うつわディクショナリー

うつわディクショナリー#52 Shimoo Designの木のうつわ

うつわディクショナリー

彫刻するように木のうつわを仕立てる

木工家の下尾和彦さん・さおりさんによるユニット、Shimoo Designの木のうつわには、水墨画のようなしっとりとした景色がある。ふたりは、まるで木彫を施すように手を動かして木肌にその景色を描きつつも、あくまでも食卓で使える美しきものへと仕立てていく。そうして生まれるのは、森の中で大木に手を触れた時のような安心感を持つ、懐の深い日本のうつわです。
 
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—下尾和彦さん・さおりさんによるShimoo Designは、家具をメインに制作をしていますが、うつわも作るようになったきっかけは?
下尾和彦:いまは定番になっている「KAZARIDAI」という作品を作ったのがきっかけです。これは、もともと家具として作った置床(おきどこ:床の間の形式のひとつで木の台を壁につけ床の間としたもの)を小さな飾り台としてサイズダウンしたものでした。
 
—置床というのは、1998年の高岡クラフトコンペでグランプリを獲得された作品ですね。
下尾和彦:岐阜県高山市の家具工房で働いたのち独立した翌年に出品したものです。当時は、西洋化した現代生活に合うオイル仕上げのナチュラルな木の家具が多く出回っていたんですが、僕たちは、日本に昔からある美しい木の道具を作りたいと思っていました。すっきりとしたデザインの置床を提案することで、現代の床の間として、花をしつらえたり、焼物を飾って、愛でることができるのではないかと考えたんです。僕らのものづくりのルーツですね。
 
—うつわを作ることに抵抗はありませんでしたか?
下尾さおり:「KAZARIDAI」は、棚やテーブルの上に、床の間のように季節感のある場所を持つきっかけになればと思って作りましたが、学生時代から家具をメインに作っていたので、80センチとか50センチという大きさには、なかなか慣れませんでした。でも、そのサイズ感が都会で暮らすお客様に好評で、うつわを楽しみにしてくれる方が増えたんです。
 
—うつわと家具で作る時の考え方に違いはありますか?
下尾さおり:お皿や鉢物はいかにもうつわですが、トレーや飾り台も、使う人の発想次第で食物を乗せ食卓に用いることができるということを、レストランのシェフが教えてくれました。使ってくださる方々の発想が自由なので、うつわと家具の間に垣根を設けずに作ることができます。置床の他にも、椅子に座って茶道のお手前をするための入れ子式立礼卓やローテーブル、スツールなどを作っていますが、同じ考え方で足つきの板皿や盆、花器などが生まれています。
 
—独特な色と手触りのある、浮様(ふよう)シリーズが生まれたきっかけは?
下尾和彦:表現したかったのは、風雨にさらされた建物の木壁のように木目が引き立ち、グレイッシュに変色するほど時を経た木の美しさ。はかないけれど、生命力のある様子でした。浮造(うづくり)という日本古来の技法をアレンジして、柔らな木目を削り落とし、力強く年輪を刻んだ木目を残していきます。その後、色をのせて仕上げます。
  
—木目をいかしつつ手をかけて景色を描いていくんですね。その理由は?
下尾和彦:ひとつは、作品として自分たちらしい表現をしたいからですね。もうひとつは、使い勝手を考えて。浮様のうつわはそこに刻まれた景色のおかげで、経年変化を最小限にとどめながら、長く美しく使っていただけます。
 
—美しい日本の道具であるために心がけていることは?
下尾さおり:日本人の私たちが作るものなので、Made in japanの佇まいは自然とにじみ出ると思っています。その分、心がけているのは、私たちが美しいと思うラインにミリ単位でこだわること。平らなようでいてわずかにカーブした線など、暮らしの中にあって心地よいラインを探っています。
 
—どんなものが理想ですか?
下尾和彦:自然そのものでもなく、自然を真似するのでもなく、自然の木に力を借りることで生まれる”Shimoo 独自の世界観”を提案していけたらと思っています。
 
※2019年6月17日まで「雨晴」にて、Shimoo Design×雨晴「雨音を聴きながら」を開催中です。
 
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今日のうつわ語【浮造り・うづくり】
木の表面を丁寧に削ることで年輪を浮かび上がらせる木工の技法。磨きながら木の柔らかい部分をそぎ落とすため、つややかで美しい木目が顔を見せる。
【PROFILE】
Shimoo Design 下尾和彦、下尾さおり/KAZUHIKO SHIMOO,SAORI SHIMOO
工房:富山県富山市
素材:タモ、クリ、ニレ、ケヤキなど
経歴:下尾和彦さんは工芸科のある高校で木工制作、短大でも木工で作品を作り、卒業後は飛騨高山の家具工房に勤める。下尾さおりさんは、同短大で木工を学び、卒業後、純和風住宅を手がける工務店で家具職人として働く。1997年ふたりで工房を開く。1998年初出品で工業都市高岡クラフトコンペ グランプリを受賞。2001年にも同賞に輝く。「美しい日本の道具」をコンセプトに日本の文化や美意識を現代のライフスタイルに落とし込むことを目的とした家具やうつわづくりを行う。https://www.shimoo-design.com/

雨晴
東京都港区白金5-5-2
Tel. 03-3280-0766
営業時間:11時〜19時
定休日:水曜
https://www.amahare.jp/
✳商品の在庫状況は事前に問い合わせを

「Shimoo Design×雨晴『雨音を聴きながら』」開催中
会期:2019年6/7(金)〜2019年6月17日(月)
※定休日:水曜日

photos:TORU KOMETANI realisation:SAIKO ENA

衣奈彩子

ライター、エディター
「フィガロジャポン」編集部を経て独立。うつわを中心に工芸、インテリア、雑貨など暮らしにまつわる記事を執筆。うつわと食を愉しむ提案をするUTSU-WA?主宰。著書に『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス刊)、『料理好きのうつわと片づけ』(河出書房新社刊)。編集した書籍に『どっちつかずのものつくり』(安藤雅信著・河出書房新社刊)。http://enasaiko.com

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