パリの川村さんちの朝ごはん

初夏を感じる、キュウリのサラダとフロマージュ・ブラン。

「もうね、庭のキュウリがわんさか出来始めちゃたから、しばらくは、来る日も来る日もキュウリよ」。
マルシェで、いつもの生産者のスタンドにキュウリが登場したのを見て、表には出さずとも心の内で密かに興奮し、フランスのキュウリとしては小サイズながら、日本のものに比べると1.5〜2倍近く太いそれを、6本買って帰ってきて、台所で改めて目にした時に、先のセリフが思い浮かんだ。
田舎暮らしで自家菜園があって、キュウリを栽培している誰かの家に、例えば週末を過ごすために訪れたならば、食事の支度を始めようとしたところで現れた山盛りのキュウリを前に、こんな風に言われるかもしれないなぁと思ったのだ(そう、妄想です)。

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季節の到来を知らせる野菜がマルシェに出てくると、いつだってうれしいものだけれど、うわぁと声を上げるような華やかな存在では(私の中では)ないものの、もしかしたら、他のどんな野菜よりも実はうれしいのが、キュウリかもしれない、と思う。
幼い頃から、最も身近で、いつだって当たり前に存在していた野菜だったような気がする。ぬか漬けがいつも食卓に出ていたからだろうか。ともかく、いちばん食べやすい野菜だった。
パリ近郊の生産者から野菜を買うようになり、旬にだけ食べるようになって、1年のうち数ヶ月しか口にしなくなった。
相変わらず、キュウリがあると、なんだか安心する。
そして、今となっては、暑い夏には心強い存在だ。住居にはクーラーが無いのが一般的なフランスで酷暑に見舞われると、キュウリを食べて身体を冷やし、暑さを凌ぐ。

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まだまだ朝晩の空気は冷たいけれど、昼間の青空は気持ちよく、日がすっかり延びて夏に向かっていることを感じるようになってきた。
初夏の週末、天気の良い午後に、庭でランチをする光景を思い描いていたら、シンプルなキュウリのサラダに、フロマージュ・ブランを合わせたいと思った。フロマージュ・ブランは、大抵2つのタイプが売られている。つるんとした滑らかなlisseと、ちょっとボソボソで素朴な感じのcampagne。料理に使うときは、いつもこのカンパーニュを私は買う。

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リヨンの料理に、セルヴェル・ド・カニュという一品がある。フロマージュ・ブランやフレッシュなシェーブル(ヤギ乳) チーズをベースに、エシャロット、ハーブを刻んで加え、ビネガーとオリーブオイルで和えたものだ。
私はこれが好きで、よく作る。でも一つアレンジすることがあって、エシャロットの代わりにキュウリを使う。エシャロットだと結構味が強いし、朝食べるのは憚られる。その点キュウリだと、気兼ねすることなく食べられるし、みずみずしさも保たれて、良い具合だ。
作ってみたことはないけれど、きっとギリシャヨーグルトやクリームチーズでもおいしくできるのではないかなぁ。

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この組み合わせで食べよう、と思ってから、9区のBabka Zanaへパンを買いに行った。レバント(東部地中海沿岸)地方のパン屋さんで、ユダヤ教徒が金曜あるいはお祝いの日に食べる“ハッラー”という、乳製品を加えずに作るパンを売っている。これが、モチっとしてとてもおいしい。オリーブオイルベースの何かと合わせるのに、最近のお気に入りだ。

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今日の朝ごはん
・キュウリのサラダ
(フルール・ド・セル、ローズペッパー、レモン、オリーブオイル)
・フロマージュ・ブランのセルヴェル・ド・カニュ風
(キュウリ、シブレット、イタリアンパセリ、ミント、白ワインビネガー、オリーブオイル(たっぷり)、フルール・ド・セル(ほんのひとつまみ)、胡椒)
 *キュウリはかなり小さめの角切りに。
・茹でたグリーンアスパラガス
・Babka Zanaのハッラー
・コーヒー

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今日のおまけ記事!>>シェーブルチーズにピリッと辛い蜂蜜を合わせて。

パリの川村さんちの朝ごはん一覧

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
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