2030~2040年には、犬や猫との双方向の会話が実現!?

Lifestyle 2022.03.19

From Newsweek Japan

現在すでにIoTやディープラーニングにより、ペットの気持ちが理解できるようになっている。このテクノロジーは今後どう発展し、未来のビジネスはどう変わっていくのか。

220310-futurebook-top.jpgphoto: kozorog-iStock.

テクノロジーに関心のある人なら、パワースーツ(アシストスーツ、パワーアシストスーツとも)について、少しは聞いたことがあるかもしれない。医療や介護、物流などの現場で身体を補助してくれる最新テクノロジーだ。

だが、日本に限っても、イノフィス、CYBERDYNE、ATOUN(あとうん)といった複数の企業がパワースーツを開発し、すでにビジネスを展開していることまで知っているだろうか。また、これからパワースーツがどう発展し、どのようなビジネスに活用されていくのかについても。

テクノロジーは驚くべきスピードで「進化」している。今も世界中の企業が、SFを思わせるような未来のテクノロジーを開発している。そうしたテクノロジーによって未来のビジネスがどう変わっていくは、実はある程度「予測」できる。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)で人工衛星の開発に携わっていた齊田興哉氏は、宇宙ビジネスに関する専門家としてNHKやABEMA Prime、毎日放送などに出演。多方面の最新テクノロジーに精通しており、テクノロジーの発展と、それによって起こるビジネスモデルの変化を知り、仕事やキャリアに生かしてほしいと話す。

ここでは、齊田氏の新刊『ビジネスモデルの未来予報図51』(CCCメディアハウス刊)からペットと会話できるテクノロジーについてを抜粋する。パワースーツから臓器チップ、空飛ぶタクシー、見たい夢を見る装置まで、51の最新テクノロジーとそれらの「ビジネスの未来予報」を分かりやすく解説した1冊だ。

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気持ちを知るには、IoTセンサーとディープラーニング。
 

2021年現在、ペットと会話とまではいかないが、気持ちを把握することは可能になってきた。これは、膨大なデータから人工知能AIを用いた機械学習やディープラーニングを使い、ペットの感情の特徴を抽出することで実現している。

カナダのSyvlester.aiは、アプリ「Tably」を発売している。使い方は簡単で、スマホにアプリをダウンロードし、ペット(猫)を撮影するだけ。ペットの画像の上に感情を示すイラストが表示され、現在の気持ちを把握できる。

気持ちの把握には、コンピュータービジョン(人の視覚でできるタスクを自動化し、コンピューターが視覚世界を理解できるようにする技術のこと)と、Feline Grimace Scale(機械学習で使われるアルゴリズムで、モントリオール大学附属動物病院で開発された。①耳の位置、②目の開き具合、③鼻先から口元の緊張度、④ヒゲの位置、⑤頭の位置の5つで、猫の痛みを把握できる)という指標を使う。痛みの症状があるペットと、ないペットの画像を比較すると、この指標に違いがあるのだという。

このアプリは猫用で、「重度の皮膚アレルギーを持っている猫の回復を把握できた」「老衰していく猫に鎮痛剤を投与できた」「関節の炎症に気付けた」など評価が高い。アプリを活用することで、獣医と連携して遠隔医療ができるメリットもある。

日本電気(NEC)は、PLUS CYCLE(IoTセンサーが搭載された首輪)と、人工知能AIを使って、ペットの気持ちの把握を実現している。加速度センサーや気圧センサーなどが備え付けられた首輪でペットの行動を測定し、その行動からAIを活用してペットの気持ちを分析する。

その分析結果は、LINEのメッセージで届く。ペットから、「ねむねむ...」や「起きた~」などのメッセージが届く、ユニークなプロダクトだ。

日本のベンチャーAnicallは、ペットの首に装着したセンサーとアプリで、さまざまな状態を把握することができる。餌の食いつき状況や咀嚼の把握、温度や湿度管理、運動量の管理などが可能だ。

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ビジネスの未来予報:ペット市場にとどまらず、動物園へ拡大。
 

現在はペット(犬や猫)が対象のサービスだが、今後対象となる動物は多様に拡張されていく可能性が考えられる。そうなれば、ペット市場にとどまらず、動物園市場へと拡大していくはずだ。

動物園にいる動物は、哺乳類などの高等動物ばかりではないが、飼育員のなかには、担当している動物との信頼関係をもっと築きたい、コミュニケーションを取りたいと考えている人もいることだろう。

動物に小型で軽量化されたIoTセンサーを取り付け、24時間365日映像でモニターする。ディープラーニングと動物の表情に特化した指標を活用して、リアルタイムで動物の健康状態や感情を把握する、そんな未来が予測できる。

このテクノロジー、プロダクトを持つ企業は、動物園に毎日(もしくは定期的に)このサービスを利用してもらうことで、収益を得る構造だ。

現在は、動物の気持ちを分析し理解することでヒトが対応する単方向のコミュニケーションだが、双方向はなかなか難しいだろう。

一方で、現在すでに、画像からAIでペットの気持ちを分析しているので、映像からAIでリアルタイムに分析できるようになるには、他事例を考えると、それほど時間はかからない。

未来学者ウィリアム・ハイアムは「10年以内には犬と話すことができるデバイスが実現するだろう」と語っている。犬や猫などのペットとの会話は、2030~2040年に実現することになる。

さらに、犬や猫以外のさまざまな動物との会話が実現するまでには、映像からディープラーニングと動物の表情に特化した指標が整備されるのに20年から30年以上の年月がかかるとすれば、実現は2040年~2050年以降になると考えるのが妥当だろう。

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『ビジネスモデルの未来予報図51』101ページより

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『ビジネスモデルの未来予報図51』
 齊田興哉 著
 CCCメディアハウス刊

 

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text: Newsweekjapan

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