纏うアート、ハイジュエリーの物語 エルメスがハイジュエリーに込めた想いとは?
Jewelry 2022.02.03
6つのフレンチメゾンが仕立てた、ドラマティックなマスターピース。話題作からとびきりの逸品を選び抜き、職人技やモチーフの秘密を解説。
Hermès
ボディに融合する、しなやかな感覚。
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「リーニュ・サンシブル」コレクションより、リング「ア レクゥット」上(PG×トパーズ×スモーキークオーツ×ブラックジェイド×トルマリン×ダイヤモンド×ライトブラウンダイヤモンド)¥7,579,000、中(PG×プレナイト×ダイヤモンド×ライトブラウンダイヤモンド)¥8,998,000、下(PG×トルマリン×ダイヤモンド)¥7,315,000(すべて予定価格)/以上エルメス(エルメスジャポン)
あまりにも独特で、あまりにも魅力的なハイジュエリー。デザインを担当するのはエルメスのジュエリー部門のクリエイティブ・ディレクター、ピエール・アルディ。彼はこの重職に抜擢された時、当時の社長、ジャン ルイ・デュマから「ヴァンドーム広場のようなジュエリーを作らないでほしい」とのメッセージを託されたのだそう。
ピエールが手がけた「リーニュ・サンシブル」コレクションは、馬具やスカーフといったエルメスらしいモチーフを一切使っていない。フランスの伝統的なクラシックジュエリーにも少しも似ていない。これまでに存在しなかった、新鮮味あふれる造形を生み出していることに驚かされる。
中央のリングにセットされているのは、大きなグリーンイエローのプレナイト。味わい深いジェムストーンだけれど、ハイジュエリーにあしらわれることは滅多にない。それをピエールが選んだ理由は、肌の色味に近い石を使いたいと思ったから。身体にぴったりと沿い、肌になじんで融合するようなジュエリーを追求したいと、彼は考えたのだそう。
どこか回路を思わせるフォルムは、身体の内側に隠された構造からイマジネーションをふくらませたもの。オブジェのようにも見えるけれど、ひとたび身に着ければ肌の上で生き生きと輝き始める。そんな新しい感覚が、女性たちを虜にしてしまうのだ。
手首から指にまで飾る独創的なハンドジュエリーも登場。©Ange Leccia
33.5カラットもの大きさのプレナイト(葡萄石)は圧巻。©Ange Leccia
「フィガロジャポン」2022年1月号より抜粋
photography: Shinmei (Sept / objects) text: Keiko Homma