パリの川村さんちの朝ごはん

バターだけで味わう、クルジュ・スパゲッティ。

フランスに来てから、“クルジュ・スパゲッティ”という名のカボチャを初めて食べた。オーブンで焼くと糸状にほぐれる果肉は、火を通したズッキーニのようなみずみずしさで、かつ軽やかな歯ごたえもあり、よりカボチャに近い風味がする。まだネット環境がそこまで発達していない頃で、当時は検索もできなかったのだけれど、日本では金糸瓜の名で存在することをだいぶ経ってから知った。
ただ、食べ方はどうもだいぶ違うようだ。

クルジュ・スパゲッティに出合ったのは、たしか、クリスマスの翌日。当時付き合っていた人の実家で、一族集まってのディナー会があり、その翌朝だったと思う。と言っても、朝はゆっくり起きて、みんながダイニングに集まる頃にはほぼお昼で、「軽く済ませましょう」と残り物でランチを用意することになった。そこに、クルジュ・スパゲッティが登場した。前の晩に焼いたガチョウのローストの身をほぐし、オーブンで焼いたクルジュ・スパゲッティと合わせてクレーム・フレッシュ(液体ではない、スプーンですくうと伸びるモッタリとした濃厚な生クリーム)で和え、サンドイッチにした。
それが、とてもおいしかった。軽く済ませようというのは段取りだけの話で、なかなかリッチな組み合わせだなぁと驚きはしたものの、ガチョウのローストをサンドイッチにするなんて発想は16、7年前の私にはなかったし、有り合わせの活かし方に、クリスマスのディナーよりもフランスの食文化を感じて、密かに興奮した。
その時から、クルジュ・スパゲッティを見つけると買うようになった。
みずみずしさがカボチャよりも食べやすく、縦半分に切ってオーブンで30分ほど焼いたら、身をほぐすようにしながらバターと和えるだけで、とてもおいしいのだ。最高に手のかからない一品ができる。

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今週、マルシェに行って色とりどりのカボチャの山を見たときに、そうだ! と思って聞いてみたら、クルジュ・スパゲッティもその中に混ざっていた。それで、買った。

生クリームとも、フロマージュ・ブランとも、オリーブオイルとも相性は良く、焼き上がりに身をほぐしながら何かと和えて行く工程が好きだ。ぷわーんと立ち上る湯気と香りにうれしくなる。

今シーズン最初のクルジュ・スパゲッティは、シンプルにバターで食べることにした。

カボチャと同じく、一気にシーズンが始まったかに見えるリンゴも数種類買い、チーズも合わせて選んでいたから、それで秋を味わおう。

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クルジュ・スパゲッティをオーブンに入れている間に、材料を切って盛るだけの朝ごはんにしたら、焼き上がりまでに時間が余ってしまうくらいに、お手軽な朝ごはんです。

食べる直前に、クルミオイルをひと垂らししようかなぁと思ったけれど今回はバターだけで。
クリームチーズとハーブをたくさん刻んで混ぜ合わせたりしてもおいしいです。

●今日の朝ごはん
・クルジュ・スパゲッティ(金糸瓜)のロースト
・マルシェで買ったハム
・リンゴ、ブドウ、チーズの盛り合わせ
(チーズ:コンテ22ヶ月熟成、モルビエ、ブリヤ・サヴァラン)
Brut de Painsの全粒粉パン
・コーヒー

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パリの川村さんちの朝ごはん一覧

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
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