
チーズと卵黄ソースをたっぷり、インゲンのカルボナーラ風。
遡ること24年前。
フランスに留学することを決めて準備を進める段階で、“さて、どの街に行くか”と考えあぐねていた時に、決め手となったのは、現地におけるインゲンの話を聞いたことだった。
そう、野菜のインゲン。
フランスではともかくインゲンを食べた、とすでに1年の留学を経験した人が話してくれた。そのことに大いに興味を引かれて、私は留学先を決定したのだ(詳しくは、拙著『日曜日はプーレ・ロティ』に書いています。よかったら読んでみてください)。
実際に、7月から始めたホームステイの食卓にも、インゲンはかなりの頻度で登場した。
ただそれは、歯ごたえを残した火通しの色鮮やかなインゲンではなく、いつも、うぐいす色でくたっとしていた。大抵は、メイン料理の付け合わせだった。
フランス生活1年目の夏を振り返ると、何より、毎日のように食べた野菜はインゲンだった気がする。
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そんなわけで、インゲンはすごく身近な存在だ。
夏の定番野菜は、トマトもナスもピーマンもキュウリも、みんなツヤッツヤしていて、その鮮やかさに目を奪われるけれど、何はともあれ、マルシェに行けば、インゲンを買う。
いつも買いに行く生産者さんの店では、トマトよりもインゲンが出ている期間は短い。だから、売っている間は、ほぼ欠かさずに買う。
朝から、油を引いて炒め物をあまりする気になれない私には、茹でるだけでも、食べ方に幅のあるインゲンは朝ごはんにも使い勝手が良く、頼もしい存在だ。
つるんとした肌の他の夏野菜のように艶はなくとも、旬のインゲンはやっぱり弾けそうな勢いを秘めていて、茹で上げた後にそのまま食べたい! と思ったことがあった。長いし、パスタの要領で、おいしくできないかな? と思い巡らし、浮かんだのがカルボナーラだ。お箸で食べるには長さを短く切った方が食べやすいけれど、フォークならば、食べにくいと思ったらナイフを使えばいい。
カルボナーラと言っても、ペコリーノチーズをわざわざ買いに行くことはせず、常備しているコンテを大抵使うし、グアンチャーレもパンチェッタも加えないから、あくまで、カルボナーラ風と言ったところだ。
作り方も大雑把。
まずインゲンを塩茹でする。茹でている間に、ボウルにコンテを削り、卵黄とクレーム・フレッシュ(なければ生クリーム)を加え、混ぜておく。
インゲンは少し固めくらいの茹で加減でザルにあげ(この時に茹で汁を少し取っておく)、水気を切る。冷水で冷やすと水っぽくなってしまうので、そのまま。
インゲンがホカホカのうちにボウルに投入し、和える。ゆるい和え具合が好きだったら、ゆで汁を少し加え、最後に黒コショウをガリガリ挽く。
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これを作ると、どうしても残ったチーズと卵黄のソースをパンで拭いたくなる。私は、パンをいちばん食べたくなるのは朝ごはんで、それで、最初は夜ごはんやランチに作っていたこのインゲン・カルボナーラ風を、いつしか朝ごはんに作るようになった。
でもね、白ワインともおいしいです。インゲンさえあれば、冷蔵庫にあるもので賄えるので、友人が家に来てのお夕飯にも、さっと出来る温かい野菜料理の一つとしてよく作ります。
今日の朝ごはん
・インゲンのカルボナーラ風
(コンテ18ヶ月熟成、卵黄、クレーム・フレッシュ、コショウ)
*味を見て、足りなければ塩を振ってください。
・キュウリの塩もみ、ミント和え
・ベランダで育てた黄色いプチトマト
・Brut de Painsのブリオッシュ・クラシック
・Shinya Painのパン・ノワール
・Grande Epicerienのコーヒー、メランジュ・グランド・エピスリー
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