久しぶりのブロカントと、本物のサラダ・ニソワーズ。
先週末、自宅周辺の通りでブロカント(古物市)が開催された。
数週間前から、告知の立て看板や垂れ幕がところどころに出て、楽しみにしていた。
ブロカントを見て回るのは、昨年の9月以来だ。
強風と雨と雷が交互に顔を出す不安定な天気だったからか出店数はそれほど多くなく、来るかなぁ? と思っていた、いつも状態の良い食器を多く揃えるご夫婦もいなかった。
それでも、端から端まで隈なく見るように歩いた。やっぱりうれしい。
すると1軒、お! と目を留める店があった。
奥の陳列台に、今が旬の野菜や果物を思わせるような色合いの皿が見える。
近づいていき、迷わず手に取った。馴染み深いフォルムだ。裏返すと、サルグミンヌ窯の刻印。この連載で、ホワイトアスパラとグリーンピースの朝ごはんの時に使った皿と、同じ時代の刻印で、形も同じだ。
「この柄、初めて見たなぁ。こんなのあるんだなぁ」そう思いながら、すでに心はほぼ決まっていた。ただ、ほんのすこし訝しく思ったのは、値段だ。破格だった。
考え込んでいたら、店のマダムに話しかけられた。
「このお皿も、セットではなくて1枚ずつで買えるんですか?」「そうですよ、この台にあるものは全部、1枚ずつ買えますよ」。
台ごとに、1点5ユーロとか1点15ユーロなどと書かれた紙が置かれている。
「この時代のサルグミンヌで、この値段ってあり得ない、と思って…」と言うと、彼女は肩を上げ、すぼめるようにして、「でも、あり得るのよ」と答えてから続けた。「もちろん仕入れ値もあるのだけれど、何ヶ月もブロカントがなかったし、ストックだけが増えて、どんどん放出していかないと収拾が付かない状態なんですよ」。
そうか。いまは、買い時なのか。
マダムと入れ替わりでやってきた店のムッシュに、「この柄、初めて見ました」と伝えたら、「僕もこれは初めて見たよ」と言った。
“黄金の太陽”というシリーズ名のその皿を5枚、買って帰った。
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皿に描かれた夏の気配を感じ始める春の終わりのような色合いに、私は、サラダ・ニソワーズが食べたくなっていた。
考えてみれば、今はちょうど季節だ。
「サラダ・ニソワーズとは、ニースとその周辺で取れた生野菜を使ったサラダ。特に小粒のソラ豆とトマトの両方が収穫できる夏の始まるのわずかな期間に楽しむ郷土料理。・・・・・・主な材料としては、フェヴェットという名の小粒のソラ豆、トマト、アーティチョーク(“ポワヴラード”と呼ばれる、このあたりが特産の小ぶりで紫色がかったもの)、ピーマン、ラディッシュ、セベット(ワケギ)、ルッコラなどの葉野菜、黒オリーブ、アンチョビ、ツナ、そして茹で卵。オリーブは、やはり土地のものを使う」
(自著『日曜日はプーレ・ロティ』の第6章「本物のサラダ・ニソワーズを探せ!」P88〜89より抜粋)
サラダ・ニソワーズには、本来、火を通した野菜は一つも入らない。この皿で最初に食べるのは、南仏を感じるみずみずしいサラダにしよう。急がないと、ソラ豆の季節は終わってしまう。ギリギリのタイミングで間に合ってよかった!
週が明けて、早速、マルシェのいつもの生産者のスタンドに行くと、ソラ豆はあったのだけれど、先週まであった小ぶりのアーティチョークは“もう季節は終わったわよ”と告げられ、そしてピーマンはまだ出ていなかった。
それでも、ルッコラ、トマト、ラディッシュ、セベットの代わりに赤タマネギの葉タマネギ、フェヴェットは揃った。
小粒のソラ豆は鞘から出して、皮をむく。それを茹でずに生のまま食す。
味付けはオリーブオイルと塩だけ。
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このサラダで、実はこれがキーパーソンと私が思っているのは、セベットだ。
今回は葉タマネギで代用したけれど、味が柔らかな青ネギは、オリーブオイルで作る何かに加えると、料理(それがたとえサラダであっても)自体の表情がいきなり変わると思う。とても、魅力的に。
この日は、ツナは他の具と混ぜ合わせずに、添えることにした。
それに、口当たりの軽さと香ばしさを求めてpetit épeautre(ヒトツブコムギ)粉のパンを合わせた。
この色の感じ好きだなぁ、と満足して、食べ始めてから、トマトを加えていないことに気がついた。
すっかり忘れてしまってた。でも、トマトなしバージョンの方が好みかも。とても気に入った!
今日の朝ごはん
・サラダ・ニソワーズ
(ルッコラ、ラディッシュ、葉タマネギ、小粒ソラ豆、小粒黒オリーブ、ツナ、アンチョビ、茹で卵、オリーブオイル、フルール・ド・セル、胡椒少々)
・Brutのヒトツブコムギ(petit épeautre)粉のパン
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