ミラノ、東京、マイアミで話題になった、TAKT PROJECTの成長するオブジェ。

デザイン・ジャーナル

2019年もあと2週間となりました。今年目にできたデザインプロジェクトのなかから、特に興味深かったものを今回は紹介したいと思います。1981年生まれのデザイナー、吉泉 聡さんを代表とする「タクト・プロジェクト(TAKT PROJECT)」が、この一年を通して取り組んでいた「glow ⇄ grow」。

今月初めにはアートフェアの『アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ』とあわせて開催された『デザインマイアミ』で、「glow ⇄ grow」最新作品が披露されたばかりです。

2017年のデザインマイアミ/バーゼルで「デザイナー・オブ・ザ・フューチャー・アワード」に輝き、デザインマイアミでも紹介されていた吉泉さん。タクト・プロジェクトとしてグランドセイコーの展示に参加した昨年に続き、ついに今回、同スタジオ初の単独展示となりました。

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デザインマイアミ。名だたるデザインギャラリーのコレクターズアイテムが出展されるほか、フェンディやルイ・ヴィトンを始めとするメゾンの家具コレクションも。

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デザインマイアミでのタクト・プロジェクトの展示。デザイナーやキュレーター、ギャラリーからの公募から厳選される「キュリオ」での紹介に。

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「glow ⇄ grow」が最初に披露されたのは、今年4月のミラノデザインウィーク。現在は使われていないミラノ中央駅の高架下を会場とする、タクト・プロジェクト自身による展示でした。

氷柱(つらら)や鍾乳洞のような透明のオブジェが下がり、光を放つインスタレーション。その素材は光で硬化する特別な樹脂だそう。プログラミングされて少しずつ落ちる液状の樹脂がLEDの光でゆっくりと硬化、氷柱のような姿になっていたのです。

樹脂は落ち続け、光も当てられます。生じた造形を透過する光でさらに樹脂は硬化し、姿を変えていく……。吉泉さんのことばを引用すると、「光ることで成長し、成長することで光が変わる」。「自然の模倣ではなく、制御という人工的な操作に自然の原理を取り込んだ、人工と自然の融合のプロセスです」

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4月のミラノデザインウィークで。「自然と人工、自律と制御、未完と完成といった、相反するさまざまな事柄をつなぐ存在。それらがつくり出す、自然でも人工だけでもない新たな環境をインスタレーションとして出現させました」。photo : Takumi Ota

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次に「glow ⇄ grow」を目にできたのは11月。デザイナーやアーティスト、サイエンティストといった幅広い人々の作品が一同に会する『AnyTokyo 2019』に出展されていた新作です。

「glow ⇄ grow」の一貫したコンセプトのもと、この時の作品は球体に。1920年代に建てられた洋館「九段ハウス(kudan house)」の地下の一室で、彼らのオブジェはなんとも幻想的な光を放っていました。粘性のある樹脂が曲面を流れ落ちているからか、驚かされるほど有機的な姿に成長してもいました。

この部屋には小さな窓があります。かすかに差し込む外光の影響も受けるのか、窓側の部分はほかよりも成長が速いようにも感じられました。まさに「人工と自然の融合のプロセス」です。人間がつくろうと意図してもつくれない造形と光。多くの人々を魅了していたことは言うまでもありません。

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1926年に都内の九段に建てられた洋館 Kudan House(旧山口萬吉邸)で。Photo: Takumi Ota

続く展示で最新の作品となったのが、冒頭で触れたデザインマイアミです。今回は「ポタリー(pottery)」の考えのもと、回転するろくろで陶器をつくるかのようなプロセスに。

作品が展示されたデザインマイアミのキュリオは、公募で厳選されたデザインスタジオが独自に出展できるプロジェクトです。名だたるデザインギャラリーのブースに織り込まれるように、15のプロジェクトが各所に設置されます。

「デザインとアートと、双方の視点が交差しているのがデザインマイアミです。デザインからアート側へ、アートからデザイン側へ、垣根を超えて、あるいは行き来するように作品を鑑賞する来場者の様子を実感しました」。マイアミから帰国後、吉泉さんが語ってくれました。

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デザインマイアミの会場風景。 

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「日本にいるだけではなかなか感じられない文化、デザインに対する人々のまなざしの違いを改めて全身で感じる滞在となりました。一人ひとりの視点や評価指標を持つ方が多く来場していて、自身の世界観にあう作品を探している。それだけに評価や判断が早いというのも印象的だったことです」

そうしたなかで「glow ⇄ grow: Pottery」の作品はどれも展示初日に売約済みとなったそう。デザイナーの提案に満ちていると同時に、デザインとアートの垣根を軽やかに超えるかのような美しくユニークなオブジェが、世界中から集まったコレクターたちの心に瞬時に響いていたことがわかります。

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「glow ⇄ grow: Pottery」。素材と光、さらにはさまざまな環境によって誕生する「ポタリー(陶器)」。会場では制作過程にも紹介、こちらも注目を集めた。

こうしたプロジェクトを通して吉泉さんを中心とするタクト・プロジェクトが行い続けているのは、「つくり方」そのものに着目する彼らの「問い」の発信。

素材に対する考察にも始まり、テクノロジーを活かしながら、目にする人、手に取る人々の心に響くものの創造に対する自主研究であり、実験ともいえる取り組みです。

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タクト・プロジェクト代表の吉泉 聡さん。

独自の視点と熱意をもとに、デザインの可能性を探り続けているこうしたプロジェクトに出会えると、その展開や今後何が実現されていくのだろうかと心がはずみます。

タクト・プロジェクトが見せてくれる次のメッセージは何でしょうか。そして、同様に独自の試みを重ねているデザイナーたちが見せてくれる提案とは? 

さまざまな期待ともに、2020年を迎えたいと思います。

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