十人十色の恋愛・性愛、 私たちの愛の物語。 社会の枠組みから外れた、 8年続くソウルメイト。
Lifestyle 2023.01.04
同性愛、離婚約、不倫愛……多様性が謡われる時代だからこそ、愛への考え方やパートナーとの在り方も人それぞれ。LINEのやり取りは11万通、という不倫愛のお話をお届けします。
社会の枠組みから外れた、
8年続くソウルメイト。
M〈 美容系・35歳 〉& K〈 アーティスト・55歳 〉
7年半ほど関係を続けているアーティストの彼がいるMさん。Kは20歳年上で、妻子持ち。いわゆる不倫関係だ。
「私がいまの仕事で駆け出しの頃、作品作りをしていたKから、知人伝いにモデルを頼まれたことが出会いでした。初めて会った瞬間から驚くほどすんなり打ち解けて、お互いの芸術や人生に対する考えがピタリと一致。 すぐに男女の関係となり、週に何度も会ったり、毎日LINE のやりとりをするように。当時の LINEを振り返ったら、11万通もやりとりしていました。」
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Mさんは20代半ばで一度結婚するも、相手からの精神的DVにより離婚。Kと出会ったのは、それから1年ほど経った頃だった。
「その頃、私には新しくお付き合いしている人がいました。それにKが結婚していることも知っていたけれど、自然と惹かれ合ってしまったんです。 Kのクリエイションに対する考え方を尊敬していたし、Kも私の反応をひとつの指針としてくれて、うれしかった。ビジョンや創作を微力ながら支えられることへの喜びが、最も大きかったんです。いまは恋愛感情がありますが、もし男女の関係でなくなっても離れられないし、傍にいると思います」
世界の捉え方が同じだと思える相手との邂逅はごく稀で貴重なことだと、ふたりとも感じている。会えば時間を忘れ、さまざまなことを深く語り合うのだという。
「ふたりで映画を観たり、お酒を飲んだり、友人を交えて遊びに行ったり。ライブに行くとか、読んだ本を交換することも。出会ってからこれまで、Kの教えてくれたことが私の血肉になっています。誰よりもいちばん深く話せる人ですね。精神的な繋がりを強く感じています。Kも同じようで、家族とも共有できないことまですべてさらけ出せると話してくれます」
まさにソウルメイトと呼ぶべき、太く固い絆を感じら れる相手。それでも、Kが家族のもとを離れたり、自分の周りの人を悲しませたりすることは避けたいという思いが、Mさんの中には強くある。結局、彼女はふたりが出会った頃から付き合っていた男性と再婚した。
「私にとって、Kも自分も、家族と身の回りの人を悲しませないことが何より重要。こんな関係を続けて説得力はないかもしれませんが、Kと一緒になりたい正直な私と、道徳的・社会的な私を天秤にかけるような真似はしないように強く意識しています。Kには家庭を大切にしてほしいし、私も自分の人生を前に進めなくてはと思って、いまの夫と籍を入れました。それでも結局、Kとは離れられませんでしたが……」
Mさんの再婚が決まり、Kと話し合って一度は別れる方向に。だが、離ればなれの生活は長く続かなかった。
「心と身体がバラバラな状態になって、自分が自分でないような感覚が毎日続きました。新婚なのに気持ちはずっと暗いままで、夫と一緒にいても隠れて泣いてしまったり、自分がコントロールできなかった。ここまでKと離れることが難しいとは、再婚して初めて気付きましたね」
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自分の人生を見守り、応援してくれる家族のためにも、夫とは安定した家庭を築いていきたい。子どものことも視野に入れているが、「そうなったら、しばらくは大好きなKと会えない。どうなるかはまだわからないけれど、心は常にKの傍にいると思います」
社会的に正当な枠組みから外れている関係だからこそ、人を愛するとはどういうことなのか、Mさんはよく考えるのだという。
「私とこれを観に行きたい、私にあれを食べさせたい、 私をどこに連れて行きたいなど、一緒に何かしたいとがよく言ってくれるのですが、それはとても本質的な愛 に思えます。個人的には、愛しているとか言われるよりもうれしい。何の約束もない関係だから、ありがとうや好きの言葉は意識して伝えるようにしていますね」
苦悩や不安の先に見いだした愛は、ただただ強い。
*「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋
text: Misaki Yamashita, illustration:Ewelina Skowronska