフィーヌとマリー・ルイーズ、インドのマハラジャからアメリのビリオネアまでがこぞってショーメの顧客に。特にティアラは有名で、スウェーデンなどヨーロッパ各国の王室に名品が受け継がれている。
240年を超える歴史のなかで、世紀末から20世紀の初頭にかけて流行したジャポニズムの影響を受けたことから、生み出されたのがこのネックレスとリング。赤い花を付けたサクラの枝をあしらったグラフィカルなデザインが目を引く。このジュエリーでフィーチャーされた赤や黒は、どこか浮世絵の色彩のよう。花咲く枝の背後のジオメトリックなパターンや、アシメトリーな花のあしらいもジャポニズムらしい趣。まずデザインありきで、ジェムストーンをデザインに合わせてカットしていくやり方は、時間も手間もかかるものだ。
コレクション名の「シャン ドゥ プランタン」は、春の歌という意味。自然をみずみずしく写し取る表現力に は、もうため息しかない。
ジェムストーンの目利きが厳選した素材は、稀少性の高いものばかり。
あまりにも細かい作業には特殊なルーペを使うことも。
「フィガロジャポン」2022年1月号より抜粋
photography: Shinmei (Sept / objects) text: Keiko Homma