パリの川村さんちの朝ごはん

ジャガイモ料理を目当てに、パリの人気店Grammeへ。

朝ごはんに食べたいなぁと思う料理のある店があった。

朝9時オープンで夕方5時には閉まるその店、Grammeはいつしか人気店になり、ランチタイムに出かけると店の前に行列が出来ている。
ただ、みんな、外で待っている人を気にかけて、食事を終えるとすぐに席を立つから意外に回転は早く、そんなに待ち時間は長くない。
店内でも、焦らせるような雰囲気はなくて、少し前に土曜に出かけた時も、幼なじみと一緒に充実のランチタイムを過ごした。

そのお昼の時間の活気にあふれた空気を満喫したら、席はちらほらと埋まるくらいで静けさの心地よい午前中の店の様子を思い出したのだ。賑わう時間に向けて準備に追われる厨房の喧騒を感じながら、原稿を書くのもまた好きだ。

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ある朝、行けるタイミングを見つけた。
それで、パソコンを携え、出かけることにした。

9時から10時までは甘いものだけの提供で、塩味の料理はたしか10時からという記憶があった。
目当ての一皿はジャガイモ料理だ。それで10時過ぎに着いてみると……
なんと、かろうじて1テーブルが空いているのみだった。
ランチタイムが始まっているかのように、決して広くはない店の温度もすでに熱を帯びている。
それでもスタッフはまだフル稼働ではなく、店主カップルのマリーヌとロマン、それにバリスタの3人がそれぞれの仕事をこなしていた。

厨房を担うマリーヌが、Salut ! Ca va? と声をかけてきたので
「本の出版おめでとう!」と伝えると
「ありがとう!」と笑顔が返ってきた。

「まだ何も試してないのだけど、ティラミス風パン・ペルデュ(フレンチトースト)をまず作りたい。」
「ブリオッシュから作るといいよ」
「難しくない?」
「手間は少しかかる。でも難しくはないよ。大丈夫!」

Grammeは、毎朝、インスタグラムのストーリーズにメニューをアップする。
それをチェックしていたから、店ではメニューを開かずに(QRコードを読み取る)ロマンに注文した。

「プラッキと、フィルターカフェを」
「プラッキね、OK!」
「最近は朝も、いつもこんなに混んでるの?」
「そう、最近はね。いつもこんなだよ」
悪くないよね! と言わんばかりの表情でロマンは言った。

ランチタイムも遅めだと、焼き菓子の並んだショーケースからはほとんどが出払って、クッキーしかなかったりするのだけれど、この日は、出番を待ち構えるかのように勢ぞろいしていた。
私はここのキャロットケーキが大好きで、テイクアウトするためだけに寄ることもあるし、どこよりいちばん食べている。つい10日ほど前まで四角かったのが、形を変えたらしい。
今日はどうしようかなぁ、タルトもおいしそうだ。
目星をつけながら、パソコンを開いた。

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注文したプラッキ(Placki)はポーランドのジャガイモのガレット、とメニューに書かれている。
シェフのマリーヌは、ポーランド人(父)とベトナム人(母)のハーフで、だから彼女の料理には独自のミックス感があり興味深い。

ガレットはどうやって出てくるのかなぁ、ハッシュドポテトみたいな感じかなぁと想像していたら、そうではなかった。
ジャガイモはスライスされて、ガレット状の部分は厚みがある。
横から見てみると膨らんでいて、どうも卵の白身と和えてたっぷりの油で焼いているみたいだ。
その効果か、周りはカリッと、内側はふっくらと焼きあがっている。

IMG_4890-akikokawamura-211112.jpg 卵の黄身を崩して、絡めた。

あぁ〜このジャガイモの感じ、好きだなぁ。

Grammeの料理はどれもハーブがたくさんでそれもお気に入りの点だ。ゴマたっぷりのスパイスミックスも食欲促進に一役買っている。
「ここに来ればこれが食べられる」と楽しみにする朝ごはんの一皿に出合えたのはうれしいなぁ。

いつの間にか2人目のバリスタと厨房スタッフたちもやってきて、いよいよ朝から昼の時間帯へと空気が変わろうとしているのを感じ、店を出た。

家に帰ってから、 Grammeの本にプラッキが載っているかもしれない、とめくったら、載っていなかった。
見よう見まねで作れそうな気もするけれど、やっぱりGrammeで食べよう。

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ぜひご覧ください。
https://youtu.be/E3avL-2dF68

パリの川村さんちの朝ごはん一覧

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
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