パリの川村さんちの朝ごはん

クリームソースを染み込ませ、ブリオッシュを堪能する朝ごはん。

先々週、土曜日に取材で9区に出かけた。お昼の営業時間前にまず撮影をして、閉店後、インタビューをさせてもらうので、空き時間があった。それで、周辺を散歩することにした。商店街のマルティール通り(rue des Martyrs)まで歩いて10分ちょっとの距離だったし、そこまでの道中にもショーウィンドウ越しに覗くのが楽しい店が少なくないのだ。

コンドルセ通り(rue Condorcet)をふらついていたら、相変わらずブーランジュリー・マミーシュ(Boulangerie Mamiche)には長蛇の列ができていた。いつもなら通れば立ち寄るけれど、「今日はやめておこう」と通り過ぎ、普段はあまり通らない脇道に入ってうろちょろしながらマルティール通りに出た。

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坂を下りながら、途中、シャルキュトリーでハムとテリーヌを買い、パティスリー、セバスチャン・ゴダール(Sébastien Gaudard)のショーウィンドウに抗えず洋ナシとりんごのタルトを買って、さらに少し下ると、新しい店ができていた。
「なんだろう?」と思いながら少し遠巻きに見ていたら、通りかかる人が次々と吸い寄せられるように店に入っていく。「いつ出来たんだろう? そんなに長い間来ていなかったかな?」と、前には何があったか思い巡らした。入らずとも、窓から中を覗き込む人が後を絶たない様子を見ると、最近オープンしたのかもしれない。近づいたらパン屋さんだった。それで、思い出した。ここは前もパン屋さんだった。でもだいぶ趣が違う。天井の高い店内に私も引き寄せられて、列に加わった。どれもおいしそうで、いくつも買いたくなったけれど、順番が来てしまい、とっさに口から出たのは、ブリオッシュ・フイユテとクロワッサンだった。それに、棚の上に置かれ目が止まったパン・ド・ミも切ってもらい、買って帰ることにした。

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私は、ブリオッシュ生地を折り込んだブリオッシュ・フイユテ(折り込み生地だから一見クロワッサンと似ているけれど、ブリオッシュ生地には卵が入る&バターの分量も多い)に目が無い。出合えば買う。この店のは、個別のポーションではなく、パウンドケーキ型くらいの大きさだった。
切って、中の生地を触ったら、学生の頃大好きだったグラタンパイを思い出した。そうしたら、クリームソースに生地を浸して食べたくなった。ホワイトソースを作るとすると小麦粉を加えることになるから避けて(小麦粉はパンだけで十分だと思い)、生クリームで仕上げる何かにしよう。

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翌朝、ちょうど買っていた、ホワイトアスパラにグリーンピースと合わせることにした。それと色がいい塩梅だなと思い、カブも。

相変わらず朝は洗い物をあまり出したくない。かつ、コンパクトに済ませたい。
それで、
①卵焼き用の長方形のフライパンで、ホワイトアスパラとカブをまず塩茹でし、火が通ったら(茹で汁はフライパンに残し)ざるに引き上げる。
②フライパンのゆで汁を3分の1くらいに減らし、そこに鞘から出したグリーンピースを入れ、色が鮮やかになったらすぐにクレーム・フレッシュを投入。
③ホワイトアスパラとカブも戻し入れて、全体を絡め、皿に盛る。
④ソースにレモン汁を絞って、ほんの気持ち、煮詰めて、上からかける。

アスパラとカブを茹でている間に、セロリを千切りにし、塩もみしておく。
私は、セロリを繊維を断つように切るのではなく、繊維に沿って千切りにするのが好きだ。水気が出たら絞って皿に盛る。ソースに絞ったレモンを、最後絞り切るように数滴垂らす。
全体にオリーブオイルをまわしかけ、オーブンで少し色づくくらいに焼いた(今回は焼きすぎた)ブリオッシュを添える。ブリオッシュはもし乾いてしまっている感じがしたら、切り口に指で水を軽く散らして焼くとふっくらします。

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アスパラやグリーンピースにソースをよく絡めてブリオッシュに載せる。思い描いた味だった。
セロリのサラダはそのままで食べるのはもちろん、冷めてきたら、皿の底に溜まったクリームソースと絡めてもおいしい。そしてそれをまたブリオッシュに載せて食べるのだ。

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今日の朝ごはん
・ホワイトアスパラガス、カブ、グリーンピースのクリーム仕立て
(粗塩(茹でる用)、クレーム・フレッシュ、レモン)
・千切りセロリのサラダ
(フルール・ド・セル、レモン)
*最後に全体に、黒こしょうとオリーブオイル。足りなかったらレモンもさらに。
Le Pain Retrouvéのブリオッシュ・フイユテ
・コーヒー(グランド・エピスリーのブラジル・サントス)

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※明日、おまけをアップします。 ぜひそちらもお楽しみに!
 

パリの川村さんちの朝ごはん一覧

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
YouTubeチャンネルを開設しました。

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