たとえば共同住宅には、「共用部分」があります。戸建てであっても、道路や景色はほかの住民と共有しながら暮らしています。散歩する河原、公園のベンチ、漂ってくる料理のにおい、近所のどこで咲いているのかわからない、金木犀の香り。私たちは生活の中で、無意識のうちに多くの人と、ものごとを何重にも重ね合わせて「シェア」しています。
この時期、そんな「シェア」している部分を強く意識することになるでしょう。他人とのシェアだけでなく、身近な人、家族やペットなどとも、いろいろなものを分かち合っているわけですが、独り占めできないものはすべて、なんらかの調整や相談が必要になります。お互いの状況や個性などを勘案して、互いがもっとも自由に生きられるように、シェアの配分やタイミングをきちんと調節しなければならないのです。そうした「調節」の作業が、この時期勢いよく進みます。
普段の生活の流れのままでは、「調節」はなかなか難しいものです。一度すべての流れを止めてしまって、そこで新しい配分の形を実現していく、ということが必要になります。「いったん、全体止まれ!」の号令をかけるのは、この時期、貴方ではないのかもしれませんが、ここでの「いったん止まれ!」にはそうした、前向きな深い意味合いが含まれているはずなのです。