パリの川村さんちの朝ごはん

肌寒い朝は、素朴で温かいニョッキとクリームソース。

朝起きたら、6度だった。

でも、まだ建物の中央暖房は入っていない。
寝室の片隅ですでに出番を待っているオイルヒーターを点けようかとも思ったけれど、それよりも、早く歯を磨いて、いつもよりたっぷり目にヨガをして、身体を温めることにした。

気温が下がることは、天気予報を見て分かっていたのに、実際にいきなり冬の体感温度になったらにわかに怯んだ。朝ごはんは、カリフラワーのポタージュにするつもりだったのが、ちょっと違うなぁと思い始めた。カボチャを買っておけばよかったなぁ。何かそんな、ホクホクっとしたものが食べたくなった。

どこか粉っぽくて、素朴で、ほくっと温かい風味のもの。その風味が、ほわっと鼻まで包み込みそうな。口の中でイメージしながら、なんだろなんだろ、とベッドメーキングをしつつ自分のレパートリーを探って、ジャガイモのニョッキがいいかもしれない!と浮かんだ。

ちょうど、コロッケを作ろうかな、と思って買ったジャガイモがあった。いつもマルシェで野菜を買う生産者さんのスタンドでは2〜3種ジャガイモを売っていて、そのうち“モナ・リザ”と名のついた品種が、フリットやピュレにするのに適しているものだ。モナ・リザは10cmほどの面長で、厚みもあり大きい。それを5つ買っていた。

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ジャガイモのニョッキを作るなら、全体的に白い盛り付けにしたいなぁ。
ポタージュにする予定だったカリフラワーを、サラダにしようか。
モルタデッラと生ハムがあるから、どちらかを添えればピンクが差し色になって可愛いかも。
そう、盛った図までイメージして台所に行ったのに、カブを見たら、カブのみずみずしさの方が断然ジャガイモのニョッキに合っている気がした。カブなら色合いは変わらない。結局、カブでサラダにすることにした。

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冬になるとたまに、ニョッキを朝ごはんに食べる。
ニョッキを夕食に食べたくなることは滅多にない。
イタリアンレストランに行っても、パスタが大好きだから、例外なくそちらに優先順位が置かれて、おなかにたまりそうなニョッキは敬遠する。
そんな存在なのに、なぜか、朝ごはんに食べたくなるのだ。
カボチャやジャガイモなどのホクホクした野菜に、粉を合わせると、粉の風味が増す気がする。その味わいが、なんとも朝の気分に合致することがあって、寒い季節になると、“ニョッキ気分”が時折顔を出す。頻度としては、朝からそば粉のガレットを食べたくなるのと同じくらいかもしれない。

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そんな時に、タイミングよくジャガイモがあれば、作る。
ジャガイモの量に対し、小麦粉は4分の1。
イタリアで一般的なレシピは他に何も加えないみたいだけれど、私が作るのはもしかすると少しフレンチかぶれで、卵とバターも入れる。
そんなところもちょっとそば粉のガレットと似ているなぁと思う。ブルターニュの人たちはそば粉と水だけで、他に何も入れない。でも巷に出回っているレシピでは、溶かしバターと卵を加える。

話が少し逸れたが、
この朝家にあった粉は、どれもふすま成分の少し入った、真っ白ではないものだった。でもそれもおいしそうだ。
硬さを見ながら量は調節すればいいだろうと思い、作ることにした。

ジャガイモを茹でて、マッシャーで潰し、そこにバターと粉と卵を加え混ぜ、まとめたら、適量を切って棒状に伸ばす。それを1cmくらいの幅に切って、フォークの背で転がし形作る。
朝だと、この形作る工程が非常にアバウトになるけれど、まあそれもご愛嬌。味には影響ない(と思う)。

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たまたま骨つき鶏胸肉と手羽でとった出汁があったので、生クリームを溶いて、スープにすることにした。

もしかしたらポタージュを作るよりも工程は少ないくらいなのに、ポタージュよりも身体が温まる感じがして、朝ごはんにニョッキ、オススメですよ!

添えたカブのサラダは、薄切りにして塩もみし、水気を切って、刻んだディルとオリーブオイルを加えて和えただけです。

最後に全体に黒コショウを挽いて、出来上がり。

●今日の朝ごはん
・ジャガイモのニョッキ、クリームソース
(ニョッキ:身を潰しやすいタイプのジャガイモ500g、小麦粉125g、卵1個、バター15gでまず生地を作り、食べたい分だけ茹でる。茹るとすぐに浮かんでくるので、茹だったかどうかはすぐにわかります)
・カブのサラダ
(塩もみ→オリーブオイル、ディル)
・オーヴェルニュ地方産の生ハム
・コーヒー

*バターの分量は大雑把に、大さじ山盛り1杯くらいの気分で加えています。
*ジャガイモを潰したら、温かいうちにバターを加え、次に粉、最後に卵を加えると、卵が固まらずにうまく混ざるはず、です。
*前の晩に全部を混ぜ合わせるところまで準備して、翌朝、お湯を沸かす間に、小さく切って形作るだけにすると非常に楽です。

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パリの川村さんちの朝ごはん一覧

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
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