ハートのジュエリーに込められた、 メゾンの想い。

キャッチーで愛らしく、目にするすべての人の心をときめかせるハートモチーフのジュエリー。各ブランドのハート形の誕生秘話や創業者の思いとは？

人はなぜ、ハートモチーフに惹かれるのだろうか。ハート形の起源は、紀元前7世紀頃にまで遡る。古代ギリシアでシルフィウムというハーブの種のモチーフを刻印した銀貨が最も古いハートモチーフのアイテムであるといわれている。さらにギリシアでは古くから愛の印、ローマカトリックの世界では神の愛を表し、ハートを矢で射抜いた図柄は、愛や献身の象徴として描かれることもあった。

ハートが心臓を表すようになったのは中世から。16世紀のエリザベス朝では心臓は生気、愛情が宿る器官と考えられ、相手に心臓（生命）を捧げる行為が究極の愛情や忠誠心の証であることからハート＝愛のモチーフという認識が定着したと考えられる。

またハートに似たモチーフは日本にも古くから存在した。「猪目（いのめ）」と呼ばれる文様がそれで、災いを除き福を招ぶ縁起物として奈良時代から神社仏閣の装飾などに用いられてきた。写真映えスポットとして人気の京都・正寿院のハート形の窓も、正しくは「猪目窓」である。

数あるモチーフの中でも特に世界中で愛され、数多くのバリエーションが存在するハートモチーフ＆シェイプのジュエリー。デザイナーや創業者が込めた想いに愛の願いを重ねて身に着けたい。

メゾン独自の物語を託された、愛あるモチーフ。

Tiffany & Co.

伝説のファッションアイコンが手がけた"大人のハート"。

ファッションモデルとして活躍後、デザインの世界でも称賛を集め、1974年にティファニーのデザイナーに就任したエルサ・ペレッティ（下）。繊細で流れるようなチェーンとベゼルにセットされたストーンがセンシュアルな「ダイヤモンド バイ ザ ヤード」や「ビーン」「ボーン カフ」と並ぶ彼女の代表作が「オープン ハート」。左右非対称のフォルムとふっくらとしたボリューム感がもたらすなめらかな形状と柔らかな触感は、それまでのハートモチーフとは一線を画してスタイリッシュで、センセーションを巻き起こす。一見、無造作にフリーハンドで描いたように見えるハート形だが、エルサは「ひとつの曲線を上質なものに作り上げるためには、膨大な時間がかかります」と語った。既成概念にとらわれない発想と妥協を許さない姿勢から生まれた「オープン ハート」は、いまなお新鮮だ。

©Tiffany & Co.

上：「エルサ・ペレッティ™　オープン ハート」ペンダント（RG×ダイヤモンド）¥2,365,000　中：同 スタッド ピアス（RG）¥174,900　下：同 フープ ピアス（YG）¥731,500/以上ティファニー（ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク）

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Van Cleef & Arpels

幸運を信じて身に着けたいハッピーモチーフ。

1968年の誕生以来、50年以上にわたって"愛されジュエリー"の代名詞となっている、ヴァン クリーフ＆アーペルの「アルハンブラ」。四つ葉のクローバーからインスピレーションを得たアイコニックなデザインで知られるコレクションだが、実は「スウィート アルハンブラ」にはクローバー以外にも愛らしい小さな幸運モチーフがラインナップされている。復活や輪廻転生の象徴であるパピヨン、生命力や若々しさの象徴であるリーフに加え、愛と情熱を表すカーネリアンのハートモチーフのジュエリーは隠れたロングセラー。「幸運になりたければ幸運を信じなさい」と常に周囲に語っていたという創業者の甥ジャック・アーペルの言葉どおり、ハッピーとラッキーを表現したジュエリーは、身に着ける人に幸運をもたらしてくれるに違いない。

上：「スウィート アルハンブラ」ブレスレット（RG×カーネリアン）¥225,500　下：同 ペンダント（RG×カーネリアン）¥243,100/ともにヴァン クリーフ＆アーペル（ヴァン クリーフ＆アーペル ル デスク）

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Chopard

ダイヤモンドも心も躍る、ハートのジュエリー。

カンヌ国際映画祭をはじめ多くのセレブリティが晴れの場で選択することで"レッドカーペットに最も近いジュエラー"と呼ばれるショパール。共同社長兼アーティスティック・ディレクターのキャロライン・ショイフレ（下）はハートモチーフを「メゾンにとってのタリスマン（お守り）」と呼び、毎年発表されるハイジュエリーにもほぼ必ずハートモチーフやハートシェイプを取り入れている。一方でメゾンのアイコンコレクションとして愛にあふれた女性たちを魅了し続ける「ハッピーハート」。クリスタルサファイアのケースの中でムービングダイヤモンドが躍動するスタイルは唯一無二。マザーオブパール、ピンクオパール、マラカイト、カーネリアン、ターコイズなどさまざまな素材を起用し、ジュエリーとウォッチというメゾンにとっての2本の柱それぞれでチャーミングなアイテムを多数展開している。

上：「ハッピーハート」時計（ルーセントスティール™×RG×WG×ダイヤモンド×MOP、アリゲーターレザーストラップ、φ36㎜、クオーツ）￥1,419,000　中上：同 リング（RG×ダイヤモンド×ピンクオパール）￥335,500　中下：同 ペンダント（RG×ダイヤモンド×MOP）￥1,100,000　下（RG×ダイヤモンド×マラカイト）￥1,232,000/以上ショパール（ショパール ジャパン プレス）

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Fred

恋愛映画の名シーンから生まれたコレクション。

1990年に公開された大ヒット映画『プリティ・ウーマン』。大富豪役のリチャード・ギアがジュリア・ロバーツ演じるヴィヴィアンにフレッドのハートモチーフのネックレスを捧げ、オペラへと誘う名場面は、世界中の女性の心をときめかせた。2021年には"your way your love（あなたの愛のかたち）"をコンセプトに、揺るぎない愛の象徴として、またフレッドのフィロソフィを表すアイコンとして、映画にオマージュを捧げたコレクションを発表。ダイヤモンドと真紅のルベライトを用いたハイジュエリーからハートを象ったオープンワークが印象的なデイリーアイテムまで、自分らしく自由にコーディネートを楽しめ、身に着けた人をヒロインに仕立ててくれる。

©Aflo

上：映画『プリティ・ウーマン』より。　中上：「プリティウーマン」リング（WG×ダイヤモンド×ルベライト）￥7,887,000　中下：同 ネックレス（WG×ダイヤモンド）￥1,859,000　下：同 ブレスレット（PG×ダイヤモンド×オニキス×MOP）¥319,000/以上フレッド（フレッド カスタマーサービス）

＊「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋