うつわディクショナリー

うつわディクショナリー#22 吉田直嗣さんの黒と白

うつわディクショナリー

日々の幸せに美しいうつわをひとつ

吉田直嗣さんは、黒と白のうつわを作り続ける陶芸家。その作品は、シンプルだけどそこにあるだけで心に語りかけ、日々の幸せのひとつになってくれるような美しさを宿します。
 

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—吉田さんは、一貫してモノトーンにこだわってうつわを作っています。それはなぜですか?
吉田:形が好きだからですね。使う人にも形の美しさを感じて欲しいと思うと、強い色味や過剰なテクスチャーは必要ない。自分が作りたいものに合う釉薬を探していくと、黒と白になるんです。黒は深みと表情のあるものを、白はプレーンな釉薬を使うようにしています。
 
—ニュアンスのある黒と硬質な白、どちらも吉田さんが作る“かたち”に馴染んでいます。
吉田:釉薬にボディと同じ成分の共土(ともつち)を混ぜているからでしょうか。うつわと釉薬が相性よく溶け合うんです。黒は陶土に鉄を混ぜた鉄釉。白は磁器土に灰を混ぜた灰釉。材料も、作る時の手数も、できるだけシンプルに抑えたいんですよね。
 
—作る手数を抑えるというのは?
吉田:手が触れる時間を少なくするということですね。ろくろで土をひく作業はとても好きなんですが、形の美しさを考えるならば、あまり時間をかけずできるだけ一気に。その瞬間にできたラインを大事にします。
 
—黒は陶器、白は磁器と材料を変えています。その理由は?
吉田:釉薬と同じで、形に合う土を探していく中でそうなったということですね。15年前に独立してしばらくは、黒だけを作っていましたが、ある時、紅茶専門店「teteria」とコラボレートすることになって、お茶の色が楽しめる白で強度もあるものということで磁器を使うようになりました。やってみると、白の表現は無限にあるし、磁器土は全然思うようにならなくて面白くて。こちらの力量が問われるというか。世界中で取り入れられている理由がよく分かります。
 
—うつわ作家になったきっかけは何ですか?
吉田:初めてうつわを意識したのは、大学に入って一人暮らしを始めた時です。うつわは生活を始めるのに必要なものなのに、どこに行っても欲しいものがなくて一つも買えなかった。そんな時にタイミングよく陶芸部に誘われて。自分が欲しいものを作れるならと始めたら、難しくてなかなか作れなくて、かえってのめり込みました。自分の手に収まる範疇で、ものが形になっていくのがものすごく面白かったですね。卒業後は、黒田泰蔵さんに弟子入りしました。
 
—師匠から教わったことで一番役に立っていることは何ですか?
吉田:当時の黒田さんは年間20回個展をしていました。仕事は見て学びなさいという感じだったんですけど、毎日たくさん作り、たくさん触り続けたことで、うつわにあるべきバランスのようなものは身体に染みついたと思います。うつわを持つ時に感じる重さって、総重量とは違うんですよね。持ちやすさは、見込みの大きさと口縁のバランスで変わり、使いやすさにつながるんです。
 
—大学ではデザインを専攻したんですよね。
吉田:それだからか「そぎ落としたミニマムな作品ですね」と言われることが多いんですが、僕としては、そぎ落とすというより圧縮しているイメージ。僕自身は、優美なものもソリッドなものも両方好きでどちらも選べなくて、その間がいい。中庸にある美しさを表現するという時に、僕は間をとるのではなくて、すべて合わせて圧縮していくんです。寿司職人が経験と時間のすべてを一貫に込めていくようなことに近いかもしれません。
 
—シンプルだけど、そこにあるだけで心をとらえるうつわの秘密はそれですね。
吉田:気に入ったものが自分の周りにあれば幸せという感覚の中に、うつわがあればいいなと思いますね。実家でいつも使っていたカップで飲むとなぜか落ち着くとか、紙コップよりは陶器のマグがいいとか。手作りだからいいということでも、デザインがいいからというのでもなく、いいと思うもののチョイスのひとつにうつわがあったらいい。そう思います。
 
※レクトホール(恵比寿)では1月22日まで「NAOTSUGU YOSHIDA EXHIBITION 2018」を開催中です。
 
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今日のうつわ用語【鉄釉・てつゆう】
酸化鉄を含む釉薬。鉄分の量によって、薄い黄色から茶色、黒、黒褐色、柿色までさまざまな色になる。古来、中国で作られて宗の時代に名品が生まれ、日本では、鎌倉・室町時代に瀬戸で焼かれ、茶陶で評価の高い瀬戸黒などが生まれた。

定番のオーバル皿はパートナーの吉田薫さんとの共作レーベル「cheren-bel」より。¥9,180/レクトホール

シンプルながら釉薬に独特の表情を宿す黒。鉢¥5,400/レクトホール

光をまとうことで情感を醸し出すグレー。リム大皿¥27,000/レクトホール

黒と白のツートンも吉田さんらしい作品。ボウル¥10,800/レクトホール

薄い口作りと適度な重さ、ソリッドな形にマットな白が映える。カップ¥3,240/レクトホール

カップとその底にぴったりと合うプレートを一緒に。カップ¥3,240、プレート¥3,240/レクトホール

【PROFILE】
吉田直嗣/NAOTSUGU YOSHIDA
工房:静岡県駿東郡小山町
素材:陶器・磁器
経歴:1976年生まれ。東京造形大学卒業後、陶芸家黒田泰蔵氏に師事。2003年富士山麓にて独立。黒と白のうつわを中心に制作している。
http://ynpottery.net

レクトホール
東京都渋谷区恵比寿南2-15-6グリーンヒルズGF
Tel. 03-3716-1202
営業時間:12時〜19時
www.rectohall.com
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

「NAOTSUGU YOSHIDA EXHIBITION 2018」開催中
会期:2018年1/6(土)〜1/22(月)
1月9日(火)、1月15日(月)

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

衣奈彩子

ライター、エディター
「フィガロジャポン」編集部を経て独立。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らしにまつわる記事を執筆。うつわと食を愉しむ提案をするUTSU-WA?主宰。http://enasaiko.com

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