あなたのアールドゥヴィーヴルってなんですか? 村上香住子:パリの蚤の市で出会った『空間』。

Lifestyle 2021.10.05

植物を育てる、アートを飾る……日々の暮らしを彩る大切なこと。自分ならではの美学を持つクリエイター7人に、極めて私的なアールドゥヴィーヴルについて聞きました。


村上香住子(作家・エッセイスト)

1985年夏、心を奪われた幻想的な『空間』。

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「あ、岡本太郎だ」。最初に見つけたのは、アートディレクターの堀内誠一さんでした。場所はパリ左岸サンシュルピス広場のマルシェ・オー・ピュス、1985年夏です。一般的に知られている岡本太郎の鮮やかな色彩とはまるで異なる、黒を基調にしたその『空間』というリトに、すっかり心を奪われ、堀内さんは買わないというので、私が買ったのです。日比野克彦さんがパリの私の自宅で『空間』を見て、帰国後に「僕の知り合いがパリの蚤の市で、掘り出し物を手に入れた」とラジオで語り、その後お会いした岡本太郎さん本人にもそのことを話したそうです。結局、その時に胸を打たれた幻想的な『空間』の雰囲気を大切にしたいため、次に買ったものも、それに近い感じになりました。20年間のパリ暮らしから東京に戻ってくる時、ほとんどの家具は友人にあげてしまったのに、この『空間』は持ち帰りました。いまは、鎌倉の海辺の古民家の壁面に違和感なく溶け込んでいます。

村上香住子(作家・エッセイスト)
Kasumiko Murakami
フランス文学翻訳の後、1985年にフランスに渡る。フィガロジャポンをはじめ、多くの女性誌で執筆。パリから日本に帰国後、鎌倉へ移住。
ブログ>>猫ごころ 巴里ごころ

*「フィガロジャポン」2021年9月号より抜粋
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