シャープでモダンなショーメの新作は、3つの芸術の"動き"からインスパイア。
Jewelry 2024.07.26
毎シーズン、ヴァンドーム広場本店の上にあるサロンでお披露目されるショーメのハイジュエリー。今季は、「ショーメ アン センヌ」(舞台上のショーメ)をタイトルに、音楽、ダンス、魔法の3分野の芸術の"動き"にインスピレーションを求めた。
音楽のテーマから、「ハーモニー」のネックレス。700個のベゼルと2800個の爪がダイヤモンドとサファイアを支える。ペアシェイプのダイアモンドは取り外しが可能。
ショーメといえば、優雅なティアラや植物からインスパイアされたロマンティックなジュエリーが真っ先に思い浮かぶ。だが、今回の新作は動きのアートをイメージしたものだけに、流れるようなラインとシャープで躍動感のあるデザインが新鮮。
メゾン特有のストーンを引き立たせ、浮かび上がらせる技術フィルクトーを駆使し、トロンプルイユを随所に盛り込み、イリュージョンを感じさせるコレクションに仕上げている。
音楽にテーマにした第1章は、ブランドカラーのブルーをサファイアで表現したネックレス「ハーモニー」から始まる。ダイヤモンドとブルーサファイアが幾重にも首に巻かれているような錯覚を起こさせるトロンプルイユのネックレスだ。また、五線の上にエメラルドとサファイアが多重奏を奏でるイメージの「スコア」と、ダイヤモンドが透明な音楽を奏でる「メロディ」では、メインの3石のエメラルドやダイヤモンドが、フィルクトーでセッティングされている。ネックレスの列からこぼれ落ちたような印象を与える、リズミカルなデザインだ。
3石のエメラルドはフィルクトーのセッティング。石を支える地金の特殊なカットが肌の色を映し、石が宙に浮いているような効果を演出する。
ダンスにテーマにとった第2章では、ホワイトゴールドとダイヤモンドにサファイアを加えた「バレエ」が圧巻。右側はサファイアのグラデーション、左側はホワイトダイヤモンドのアシンメトリーなデザインの中央にセイロンサファイア3石をセット。バレエの群舞にも、トウシューズの連なりにも、あるいはチュチュのシルエットにも見えてくる。
ひとつひとつのパーツが滑らかに動く。同じテーマのイヤリング、トワ・エ・モワ・リング、タイムピースも。
同じくダンスにテーマをとった「タンゴ」。タンゴを踊るカップルのように、ルベライトとトルマリンが、ダイヤモンドパヴェの螺旋の中にセットされている。センターストーンは46カラットを超えるインディゴライトトルマリン。
第3章では魔法をテーマに、マジシャンの技を思わせる視覚効果を実現。捻れているように見えるダイヤモンドパヴェとルビーのネックレス「イリュージョン」や、パールとダイヤモンドをちりばめてペアシェイプのフォルムを作り上げた「トロンプルイユ」のパリュールは、ジュエラーたちのサヴォワールフェールを駆使したもの。
ティアラからリングまで6ピースを提案する「ヴォルティージュ」のパリュールではダイヤモンドセッティングのラインに捻りが加えられたことで、5本の光線が頭に浮かんでいるような、不思議な効果を生んだ。レースのように優美なティアラのイメージとは一転、現代的でアヴァンギャルドな表情に注目したい。
5本のラインが途中で途切れているようにも見えるマジカルなティアラ。
text: Masae Takata(Paris Office)