2021年W&W、時計の祭典から気になる新作10選。

Watches 2021.04.26

今シーズン注目の時計たちにスポットライト。

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photo : Maud Remy-Lonvis © Cartier

ロレックス、ブルガリ、パテック フィリップといった新参加ブランドを迎えた今年のウォッチ&ワンダーズは、まさに高級時計界を牽引するサロン。アイコニックアイテムのリバイバル、環境問題を視野に入れた革新モデル、あるいは世界記録。さまざまな新作が登場した今回、本質を見すえるために見逃したくない、10のニュースを紹介する。

ロレックス

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「エクスプローラー」。φ36mm、自動巻き。ケース、ブレスレットともにオイスタースチール&イエローゴールド製。ロレックス ¥1,142,900(予定価格)/ロレックス  rolex.com Rolex/Photo Presse

2020年の「サブマリーナー」、19年の「ヨットマスター」、18年には「GMTマスターⅡ」。毎シーズン、ロレックスは、伝説の時計にひとつずつスポットライを当ててきた。21年の主役は、「エクスプローラー」だ。長い眠りから覚め、繊細なツイストが加えられた、いまの時代にふさわしい姿。自社製キャリバー3230を搭載し、クロマライト ディスプレイ(長時間継続のルミネッセンス)採用で、時間表示もインテリジェントに。1953年にサー・エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイがエベレスト初登頂の際に身につけた、実用腕時計の起源に忠実なスタイルを守る。オイスタースチールとイエローゴールド、2種類の素材によるデザインもいい。

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パテック フィリップ

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「ノーチラス」5711/1A  40mm(10-4時方向)、自動巻き、日付表示、秒針。ケースとブレスレットはともにステンレススチール仕様。文字盤はオリーブグリーン・ソレイユ。パテック フィリップ。Patek.com  Patek Philippe / Photo presse

ブルーの文字盤の「ノーチラス」最強クラシックモデルの生産中止を発表してからわずか数週間。パテック フィリップは、これに勝るとも劣らない本質的モデルを打ち出して、時計界をアッと言わせた。1976年に誕生したスポーツ・カジュアル・スタイルの極みと言われる前モデルと、唯一わずかに違う点は、今シーズンのカラートレンドを反映した、太陽を感じさせる魅惑的なオリーブグリーン・ソレイユの文字盤。このモデルを含め4つのバリエーションが発表されている。

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ブルガリ

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「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」 φ40mm、自動巻き、永久カレンダー。ケースとブレスレットはともにチタン製。¥6,381,000/ブルガリ。www.bulgari.com/ja-jp  Bulgari/photo presse

7つめの世界記録を達成したブルガリ。「オクト フィニッシモ」は、オリジナルのデザインに忠実でありながら、耐えず進化し、リミットを超える力を示し続けてきた。今年の新バリエーションも高性能、時計技術の偉業といえるもの。同社が探求し続ける極薄ケースに、伝統的な永久カレンダーのコンプリケーションを封じ込めた。トゥールビヨン、ミニッツ リピーター、オートマティック、トゥールビヨン オートマティック、自動巻きクロノグラフ、トゥールビヨン クロノグラフを擁する「オクト フィニッシモ」シリーズに加わったのは、世界一薄いパーペチュアルカレンダー搭載モデル。408の部品を厚さ5.8㎜のケースにおさめた驚くべき技術。チタン製とプラチナ製(¥10,252,000)の2タイプ。

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パネライ

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「サブマーシブル eLAB-IDφ44mm、自動巻き、スモールセコンド。ケースはEcoチタン製、ストラップはリサイクルPET。¥7,458,000/パネライ 30本限定。Panerai.com   Panerai/ Photo presse

パネライといえば、イタリア海軍の御用達時代を思わせる大ぶりな時計でコレクターを魅了してきたのはご存知の通り。けれどその魅力は、歴史や、ルミノールなどの人気デザインにとどまらない。社内で革新的なアイデアを研究、実現する「アイデアの工房」の存在もそのひとつ。今回発表された新しい成果は、総重量の98.6%をリサイクル素材で構成した時計だ。エレメンツの多くが、軽量な再生チタンの合金であるEcoTitaniumから形成され、ストラップにはアップサイクルファブリックを使用。夜光塗料のスーパールミノバに至るまで、再利用が考慮されている。プラスチックや漁網のリサイクルを謳う時計は近年増えているけれど、このモデルは、時計業界の中でももっともサステイナブルを極めたもの。

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エルメス

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「エルメスH08」φ39mm、自動巻き。ケースはサテン仕上げチタンにDLCグラックマット。ラバーストラップ。¥643,500/エルメス www.hermes.com  ©Joël Von Allmen 

新しいシンボルとして覚えておきたい「エルメスH08」は、エルメスの時計部門が初めて提案するスポーティな表情を持ち合わせたデザイン。軽量なチタンを使用し、手首によりよくフィットする小ぶりなモデル。エルメスと切り離せない革から初めて離れたモデルでありながら、メゾンの代表的なバッグの持ち手を彷彿させる完璧なディテールのオレンジ色のストラップに、エルメスのエスプリを見出すことができる。

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ルイ・ヴィトン

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「タンブール カルペ・ディエム」φ46.8mm、機械式ムーブメント、ジャックマール機構、ジャンピングアワー、レトログラードミニッツ針、パワーリザーブインディケーター。ケースはピンクゴールド製、文字盤はエナメル、ミニチュアペインティング。ストラップはレザー製。ルイ・ヴィトン。Louisvuitton.com  Louis Vuitton/photo presse

今シーズンいちばんのサプライズモデル。14年、ルイ・ヴィトンが複雑機構専門の工房「ラ・ファブリック・デュ・タン」を傘下に収めて以来、ミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニ率いるこのスイスの小さな工房は、デザインウォッチを急速に高級時計へと昇華させた。過去にも「スピン・タイム エア」「エスカル ワールドタイム」、あるいは「GMT」などの複雑時計はあったが、ルイ・ヴィトンがここまでニッチな“ジャックマール・ウォッチ”で勝負に出るとは誰にも予想できなかっただろう。ある顧客の特注の依頼が発端となって生まれた、アーティな試み。決まった時間にハンマーで叩くオートマタ(機械人形)のテーマに取り組むにあたって、メゾンはヴァニタスとロック精神、職人技を融合することに。文字盤では、アニタ・ポルシェのエナメル加工、ミニチュアペインティング、ディック・スティーンマンの彫金が競演する。あとは時間が来るまでじっと我慢。催眠ワルツのようなスペクタクルが繰り広げられるのを待つばかりだ。

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シャネル

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「J12 エレクトロ ドリーム」φ38mm、自動巻き。ケースは高耐性マットブラック セラミックとブラックADLC加工のステンレススティール製、46個のレインボーカラーのサファイア付き。55本世界限定。¥11,770,000/シャネル(シャネル カスタマーケア) www.chanel.com 

「J12」が20周年を祝ったばかりのいま、どうやってこのアイコニックなモデルの新作を?シャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオ ディレクターのアルノー・シャスタンはこの挑戦を物ともせず、エレクトロミュージックの世界から着想を得た、黒、あるいは白のセラミックに電撃的なデザインを提案。いまでは消え去ってしまったパリの夜の煌めきのように、蛍光色のサファイアの雨がフェイスを彩る。「シャネルの定番ウォッチが代わる代わる舞台に登場してパフォーマンスを繰り広げる。そんなプログラムをイメージしてこのコレクションを作ったのです」と彼はいう。合わせて、同じコンセプトで登場する、「J12」12本セットが黒い漆塗りの特製ボックスに収められた世界限定1個のコフレは色のコントラストも鮮やか。コレクターの注目を集めそうだ。

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カルティエ

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「タンク マスト」光電池“ソーラービート ™”によるムーヴメント。ケースはステンレス製、植物性素材を使用したストラップ。¥303,600(予定価格、9月発売予定)/カルティエ Cartier.jp  photo : Laziz Hamani © Cartier

メゾンを代表するモデル、「タンク」の直線的でありながら丸みを帯びたデザインを再考するにあたって、カルティエは、一つだけでなく、何種類ものバリエーションを打ち出した。スティールブレスレットの「タンク マスト」、1980年代にこよなく愛された「マスト」を思わせるデザイン。植物由来の新素材ストラップも登場した。文字盤の下には、技術革新も隠されている。それは、カルティエの職人たちが3年以上の歳月をかけて実現した光電池、“ソーラービート ™”によるエクスクルーシブなムーヴメント。光によってチャージされる電池を使用しているから、引き出しの中で時計が止まってしまっても心配無用。太陽光に当たれば再び動き出す。駆動時間はなんと16年。すばらしい進化だ。

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ジャガー・ルクルト

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レベルソ・ハイブリス・メカニカ・キャリバー185」手巻き。ケースはホワイトゴールド製。ブレスレットはアリゲーター製。€1,350,000(予定価格、10本限定)/ジャガー・ルクルト。jaeger-lecoultre.com Jaeger-leCoultre/Photo presse

「レベルソ」のようにコレクターに愛されるアイコンウォッチの90周年を記念するのは、簡単なことではない。ジャガー・ルクルトはバーガンディレッドの特別モデルに続いて、今年初め、記念書籍も刊行。大きな計画が進行している予兆を感じさせていた。今回、ジュウ渓谷の工房がローンチしたのは、現在もっとも複雑な機能を持つ「レベルソ」。1994年に登場したダブルフェイスどころか、今回「レベルソ・ハイブリス・メカニカ・キャリバー185」が見せたのは、4つのダイヤル。驚くほどの数の機能(トゥールビヨン、瞬時日送り式パーペチュアルカレンダー、グランドデイト、ムーンフェイズ、ミニッツリピーターなどなど)を包み込むユニークピースの開発には6年以上の歳月を要したという。最強の作品だ。

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チューダー

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「ブラックベイ 「フィフティーエイト」 シルバ−925」φ39mm、自動巻き。ケースはシルバー925製、文字盤はトープ色。レザーまたはファブリックストラップ。¥467,500/チューダー tudorwatch.com/jp Tudor/Photo presse

ステンレススティールやブロンズのケースがおなじみのチューダーだが、今シーズンは、時計業界で評判の新しい合金に参入。オメガとパネライが独自のブロンズを特許申請する中、チューダーは、ジュエリー界の花形素材、シルバー925を採用した。200m防水のダイバーズウォッチは、シルバーとトープ色の2色使いで明るく仕上がり、チューダーのこのシリーズでは初めて、サファイアクリスタル付きオープンケースバックを採用している。

Texte : Anne-Sophie Mallard (madame.lefigaro.fr) ●1ユーロ=¥130.50(2021年4月現在)

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