ミキモトのハイジュエリー、バラの花弁が甘やかに風に揺れて。
Jewelry 2025.07.22
パリのオートクチュールウィーク開催中、同時に名だたるジュエラーたちがハイジュエリーの新作をお披露目するのが恒例となっている。最近ではセレブリティも来場するとあって、7月上旬、宝石商広場と別名をとるヴァンドーム広場周辺は活気に満ちていた。
新しいハイジュエリーコレクション「レ ペタル」を纏ったミキモトのグローバルアンバサダーを務める女優ディリラバ。
広場の8番地にブティックを構えるミキモトが会場に選んだのは、かつて個人邸宅だった18世紀建築の優美な建物であるHôtel d'Evreux(オテル・デヴルー)。壮麗なブルーの扉に続く中庭の奥に入り口のある館内、赤い絨毯を敷いた階段に飾られた白い花が2階の新作発表の展示スペースへと誘う美しいイントロダクションだ。今回発表されたのは「Les Pétales(レ ぺタル)」と言って、風に舞うバラの花びらが映し出す一瞬の美しさを表現しているハイジュエリーコレクションである。会場の窓が面しているのは、有名なオステルリッツの記念塔が中央にそびえるヴァンドーム広場。展示されているハイジュエリーからバラの花弁が軽やかに舞い、馥郁たる香りを残して風に乗って窓の外へと飛んでいきそう......。
ヴァンドーム広場に面した会場で新作がお披露目された。前田華子によるブランド「ADEAM(アディアム)」が、コレクション「レ ペタル」にインスピレーションを得たドレスをデザインし、その世界観を美しく表現。
そんな幻想的な雰囲気に包まれた会場内、コレクションを含む約70点近くが展示された。「レ ペタル」では、まずダイヤモンドのパヴェセッティングを敷き詰めた立体的な花が放つ表情の豊かさに目を奪われる。ダイヤモンドのサイズは大小さまざま。配置の角度も異なり、つける人の動きに合わせて花の生命力が感じられるかのように輝きがキラキラと変化する。花弁のフォルムもジュエリーによって色々。いまにも一枚の花弁がはらりと花から散ってゆく、という瞬間を捉えたジュエリーにはミキモトの職人の卓越の技が込められている。「ふわっと風に舞う花びらを感じてもらえたら」と語るデザイナー。大粒の真珠と組み合わせてバランスの良いボリュームを花弁にもたらすことが、なかなか難しかったという。
ディリラバがつけているネックレス。連なるパールのネックレスを"風"に見立て、しなやかに舞うバラの花びらを立体的でドラマティックにデザイン。やわらかなモーガナイトの輝きが、儚くも美しい花のうつろいを映し出す。(WGK18×あこや真珠×モーガナイト×トルマリン×ダイヤモンド) 揺れるピアス(WGK18×白蝶真珠×ダイヤモンド)
花びらを広げた大輪のバラが、風に包まれてそっとほどけていく美の情景を繊細に描いたジュエリー。ネックレス(WGK18×アコヤ真珠×モーガナイト×ガーネット×サファイア×ダイヤモンド) ピアス(WGK18×アコヤ真珠×サファイア×ダイヤモンド)
レースのように編み込まれたパールに風の軌跡をなぞるピンク色の花びらが寄り添うジュエリーは、胸もとに、手もとに優美な余韻を湛える。ネックレス(PGK18×アコヤ真珠×ダイヤモンド ) ブレスレット(PGK18×アコヤ真珠×ダイヤモンド)
左:鮮烈な色彩を放つバラが花びらをほどき、羽ばたくように舞い上がる造形美。香りまで感じさせるような壮麗なバラの姿が印象的なネックレスだ。(WGK18×アコヤ真珠×トルマリン×ダイヤモンド) 右:艶やかに咲き誇るバラがそよ風に揺られ、ふわりと舞い広がる光景を思わせるヘッドジュエリ―。(WGK18×アコヤ真珠×トルマリン×ダイヤモンド)
上に紹介したハイジュエリーを始め、ダイヤモンドのパヴェの花弁と立体的に彫りあげたローズクオーツの花弁を1輪のバラに組み合わせたブローチ、ピンク色のコンクパールを花芯に見立てたリングやブローチ、ピンクゴールドのベースが色を映し込みパールやダイヤモンドが薔薇色に輝くネックレス......繊細なジュエリーに昇華された儚い無数のバラの花びら。一瞬に永遠の生命を与えるハイジュエリーコレクション「レ ペタル」は、ミキモトの芸術性と類まれなる技術の出会いから生まれた美しい物語だ。
左:2輪のバラが花びらをはらりと解き放つ瞬間を描いた、花の息吹を感じさせる繊細な造形のブローチ。(WGK18×天然真珠(コンク)×アコヤ真珠×サファイア×ダイヤモンド) 右:繊細にひるがえる花びらが、やわらかな風の息づかいさえも映し出す躍動感あふれるリング。リング(WGK18×天然真珠(コンク)×ダイヤモンド)
左:いまにもちりゆく一瞬を捉えたブローチに職人技が光る。 右:ダイヤモンドのパヴェの花弁と立体的に彫りあげたローズクオーツの花弁が重なり合う可憐なバラも。photography: Mariko Omura
editing: Mariko Omura