ハイパーセンシティブな人は、弱くも強い?

Lifestyle 2021.11.04

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人口の20~30%がハイパーセンシティブとのことだが、その特性はいまだによくわかっていない。photo:Getty Images

騒音に耐えられない? ささいなことで涙が出たり、感情が抑えきれないことは? 心がずっと休まらない? しばしば、ひとりきりになる必要がある? ほかの人とは永久的にずれていると感じている? あらゆることに心がかき乱されてしまう?

以前なら、あなたは繊細な感受性の持ち主で、神経質、感情的、敏感、内向的、心配性、さらに心気症か、単純に変わり者と見られただろう。戦地における小さく儚い存在のように。しかしいまなら、20~30%の人たちと同じように、ただハイパーセンシティブなだけかもしれないと捉えられる。そして専門家の言うことを信じるなら、この傷つきやすさは強みになるかもしれないのだ。

すべての感覚が過敏

「長い間、感じやすいことは“弱さ”だと考えられていました」と、リサーチ会社ペクレールのルシール・ゴーティエは認める。「自己啓発の発展と、さまざまな危機とともに、すべてが変わりました。私たちは目標を見失って自分自身の中に逃れ、感情を探り出して、受け入れるようになったのです」。『ハイパーセンシティブ 幸せになるには感受性が強すぎる?』(1)の著者で精神分析学者のサベリオ・トマセラは言う。「30年ほど前から、男の子も含めて感性を重んじる根本的な動きが発生しました。これはたくさんのストレスや不安を生む、テクノロジーとバーチャルの社会へに対処したものです」

実際、“過敏症”と呼んでいるのはフランスだけ。アングロサクソンの国では高感度、高感受性と言う。そして、それはまさに流行りのテーマだ。アメリカの心理学者であるエレイン・N.アーロンによれば、ハイパーセンシティブの自己診断テストはネットにあふれかえっている。作家のアンヌ・ジェスキエールは自身のポッドキャスト「Métamorphose」で、心理学者のカミーユ・スフェズとともに「傷つきやすさ」に関する数個のエピソードにスポットを当てた。また、哲学者のファブリス・ミダルは、著書『私はハイパーセンシティブ?』(2)の実用書版を発行しようとしているところだ。

もしも感情の受容体をMRIで調べようとしても、疾患ではなく、個人の数だけのハイパーセンシティブが存在すると認められるだけだろう。なぜ感情や感覚的な刺激、騒音、光、匂い、味、電磁波、天気、痛みなどに感じやすい人がいるのか? 不思議だが、これは感情過多なのではなく、年齢や性別とも関係ない。ファブリス・ミダルによればハイパーセンシティブは人をより創造的に、直感的に、芸術的に、結び付けてくれる大切なものでもあるのだ。

一部でハイパーセンシティブは「Graines d’Étoiles(スターの種)」と呼ばれ、知能指数が高いと考えられることもある。しかし、サベリオ・トマセラはこの安易な言葉を利用することを拒む。彼にとって感じやすさとは、苦しみとならない限りはよいもので、ポジティブで、人間的なものだ。「うまくいっていない人は、このハイパーセンシティブに価値を与えてくれる話にしがみつこうとします。それは、困難について探ろうとしないための口実で、結果的には息詰まることになるでしょう。この感じやすさが悪化すれば、仕事や社会での可能性を断ち切ってしまったり、恋愛関係がうまくいかなくなったり、自分の殻に閉じこもってしまうようになります。その場合、やはりセラピーを検討したほうがよいでしょう」

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身体が語るままに

ハイパーセンシティブは飼い馴らすことができる。「今日では、感情を言語化するよりも自分の中に養っていくほうがよいとされています」とサベリオ・トマセラは続ける。「戦えば戦うほど強固になっていくからです。神経系はおよそ2分で感情を処理します。したがって時間をかけて身体の中を巡らせなくてはならないのです」

サベリオ・トマセラのアドバイスはこうだ。「感情を受け入れ、目を閉じ、少し休憩し、何が起こっているのかを意識します(手の湿り具合、震え、不安で胸が締め付けられている、むずむずする、胃の調子が悪いなど)。通常はこれで大丈夫。もしうまくいかなければ、身体を動かします。歩き、腕や頭をゆっくり左から右へ動かし、目ですべてを追っていく。神経ネットワーク(多くの器官や副交感神経システムのバランスを管理する、迷走神経を含んでいる)を有する首を動かすようにします」。専門家である彼によれば、情動が繊細な人は、特に朝と夜の白砂糖摂取量を控えるとよいそうだ。

(1)『Hypersensibles. Trop sensibles pour être heureux ?』SaverioTomasella著(Eyrolles出版)
(2) 『Suis-je hypersensible ? 40 situations. 40 solutions』Fabrice Midal著(Flammarion出版)

text : Marion Louis(madame.lefigaro.fr)

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