本店、そこは物語が詰まった場所。 ブシュロンのパリ旗艦店にて、ジュエラーのブティックに宿泊するという特別な体験を。

Jewelry 2024.02.15

歴史と物語が詰まった老舗ジュエラーの本店を訪れて! インテリアの意匠、本店でしか見られない美術品レベルのアーカイブ、メゾンを愛し訪れたセレブリティや文化人の残り香など、甘美な世界を堪能できる。


Boucheron

ヴァンドーム広場は宝石商広場と呼ばれている。その先鞭を切ったのは26番地に開店したブシュロンだ。18世紀に騎士シャルル・ドゥ・ノセによって建てられた個人邸宅の建物内で、1930年に歴史建造物に指定された文化財である。1858年創業のブシュロンは160周年に大改修工事を行った。その結果、建築当時のエスプリと佇まいが建物に蘇り、かつてノセ邸のようにオテル・パルティキュリエのすべてがブシュロンの館となった。現在、来店するすべての人はブシュロン家を訪れた友人として温かく迎えられている。

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三代目当主ジェラール・ブシュロンの愛猫ウラジミール。80年代は広告のモデルも努めた。

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メゾンに受け継がれるファミリースピリット。その極みであるアパルトマンのle 26(ル・ヴァンシス)を覗いてみよう。どのジュエラーにおいてもVIPのためのスペースは店内に用意されている昨今だが、ここでは驚くことに宿泊もできるのだ。広場に面して3階を占めるアパルトマンは自然をテーマに室内装飾が施されたダイニングルーム、リビングルーム、寝室、バスルームそして図書室から成る。「このバスタブに横たわって見るヴァンドーム広場の眺めはどこよりも美しい」と、最高経営責任者エレーヌ・プリ=デュケン自らがバスルームの浴槽の位置を決定したという。メゾンのブティックに宿泊することで、ユニークな顧客体験が味わえるのだ。

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開業時からあるサロン・シノワの小さな扉は、人目につくことを好まない顧客のプライバシーを守るための隠し扉。リノベーションを機に再び設けられた。

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ラペ通り側の入り口から続く階段は、建築当時のままの姿だ。

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ヴァンドーム広場を眺めながらバスタイム!? 贅沢な驚きに満ちたブシュロンのアパルトマン、ル・ヴァンシス。

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ダイニングルームは森、リビングルームは水、そして寝室は雲がテーマの内装でまとめられている。

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またブシュロンはCEOのエレーヌと、クリエイティブディレクターのクレール、経営と創作のトップを女性が占めるメゾンである。そもそも創業者フレデリック・ブシュロンは身に着ける女性を第一に考えることをジュエリー制作において忘れなかったという、いわば女性のためのジュエラー。1879年に発表されたクラスプのないクエスチョンマークネックレスが素晴らしい一例でもある。待従の手を借りることなく、一人で身に着けられるジュエリーは、ハイソサエティの女性たちから大歓迎された。女性のジュエリー使いの自由を尊重する創業者の精神は、彼女たちによって継承されている。

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広場から、そして開店当時のラペ通り側の入り口(写真奥)からも来店できる地上階のメインスペース。創業者時代のボワズリーがいまも部分的に壁に用いられ、ラウンド型のショーケースが、顧客に寄り添うメゾンの精神を反映している。

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過去の資料を展示するサロン・デ・クレアシオンはすべての来店者に開かれている。

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ル・ヴァンシスは誰もが足を踏み入れられるエリアではないが、地上階にある3フロア吹き抜けの見事な温室のようなエリアでは、友人や家族の家に招かれたような温かみのある空間を堪能できる。「冬の庭園」と名付けられたここは、かつての個人邸宅に見られたような緑ある内庭に面したガラス張りの空間。鳥かご型のディスプレーケースにジュエリーが展示され、ランプも鳥がモチーフである。グリーンでまとめられた中に配置された珪化木のローテーブル、植物モチーフのファブリックの肘掛け椅子、壁に掲げられている孔雀の羽を素材にしたアート作品......、自然に包まれる空間に身を置くと、ごゆっくりお寛ぎくださいと家の当主から言われたような錯覚が起きる。その昔、3代目ジェラール・ブシュロンの時代には、飼い猫のウラジミールが店内を散歩していたという。1979年にモデルとしてネックレスをつけて広告に登場した彼はメゾンのアイコニックな存在となり、ジュエリー作品にも登場している。

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植物の模様を彫ったガラスで覆われた吹き抜けの冬の庭園(ジャルダン・ディヴェール)は、メゾンが愛する"力強い自然"を讃えるスペース。

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1928年に宝石を携えて来仏したパティアラのマハラジャは、ブシュロンに149点のジュエリーを依頼した。その時のグアッシュの1点。

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室内装飾を任されたピエール=イヴ・ロションは高級ホテルや個人邸宅を多数手がけ、居心地の良い空間作りには定評がある。リノベーションの合言葉は"現代の私邸"。建物が建築された1717年から現在にいたる複数の時代のスタイルを盛り込み、ブシュロン家の歴史を本店内に作り上げた。開業時からグランドフロアにある秘密の部屋も守られている。それは中国風内装が施されたこぢんまりとしたサロンに設けられた、外に通じる小さな扉だ。人目につくことを好まない顧客のプライバシーを守るためだった。フランスの豊かな宝飾史に貢献している顧客への配慮も、時代の流れで変化しているようだ。

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1883年に作られた、アイビーをデザインモチーフにしたクエスチョンマークネックレス。

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クエスチョンマークネックレスはメゾンの革新的精神の象徴として、新たな解釈と素材つ使いで現代に継承されている。

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ウラジミールの広告写真を想起させるネックレスをつけた猫のリングは、ブラックサファイアの瞳が愛らしい。ラウンドカットのダイヤモンドとグリーンのツァボライトの輝きが調和している。

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26, place Vendôme 75001 Paris France
営)11:00〜19:00
休)日
tel:33-(0)1-42-61-58-16
www.boucheron.com

 
*「フィガロジャポン」2024年1月号より抜粋

photography: ©Boucheron, KEYSTONE-FRANCE//GETTY IMAGES

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