Franck Muller 森本千絵×ヨシダナギ、それぞれの時の感覚。
Watches 2019.12.13
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2003年に時計ブランド「フランク ミュラー」の動画を手がけたアートディレクターの森本千絵。16年の時を経て、同じエストニアのアニメーション作家と新たな動画を作成した。「時」に対するフランク ミュラーの哲学を表現したその作品は、個人によって異なる「時」の概念を森本独自の解釈により具現化している。アフリカという日本とは異なる文化圏での撮影を続けてきた写真家のヨシダナギと、さまざまな顔を持つ女優の板谷由夏がそれぞれの「時」について、森本千絵と語り合う。
<森本千絵×板谷由夏の対談はこちらから>
アフリカやアマゾンに住む少数民族を撮影し続けているヨシダナギ。「いまこの瞬間を生きていることの幸せを実感する」ことを教えてくれた現地の人々と、コミュニケーションを取りながら撮影を行うヨシダの話に、森本も興味津々。
森本:まずはアフリカの人々に惹かれたきっかけをお聞かせいただけますか?
ヨシダ:5歳の時にアフリカ人にひと目惚れしたのが原点です。単純に身体のフォルムの美しさに惹かれて。その頃はまさか現地でアフリカ人を撮影することになるとは思ってもみなかったんですけどね。
森本:被写体の方たち、本当に美しいですよね。彼らは時計を持たないんでしょうか。
ヨシダ:部族によって違うんですが、エチオピアのスリ族は時間の概念が本当にないです。多分、一日っていう言葉すらない。その日か昔かがあるだけで。
森本:寝ているか起きているか、ってこと?
ヨシダ:そうなんです。明るいか暗いかのどちらか。どう見ても12歳であろう子に年齢を聞くと、2歳とか3歳って言うんです。大人でも5歳は超えていない。で、私がもうすぐ29歳になるんだって話をすると、彼らにとっては魔女レベルなんですよ。おばあちゃん。
森本:もう長老だ。
ヨシダ:だから「撮影日は何日後だよ」っていっても理解できない。「何回寝るの?」って聞くんです。彼らの時間ってすごくゆっくり流れているんですね。
森本:時計もカレンダーもないとそうなるんですね。撮影する時は時間を決めているんですか?
ヨシダ:撮影の時間帯は朝焼けの頃の1時間と日没前の1時間の合計2時間だけと決めているんです。
森本:なるほど。それでこのきれいな色が出るんですね! 東京とアフリカでは流れている時間の感覚は違いますか?
ヨシダ:同じ時間でも流れ方が違うと感じることは多いですね。よく楽しい時間はあっという間に過ぎるっていうけれど、アフリカにいると一日がとても長く感じるんです。でもそれって決してつまらないわけじゃない。
森本:充実してて楽しいのに長いと感じますか?
ヨシダ:人間って大人になるにつれて経験値が増えていくじゃないですか。経験してることって当たり前のように過ぎていくから時間が早く感じるらしいんです。でも新しい経験ってそれに刺激されて自分の意識がそっちに向くから時間が長く感じるらしい。それを聞いた時、私がアフリカで過ごしている時間は新しいことだらけなんだと再認識しました。
森本:なるほど。私の4歳の娘も、おとといの出来事を「昔ここ行ったよね」とか言うんですよ。彼女にとっては昨日が昔。そうやって生きられたら素敵なことですね。
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エナメル加工されたギョウシェ・ソレイユの文字盤を舞台に見立て、大胆な色使いのインデックスが華やかに舞う。時計「ロングアイランド カラードリーム ダイヤモンド」(18KPG×ダイヤモンド、H32.5×W23㎜)¥2,970,000/フランク ミュラー(フランク ミュラー ウォッチランド東京)
今回の対談では、「生きる歓び」を表現したフランク ミュラーの「カラードリーム」をヨシダに着けてもらった。大胆な色使いとエキセントリックなインデックスは屈託のない朗らかな気分を表している。
ヨシダ:カーブした文字盤がすごく特徴的ですね。
森本:アフリカの人に時間の概念を伝えるとしたらどんな時計がよいと思いますか?
ヨシダ:スリ族は数字も文字も読めないんですが、視覚的に覚えることは得意なので、すごくシンプルなものがいいと思う。森本さんの映像を見せたらなんとなく伝わる気がする。儀式のような感覚として。
森本:たとえば数字じゃなくて朝焼けから夜になって星が出てっていうのはどう? 空とか太陽系みたいなイメージで。
ヨシダ:そうですね。空のグラデーションで表すとか。
森本:彼らに時計を着けさせるってもう、神様みたいな行為なんじゃないかしら?
ヨシダ:何が幸せ? って彼らに聞いたことがあるんですが、そもそも幸せっていう概念もないんですよ。日々が幸せだから。死や病気といった嫌なこと以外は幸せなんです。なんて贅沢な日々を過ごしているんだろうって感じますね。
森本:いまの日本社会での幸せ度について考えると、日本がもっと魅力的になってキラキラし始めたら時間の流れ方も変わるんでしょうね。
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ヨシダ:私自身もそうでしたけど、若い頃って時間の価値がわからないまま過ごしてますよね。小学校の頃つまらないと感じていたり、先生に説教をされたり、友達と放課後に遊んだたわいもない時間が、いまになって貴重な時間だったって気付くんです。昔はなにもない時間が退屈でつまらないと感じてたのに、いまは天気のいい日にただぼうっと座っている時間がとてつもなく贅沢だと思える。日々の何気ない時間に気付くことができたら、その人の人生はよりよいものになるんじゃないかな。それを大人が伝えなければって思います。時間に追われるのではなく、違う時間の使い方をしてみたらって。
森本:絵を描くことにたとえると、なんにもない部分があるから、描かれた部分が美しくかたどられていくという。時間もそうかもしれない。
ヨシダ:アフリカでは家族で過ごす時間をいちばん大切にしていて、それがいちばん豊かな生活なんだという気がしますね。彼らを見ていると皆が同じ生活水準なんです。貧富の差もなければ、あの子の方が可愛いから嫉妬するって感覚もない。私もあなたも対等に美しい。
森本:素敵。美しい世界です。
大地を踏みしめて生活するアフリカの人々を、鮮やかな色彩と印象的な構図によって伝えてくれるヨシダの写真は、時間に追われそうになる私たちの日常をふと立ち止まらせてくれる魔法のような存在なのかもしれない。

フォトグラファー。独学で写真を学び、2009年より単身アフリカへ。以来アフリカをはじめとする世界中の少数民族の撮影を続ける。唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、17年には「日経ビジネス誌」で「次代を創る100人」、雑誌「Pen」の「クリエイター・アワード 2017」に選出される。25年に開催される、大阪・関西万博では公式ロゴの選定委員に就任。近年は山形県ものづくりPR動画の映像ディレクション、エア タヒチ ヌイのプロモーションキービジュアルなど、国内外での撮影やディレクションなどを多く手がける。

CHIE MORIMOTO
株式会社 goen°主宰。コミュニケーションディレクター・アートディレクター。 大学卒業後は博報堂へ入社、その後2007年株式会社 goen°を設立。企業広告をはじめ、松任谷由実、Mr.Children のアートワークやテレビ番組のポスターデザインほか、映画や舞台の美術、動物園や保育園の空間ディレクションなど活動は多岐に渡る。著書に10年『うたう作品集』(誠文堂新光社刊)、15年『アイデアが生まれる、一歩手前の大事な話』(サンマーク出版刊)、18年同書・中国版『想法誕生前最重要的事』がある。
※この記事に記載している価格は、標準税率10%の税込価格です。
photos : YOSHIAKI TSUTSUI, texte : JUNKO KUBODERA, coiffure et maquillage : YOUCA(NAGI YOSHIDA)、Haraguchi Saki(BEAUTRIUM/CHIE MORIMOTO)), collaboration : AWABEES