「T-HOUSE New Balance」、ニューバランスのヴィジョンと蔵との出会い。

デザイン・ジャーナル

日本橋浜町に7月に誕生した「T-HOUSE New Balance(ティーハウス ニューバランス)」。ニューバランスのコンセプトストアとして、ここでしか手に入らない商品が販売されるほか、デザインスタジオも設けられている建物です。

ホンマタカシさん撮影の写真のほか、貴重なプロセス写真とともにその背景を紹介しましょう。

200730-thouse-01.jpgPhoto:Takashi Homma

「ティーハウス」の名前には、茶室(tea house)のTや東京のT、さらには先験的(Transcendent)のTも重ねられています。

2012年から活動を続ける「東京デザインスタジオ ニューバランス」のクリエイティブデザインマネージャー、モリタニシュウゴさんに、ここに拠点を設けた背景を説明してもらいました。

「ニューバランスは、ランニング、フットボール、野球などカテゴリーごとに開発チームや拠点が異なるのですが、東京デザインスタジオは東京に拠点を置き、グローバルライフスタイルカテゴリーの新しい開発を行う『エナジープロジェクト』のひとつとして、『東京デザインスタジオ ニューバランス』などさまざまなプロダクトを展開しています」

「プロジェクトのマーケティングマネージャーである池戸 豪と僕のふたりに加え、(ニューバランス)ボストン本社や、そのほかの国や地域に在籍するグローバルチームで、コラボレーションなどのプロジェクトを進めています。こうした活動を続けるなかで、東京の拠点となる場をつくりたいと考え、以前から構想を温めてきました」

200730-thouse-02.jpgPhoto: Takashi Homma

"活動のコンセプトを伝える場"としてモリタニさんや池戸さんが探したエリアは、ものづくりの歴史の趣が残る、東京の東側だったそう。そのなかでの出会いが、日本橋浜町のこの場所でした。

もうひとつの出会いは、埼玉県川越に建っていた築122年の蔵。かつては炭問屋として使われていた蔵だそうです。古民家再生と移築を専門とする「山翠舎」の小林賢太さん、岸 航平さんとのやりとりも経て、蔵を解体し、骨組を日本橋浜町へ運搬。移築には3カ月が費やされました。鉄骨造の新築の中に組み立て直し、新たな空間がつくられています。

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200730-thouse-06.jpg移築の記録写真。川越に建っていた蔵を解体し、仮組みして保管。その後、日本橋浜町に運搬され、再び組み立てられた。Photos:Courtesy of T-HOUSE New Balance

蔵の骨組みがそのまま目にできる空間と、木材やコンクリート、磨きあげられてないラフな表情のスチールなど、最小限の素材そのものの魅力が際立つインテリア。いずれもブランドのヴィジョンに結びついています。

「ニューバランスのライフスタイルチームが大切にしているのは、クオリティ。そのうえで、東京デザインスタジオは4つのキーワードを忘れないようにしています。自然界に存在する機能性に目を向けたネイチャーテック、身体を守る機能としてのプロテクション、精密さを極める意味のプレシジョン、そしてスポーツクラフトです」

「スポーツクラフトとは、時代を超えたテクニックを最大に活かしていくこと。ニューバランスでは、アメリカやイギリスなど、各国のチーム独自の強みがあるのですが、僕たち東京デザインスタジオでは、先端技術と手仕事の繊細さの双方を活かした活動をしていきたいと思っています。そのことを含め、日本らしさを伝える場を新たにつくりたかった」

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200730-thouse-08.jpgPhotos:Takashi Homma

建築で関わっているのは「ブルーボトルコーヒー」「桑原商店」「HAY TOKYO(ヘイ トウキョウ)」などを手がけたことでも知られる、長坂 常さん率いるスキーマ建築計画。モリタニさんは長坂さんのプロジェクトに以前から注目していました。

「長坂さんは素材の選択でも独自の考えを持っていて、住まいでもありコミュニティスペースともなるリノベーションプロジェクト(延岡の家)などを実現させています。蔵をただ移築するだけではなく、日本人の目で見ても、海外チームはじめ訪れる幅広い人の目から見ても、機能的かつ魅力的な場にしたいという考えを、長坂さんに伝えました」

対話を重ねるなかで重視されてきた点が気になります。「造形として見せるだけの蔵ではいけない、というのが長坂さんの考えでした」とモリタニさん。

一方の長坂さんは、「古い蔵の骨組みを新築ですっぽり覆うという計画を決めたものの、ハリボテのようにしてはならないと悩んだ」と振り返ります。悩んだ末、「そのままではハリボテの骨組みも、それを利用した機能が新たに加えられることで、ハリボテではなくなる」との考えにたどり着いたそう。

200730-thouse-09.jpgPhoto: Takashi Homma

「コンクリートの新たな空間に、歴史のあるものがただ存在しているという状況をいかに取り除くことができるのか、長坂さんは熱心に考えてくれました。そして、柱と柱を支える水平の部材、『貫(ぬき)』を取り外してしまおう、との提案があった。貫の代わりに新しい木材を柱と柱の間にはめ込むなどして、棚板や配線として使っていくという考えです」

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200730-thouse-11.jpg貫を取り外したうえでの柱の活用方法に注目を。Photos:Takashi Homma

日本古来の空間の特色のひとつが水平的な感覚だったなあ、と思いながら、私は改めてその空間に目を向けてみました。それら水平の造形をかたちづくる部材を潔くなくしてしまったうえで、現代の素材で新たに、それも自由に加えていく。長坂さんのデザインの醍醐味を改めて強く感じます。

また、この建物の2階が、東京デザインスタジオ。モリタニさん、池戸さんの日々の活動の場であり、グローバルチームが来日した際には彼らの仕事の拠点ともなります。

「使っていくうちに使い方が生まれていく。使う人がどんどん決めていけるのが大事」という長坂さんの考えは、動き続けていくこの場にまさにふさわしい。長坂さんは、「どう使い倒してもらえるのかが、とても楽しみ」とも……!

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200730-thouse-13.jpg2階には東京デザインスタジオの仕事の拠点が(通常は非公開)。Photos:Takashi Homma

ティーハウス ニューバランスでは、この空間を生かしたインスタレーションなども開催されていく予定です。第1回の展示は、8月中旬。ニューバランスの新たなスニーカーを発表する機会に合わせて、アーティストの玉山拓郎さんによるインスタレーションが紹介されます。

日本古来の空間が、静かながらもダイナミックな変化を可能にする場となってきたように、アーティストが加わることで、空間の空気はその都度どう変化するのでしょうか。とても楽しみです。

招いた人々と深い時間を共有する場であり、豊かな世界が広がる茶室のように、紡がれていく時間が気になります。空間デザインそのものや紹介される品々とともに、ここから起こっていく「動き」そのものから目が離せません。

200730-thouse-date.jpgPhoto: Takuya Nagata

ティーハウス ニューバランス
東京都中央区日本橋浜町3-9-2
tel:03-6231-1991
営)11時〜14時、15時〜19時(月、火)、11時〜19時(金、土、日)
休)水、木
@newbalance_t_house

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