アムールな国のイマドキ恋愛&結婚事情。 彼女のほうが高収入。金とカップルの新しい関係性。

Lifestyle 2022.03.02

同棲・事実婚・結婚と、カップルの形もそれぞれ。フランス人は自由恋愛を謳歌しているイメージがある。だが、本国版Madame Figaro誌を読むと、コロナ禍の影響やマッチングアプリ、SNSの進化で世代によって考え方が変わってきたり、新たな悩みに苛まれたり……。さまざまな恋愛&結婚事情が見えてきた。


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彼女のほうが高収入。金とカップルの新しい関係性。

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どうしちゃったの?」「昨夜は、私があなたより稼いでいる から興奮するって言ってたよね ?」「そう、昨日はね......でも俺、今日昇給したんだ!」

パリ在住のカップルで子どもはふたり、最近アパルトマンをリフォーム……。38歳のオリヴィエはセールスエンジニア、36歳のエリーズはマーケティングマネジャーで、世帯月収は約9,000ユーロ。そして彼女のほうが、5,200ユーロと給料が高い。「僕の意見は聞いてくれるけど、基本的に彼女が決めたんだ!」と無精髭を生やしたパートナーのオリヴィエはソファで寛ぎながら言う。これで完璧。書棚はオーダーメイドだし、キッチンも最高のものを揃えた。家のフォームを仕切ったのはエリーズだ。

エリーズは預金通帳の残高をチェックなんかしないし、オリヴィエは自分が統計的にレアな立場でいることを気にも留めない。「彼女より収入が少ないことを妬んだり悔しがったりは一切ない。もう男性が稼いで女性が子どもの勉強を見るなんて時代じゃない。僕たちはチームだ。最初に帰宅した人が食事や宿題の世話をし、払える人が多く払えばいい!」とオリヴィエは言い放つ。どちらが家計を支えてもいい。実際、エリーズが大手化粧品グループに転職するまでは、オリヴィエの給料のほうが高かった。今年のヴァカンス費用は彼女が出す。「彼女のキャリアが順調で誇らしく思う。肝心なのはどちらも生き生きと働けることだ」と オリヴィエは続けた。

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柔軟な考えの30代が、根強い既成概念を一掃しつつあるのだろうか?フランス国立統計経済研究所 (INSEE)によると、フランスでは女性の4人にひとりがパートナーより高収入だそう。「自助と平等に慣れた若い世代のほうがこだわりが少ない」と言うのは社会学者のエレーヌ・ベローだ。著書『L'Amour et l'Argent(愛とお金)』(Éditions du Remue-ménage刊)執筆の際、3000組のカップルを調査した。50代もしくは40代の男性はこれまで一家の長として、妻よりも収入が多いことを前提に自尊心を保ってきた。フルタイム換算で男性は女性よりも平均して18.5%給与が高い。そして出世するほど格差は広がり、上級管理職では21%の差がある。だから状況が変わり、女性のほうが高収入となっても、この世代の夫婦の多くは表向きを取り繕う。夫の自尊心を傷つけないよう妻は会計の際に自分のクレジットカードをこっそり渡し、子どもの高価なスニーカーの値段を伏せておく。

「ある種の規範やロマンティックな理想を守るのは、男性だけで家計を維持できなくなっている事実から目を背けるひとつの方法かもしれない。家庭内でお金は依然として権力、権威、パワーの象徴であり、家庭内の地位や関係性を決定付ける」と言うのは哲学者兼セラピストのニコル・プリウール。『La Famille, l'Argent, l'Amour(家族、お金、愛)』(Éditions Albin Michel刊)の著 者だ。お金が夫婦関係に影響を及ぼすこともある。妻が出世した場合、収入と性欲は反比例する、と精神科医は断言する。性科学者のカトリーヌ・ブランのもとにカウンセリングを受けにやって来たある50代の男性は、妻が出世に意欲的だからムラムラしなくなったと妻を非難した。

精神的に去勢されたかのようなこの現象は、30代ではあまり見られないようだ。好況を知らずに育ってきた世代は消費行動も異なり、家事は分かち合い、お金よりも相性を重視する。高学歴の彼女が大企業で出世していく一方、同じく高学歴の彼は社会貢献分野を志向する。「30代の女性は経済的に自立しているため、これまでとは違う男女の在り方も受け入れます。こうしたカップルは社会的側面よりもエシカルな観点からお金の使い途を考えるのです」とプリウールは分析している。

*「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋

text: Ophélie Ostermann (Madame Figaro) illustration: Fabienne Legrand (Madame Figaro)

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