ゲランのシャリマー、オーデパルファンが
ジェイド・ジャガーによる新しい装いに。
Fashion 2010.09.01
大村真理子の今週のPARIS
ミツコが話題を呼んだ6年後の1925年に、ゲランに生まれた名香シャリマー。その名前はサンスクリット語で"愛の寺院"を意味するという。愛妃ムムターズ・マハールを失い、その深い悲しみを慰めんと30年近い年月をかけ豪奢な霊廟タージ・マハールを建設させたムガール帝国の第5代帝王シャー・ジャーハン。帝王と妃の愛と官能の物語から、ジャック・ゲランが創香した、メゾンにとって初のオリエンタルな香りである。
バニラ、ジャスミン、アイリス、カカオ・・・・・・かつてない大胆な組み合わせによる、妖艶でミステリアスなシャリマー。フランス女性の心は軽々と異国へと誘われた。
タージマハールの庭園に創られた噴水からインスパイアされたボトル。手にとると、その中で香水が美酒のようにたゆたい、扇のようなブルーのキャップを外す前から心酔わされる。そのシャリマーの誕生から85年たった今年、香水のボトルはレイモン・ゲランがデザインしたままだが、オーデパルファンのボトルが新しくなった。その大任を果たしたのは、ジェイド・ジャガー。夏前にパリに短期間滞在した彼女に、話を聞いてみた。
ロンドン、イビザ、ゴア・・・・・・ラグジュアリー・ノマドな暮らしが似合うジェイド。この夏、一瞬パリのゲラン本社に姿を現した。
ジェイドによる新しいオーデパルファンのボトル。なお、香水のクラシック・ボトルはこれまで通り。
「オーデパルファンのボトルをリニューアルするリクエストが来たのは、もうずい分前になるわ。デッサンにはそれほど時間がかかっていないの。いくつかのアイデアの中から選ばれたのを実現するのに、技術面で時間がかかったので・・・・・・。とてもエキサイティングな仕事だった。でも何よりも、ゲランから指名されたことをすごく栄誉に感じてるのよ。なぜって、私にとって、ゲランという名前は子ども時代の一部をなすものだから。ママ(ビアンカ・ジャガー)がミツコやシャリマーをつけていたの」
アトリエでデッサン中のジェイド。
彼女が手がけた新しいボトルは私たちが知るシャリマーのボトルとシルエットは変わらないが、かつてのアールデコ・スタイルに比べると面の数が減り、モダンになっている。滑らかにされたボトルは目に艶やかで、手に取ると官能的。
「インドの庭園、愛・・・・・・といったすばらしいストーリーが込められているのだから、ボトルの歴史、遺産を守ることは大切だと思ったの。だから、ボトルのフォルムそのものはキープするべきだ、とね」
女性が新しい時代を迎えた黄金の20年代に生まれた香水に、21世紀を自由に生きる現代女性のひとり、ジェイドによって新鮮な息吹がふきこまれたのだ。
プレタとジュエリーのブランドを持つ彼女だが、まだ自分の香水は発表していない。
「香水をつけるのは、女性にとって自分のなりたいイメージの女性に近づくための日常の儀式。とてもインティメートなものだと思っているわ」
香水の役割って何?という問いに、こう答えた彼女。ママと同じく、ミツコ、シャリマーをつけているそうだ。
新しいボトルのシャリマー オーデパルファンは30ml(57ユーロ)、50ml(80ユーロ)、90ml(107ユーロ)の3種(日本での発売は50ml ¥11,550のみ)。
68, avenue des Champs Elysees 75008 Paris
tel 01 45 62 52 57
営)10時~19時
休)日、祭
http://www.guerlain.com