鈴木マサル×富山、気になる「富山もよう」
デザイン・ジャーナル 2016.09.23
しろえび、立山連峰、五箇山合掌集落、雷鳥、ガラス、澄んだ水……。
このデザイン・ジャーナルでも何度かご紹介させていただいたテキスタイルデザイナー、鈴木マサルさんが描いた「富山」の豊かな風景、食やものづくりの文化。そのデザインと、デザインに包まれた品々を紹介する「富山もよう展 in Tokyo」が先週末、都内のCASE GALLERYではじまりました。10月2日までの開催です。
「モチーフは富山の魅力そのものです」と鈴木マサルさん。「この美しいもようが増えれば増えるほど、たくさんの魅力にあふれる富山が見えてきます」。「富山もようは、毎日使いたくなるもよう」とも。
プロジェクトのスタートは2年前。富山の多くの方々に読まれている「北日本新聞」が130周年を迎えるにあたり、一面と裏一面がなんと鈴木マサルさんの色鮮やかなデザインで包まれたのです。新聞外側には記事は一切ありません。見たことのない画期的な新聞紙面を知ったとき、すっかり驚かされてしまった私でした。
風景や食、ものづくりの文化など、富山の豊かさが凝縮されたパターンは4種類、「tateyama」「shiroebi」「garasu」「mizu」でした。それも、「テキスタイルデザイン」で新聞を包んでしまう、との発想です。
さらに後日、プロジェクトを企画した小柴尊昭さんに見せていただいた写真には、鈴木マサルさんデザインのパターン(紙面)をラッピングに使うなど、思い思いに楽しむ富山の皆さんの姿がありました。“テキスタイルデザイン”で包まれた新聞がこんどは生活のあちこちを包んでいる。これも驚きです。
「富山による富山のためのデザインであり、地元の人がもっと富山を好きになるためのプロジェクトです。本企画の構想自体も富山の方と一緒に考えました」。小柴さんが語ってくれました。
新聞ラッピングはその後も何度かなされていて、パターンも増えてきました。それだけでなく、プロジェクトそのものの興味深い展開も始まっています。
八尾和紙を用いた品々をつくっている桂樹舎(富山市)とのノートや名刺入れ、能作(高岡市)との風鈴をはじめ、手ぬぐい、カーテンなど、「富山もよう」を楽しめる品々が誕生しているのです。紙風船という粋な展開も。富山のものづくり、人々が、プロジェクトを通してつながっていました。
プロジェクトの背景から紹介されている今回の展示では、「富山もよう」でつくられた品々も一部、購入できます。富山の自然、食、ものづくりの魅力の特色を鈴木マサルさんが表現したパターンを目にできると同時に、「富山もよう」の広がりの進行形を知ることができる内容です。
9月30日には鈴木マサルさんはじめ、関わった皆さんとのトークがあり、私もご一緒させていただくことになりました。プロジェクトに関するお話をうかがいながら、私はこのプロジェクトに感じた魅力をお話しさせていただこうと思っています。トークイベントで鈴木マサルさんとご一緒させていただくのは久しぶりでもあり、とても楽しみです。
近くにありながらも、近すぎて気づいていなかった日本の自然や文化の魅力をかたちにし、共有できるものとしてくれたプロジェクト。生活を彩ることに加えて、日々の時間にとけこみ、愛されながら広がっているその状況に、デザインの魅力や力を感じ、嬉しくなってきます。なにより美しくて、楽しくて、わくわくさせられてしまう。すてきなプロジェクトです。
- 富山を誰かに贈るとしたら、こんなもようで包んでみたい –
〜10月2日(土)まで
CASE GALLERY
東京都渋谷区元代々木55-6 TEL: 03-5452-3171
www.casedepon.com
「地域×テキスタイルデザインから生まれる未来」
9月30日(金)、18:30開場、19:00スタート
鈴木マサルさん、小柴尊昭さん(富山もようプロジェクト プロデューサー)、高橋 理さん(富山もようプロジェクト アートディレクター)と私の4名のトークです。会場:hako gallery 東京都渋谷区西原3-1-4(代々木上原駅から徒歩約5分/展示ギャラリーから徒歩約10分)。お問いあわせはCASE GALLERYまで。チケット予約:http://ptix.co/2d7Bzzw
Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami