マリー・アントワネットに愛されたメレリオの、歴史とモダニティの融合に輝く新作ハイジュエリー。

Jewelry 2025.09.11

現存する世界最古のジュエラー、メレリオ。ヴァンドーム広場から伸びるラペ通り8番地の本店の地下には、貴重なアーカイブピースが飾られている。その中のひとつは、王妃マリー・アントワネットのブレスレットだ。これは1780年、ヴェルサイユ宮殿の門の大きな鉄格子の前で背負子にジュエリーを詰めて集まる宝石商のひとりだったジャン＝バティスト・メレリオから、馬車から降りてきた王妃が購入したものだ。ローマの7人の皇帝が描かれたカメオがルビーとゴールドの花と葉で繋がれている。これがきっかけでメレリオは王妃のお気に入りの宝石商となり、彼女が親しい友人への贈り物に用いる御用達ジュエラーとして重用されることとなった。

1. ヴェルサイユで発表された新作ハイジュエリー

「ジャルダン・デ・レーヴ」

18世紀、マリー＝アントワネットの時代に遡ったような演出でお披露目された「ジャルダン・デ・レーヴ」

メレリオが7月2日にお披露目した新作は、ハイジュエリー・ネックレス「Jardin des rêves（ジャルダン・デ・レーヴ）」だった。これはヴェルサイユ宮殿のマリー・アントワネットのプティ・アパルトマンの2部屋の壁を覆っていたパイナップルのある庭園の情景を描いたトワルGrand ananas（グランアナナ）にインスパイアされている。パイナップル？といぶかしく思うかもしれないが、当時この遠い国のフルーツは「果物の王」とされ、王権を象徴する果実だったのだ。

左：パリにおけるメレリオの歴史の始まりを物語るジュエリーを詰める背負子（マルモット）がお披露目に際して再現された。　右：マルモットの中でパイナップルのモチーフが描かれた布に優しく包まれるジャルダン・デ・レーヴ。

壁布の異国的で華やかなモチーフは、自然主義と色彩宝石の表現で知られるメゾンのクリエイティビティを大いに刺激。アーティスティックディレクターのロール＝イザベル・メレリオは''夢の庭（ジャルダン・デ・レーヴ）''として22色の石を繋げたネックレスと、遊び心と気品を備えたパイナップルのフォルムのセンターモチーフをデザインした。これはネックレスのペンダントとしても、イヤリングとしても身につけられる。夢のような色彩のハーモニーを織り上げるのは紺碧色のサファイア、パステルカラーのアクアマリン、スミレ色のタンザナイト、エメラルドグリーンのトルマリンとミントガーネット、陽光を思わせるヘリオドール、鮮烈なルベライト、やわらかなモルガナイト、ピンクサファイア、スペサルタイト、バラ色に輝くインペリアルトパーズ......。ジャルダン・デ・レーヴは、メレリオが手がけた「ピエールリ」「ジャルダン・ピエールリ」に連なる作品で、その創造の系譜に新たな章を刻むものだ。

ジャルダン・デ・レーヴは22の石が繋がれたネックレスと2つのパイナップルのセット。ネックレスの中央、ダイヤに繋がれたパイナップルのペンダントは取り外してイヤリングとしても付けられる。

ネックレスの22個の石の総計は171.69ct（ルベライト、スペサルタイト・ガーネット、タンザナイト3個、ミントガーネット、インペリアルトパーズ2個、アクアマリン、グリーントルマリン、エメラルド、ピンクサファイア、サファイア、ラグーントルマリン、イエローベリル、モルガナイト2個、ピンクトルマリン）。

---fadeinpager---

2. パリで発表された新作ハイジュエリー

続いてオートクチュール・ウィーク期間中には、パリのブティックでもハイジュエリーの別の新作がお披露目された。胸元にペンダントネックレスを輝かせる、チュールを纏った複数のボディーが店内の一角に並べるという、これまでにない発表方法。美しきBellezza（ベレッツァ）の4点と夢と力強さにあふれる「メレリオタリスマン」のジャンボタリスマン新作2点の発表だった。

パリの本店内、ラファエロの1506年ごろの絵画『一角獣を抱く貴婦人』にインスパアされたというインスタレーションで新作が発表された。photography: Mariko Omura

「ベレッツァ・ジャルディーノ」

発表されたBellezza（ベレッツァ）は、庭と花というふたつのテーマによる4点のペンダントネックレスで、メゾンが大切にする自然主義を体現するものだ。アーカイブに繰り返し登場するイタリア庭園の4枚の葉のモチーフを色彩豊かに再解釈したのは、ベレッツァ・ジャルディーノ。ロール＝イザベル・メレリオはこのペンダントにルネッサンスの庭園を、植物の多様性と驚きに満ちたタペストリーのように描いている。中央にはターコイズに輝くトルマリン、その回りを繊細な彫りを施されたベルベットのように深い緑のエメラルドの葉が囲んでいる。ピンクサファイアとダイヤモンドの花々が咲き、ゴールドの蔓が舞う生命の躍動が感じられる庭園だ。その庭を明るく照らすのは、メゾンのシグネチャーであるバロックパールだ。

「ベレッツァ・フィオーリ」

ベレッツァ・フィオーリは象徴性と自然の優美さゆえ昔から崇めれている野ばら、マーガレット、百合の3種の花をモチーフにしたペンダントネックレスだ。アーカイブのヴィンテージのブローチにインスパイアされたクリエイションで、ルネサンス期のエレガンスを祝福する。

ローザ

メレリオは野生の優雅な自然を讃えるメゾンである。中でも大切にされているモチーフは野ばら。1867年にスペインの女王からオーダーされ、いまも使われ続けられているティアラなど、歴史的に重要な作品にあしらわれているのが野ばらだ。

プラチナとエメラルドのペンダントネックレスは1960年代のブローチを再解釈して、野ばらにオマージュを捧げている。

マルガリータ

愛、純粋、シンプリシティを象徴するマーガレットはとりわけ20世紀初頭のメレリオによく登場したモチーフだ。その伝統を詩的な洗練さを持ってペンダントブローチとして。花弁はプラチナ。優美に開いて、花のごく自然な動きが捉えられている。中央の花芯は水仙色のダイヤモンド。太陽に照らされたような輝きをもたらしている。

ブローチの中央で水仙色のダイヤモンドが太陽に照らされたような輝きをもたらす。ブローチが吊り下げられたイエローゴールドのリンクチェーンは、ダイヤモンドをパヴェセッティングした結び目がアクセント。

リス

フランス王室の象徴である百合の花。このホワイトゴールドのセットはその威厳を讃えている。花の力強さと優雅さを描き出すのは、大胆で彫刻的なフォルム。17世紀にイタリアからの移民のメレリオ家にフランスでの商業を認めたマリー・ドゥ・メディシス王妃とその後の王室に敬意を込めて！

ホワイトゴールドにピンクサファイアを敷き詰めた百合の花。メレリオの最もノーブルなエンブレムの現代的解釈だ。

「メレリオ・タリスマン」

キャビネ・ドゥ・キュリオジテのハイジュエリーコレクション中、現代のメレリオの象徴的ジュエリーとなった感がある大きなメダルのジャンボタリスマン。それにもふたつの新作が加わった。どちらもメゾンの例外的なサヴォワールフェールが込められている。熟練の職人が手彫りを施したタリスマン。気負わず優雅に身につけられるようデザインされ、手彫りで仕上げられた力強い長方形のリンクのゴールドチェーンに吊り下げられている。

そのひとつはコメット・メダル。槌目、彫金、彫刻が施され、天空の宝石のカスケードがセットされたプラチナのメダルである。常にイタリアの山々を包む澄み切った夏の夜にインスパイアされているというロール＝イザベルらしいモチーフと言える。もうひとつは、メゾンのアーカイブに所蔵されている孔雀のブローチの再考だ。1868年にナポレオン三世皇妃ウジェニーの依頼で制作されて以来、メゾンの象徴的なエンブレムとなっている孔雀の羽がメダルにデザインされた。シャトル型にカットされたエメラルドが、古代のお守りの目を連想させる。