片付けが苦手なあなたへ、覚えておきたい9つのこと。

Lifestyle 2023.04.15

片付けマニアになる必要はない。あふれ出ているモノを堤防で堰き止め、本当に必要なモノを探り出していく。こうすれば達成感も得られる。さあ、やってみよう!

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より少ないものでより良く生きる。 Illustration: Jean Mallard

自分にとって大切なことのために、時間と空間を確保するにはどうしたらいいのだろう。「より少ないものでより良く生きる」には「心のエコロジー」が鍵となる。それは「過剰なモノからデトックス」する儀式でもある。マリー・ケリュさんは自身のインスタグラムのアカウント@larrangeuseと最新の著書でこれについて語っている。彼女のメソッドはときめきを軸に据えた片付け法“こんまりメソッド”とは少し異なる。ケリュさんは人間とモノとの関係を再定義し、モノが氾濫している状態(つまりモノたちによって汚染されている状態)は、我々をいかに疲れさせているか気づかせてくれる。その疲れは精神にも視覚にも及ぶ。片付け上手な人であっても同じような気付きに達するはず。そのためのステップを紹介しよう。

基本的なこと、大事なことに集中する

私たちは自分の脳みそに騙されてしまうことを覚えておこう。何千年も昔から人間の脳は「生きるか死ぬか」モードでプログラムされている。だから脳はモノをため込むよう私たちに命令してきた。しかし、少なくとも先進国では、必死にストックしなくても生きていける時代になった。この矛盾が私たちの不幸を産んでいるのだ。全て揃っているのに(それも必要以上に)、“もう必要に迫られていない”という観念を脳は理解できないのだ。もちろん脳を責めるわけにはいかない。でも、この仕組みを知っていると、衝動を効率的に抑えられるようになる。

喜びのプログラムを書き換える必要があることも理解しておこう。我々は手に入れることの喜びに振り回されやすいのだ。ドーパミンがドッと放出されるので、すぐにまた同じ体験を繰り返したくなる。これもまた原始の「ため込み癖」の名残なのだ。しかしこの衝動に打ち勝とうとするより、その衝動を巧みに誘導する方が有意義だ。「心のエコロジー」はまるで刑罰のように物を減らしていくライフスタイルを推奨するのではなく、“本当に必要なモノ”に集中しようと提案する。所有する喜びを排除するのではない。それゆえ、個人の好みに合わせることが可能である。再フォーマットされた新しい喜びは、“手に入れる”という束の間の喜びに制約されることはない。自分が自信を持って選んだ美しく、便利で長く使えるモノに囲まれて暮らしているという新たな喜びに変わるのだ。

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モノで溢れることを拒否する

心のエコロジーと言えど、それには自己本位な面もあることを受け入れよう。環境汚染を対処したければ、まず自分の家の前を掃くことから始めなければならない。確かにあなたの家の周りに危険廃棄物はないかもしれない。しかしモノが多すぎると視覚的汚染が起きるのだ。モノが寄生しているような部屋では、それらが遠慮なしに常に視界に入ってくるからだ。山積みになったモノを使えていない罪悪感も起きる。それは精神的汚染として心に重くのしかかってくる。もちろんそれを買ったための無駄遣いも罪悪感に加わる。心のエコロジーは、パーソナルエコロジーに進化し、地球に対してより大きく配慮する姿勢へと発展していく。誰も責めることはせずに。

溢れ出ているのは物質的なモノだけではないことを覚えておこう。無形なモノも私たちを束縛している。溜まったメール、ずっと使っていないWhatsappのグループ、整理されていない何百枚もの写真……。家族・友人・社会関係にも同じようなことが言える。我々がよく口にする“義務”というコンセプトはまさにそうだ。本当に“ねばならない”のだろうか? なぜ? どこまで? そしてもちろん有害な人間関係や、遠い昔にしか共通点を見出せない交友関係も忘れてはならない。ここでも自分で健全な境界線を設定することによって、救われることがある。

理想を定義する

自分が理想とする場所、人生、生活の場を定義してみよう。もし魔法が使えて今すぐに何かを変えられるとしたら、まず何を変えるだろうか。それを考えることによって自分が本当にやりたいこと、見たいもの、感じたいことがはっきりしてくる。例えば理想的な一日を時間を追って描いてみたり、心が躍る場所のムードボードを作ってみたりしてもいいだろう。インスタグラムのスクショでそのようなものを作っている人もいる。時間がかかる作業かもしれない。しかし、瞑想するためにこんな場所が欲しい、あるいはこんな灯りを取り入れたいなど、自分の欲求をはっきりさせていくとインスピレーションが湧いてくる。単に古い食器棚やほこりだらけのカーテンを処分するよりずっと有効的な作業だ。結果として、皮肉なことに今あるものよりもっと使い勝手のいいモノを買うことになってしまうかもしれないが(例えば瞑想に適した寝椅子)、それはそれでよし。

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選別をする

整理する時、壁となっているものを視覚化してみよう。この段階でやっと“ハード面”に突入するわけだ。無意識のうちに身動きを鈍くさせてしまっているモノ、タスク、人間関係を選別するのだ。まずは物理的なモノたちから始めよう。それらをカテゴリー別(洋服、食器、化粧品、本、グッズ……)に分け、それぞれの“山”を作る。こんなに持っていたかと大きなショックを受けるだろう。誰でも必要以上に持っていることに薄々気づいているが、実際に目の前に山となって現れると実感が伴う。ため込む癖を変えるにはとても効果的な方法だ。次は文化的、あるいは感情的なモノに取り掛かる。本、CD、紙物、記事の切り抜き、収集品、写真、思い出などだ。そして最後には上に述べた物質でないモノに取り組む。もちろん全てをいっぺんにやるわけではないし、家を不要品の“山”で埋め尽くすわけでもない。一つの山が終わったら次の山に取り組もう。一番邪魔なものから始めると、すぐに成果が出るのでやる気が増す。

目的は日常生活を美しくさせること

ポイントは大切なモノを選び出すこと。ただ片付けるのではなく、しっかり自覚しながら選別するのだ。どのようにしたら自分にとって過不足のない適量のモノ、情報、関係を残せるだろうか。過剰に残すでもなく、イヤイヤ諦めることもなく。もちろん合理的な判断基準はある。例えば「この黒いパンツはベーシックだから便利」。もちろんその判断は重要だが、再考の余地はある。「このスライサーがなければ、ビーツのカルパッチョは食べられない。でも一年に何回、生ビーツカルパッチョを食べるだろうか」と考えてみる。心のエコロジーは根本を問うものだ。モノを実際に手に取り「これは本当に必要なモノか、それとも疑いの余地があるのか?」と自問してみる。もし迷いが生じたらそのモノや関係(それに含まれるシンボリックな重みを含めて)とおさらばしよう。もちろん、これを直感的に行えるようになるまで、ある程度の訓練が必要となる。

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整理し直す

残ったモノを整理しよう。それらを恣意的に押し入れにしまい込んでいいわけではない。これでは今までの努力が無駄になってしまう。さまざまな整理術があるなか、心のエコロジーは5つのキーワードを与えてくれる。まずは「カテゴリー別」に分けること。つまり同じサブカテゴリ―のモノしか一緒にしまわないことだ。次は「手に取りやすく」しまうこと。入れ物の後ろに別の入れ物を置いたり、ある物を手に取るまでにいくつもの動作を必要としないようにする。「目に見えるように」すること。例えば中身が見える引き出しを使う、ラベルを張る、色で分類する、同種の物をグループで分けるなど一目でわかる分類法を見つけることだ。「戻す場所」を作ること。あちらこちらに散らばっている小さなモノたちの場所を確保することだ。最後は「タテに」収納すること。これはスペースを最大に活用し、モノを見える化するためだ。洋服ならば、“折り込み式のたたみ方”( #larrangeuseにたくさんのチュートリアルがある)にすると、積み重ねたセーターのうち、一番下のセーターを取る時の山崩れを避けることができる。

新たな価値を見出す

インテリアを創り変えてみよう。残ったモノたちを使って、それらを演出しながら日常の暮らしを美しくすることが目的だ。“片付け”よりも“演出”と考える方が、満足感が高いだろう。カゴや器類を使うならそれらを組み合わせてみよう。固定せずに並べ方を変えると自己流の創作になって楽しい。市販のパッケージの中身をシンプルな容器に移し替えると、パッケージが発する過剰な情報や色で頭が疲れることがなくなる。室内の照明をもう一度よく考えてみるのもよい。自分が持っている素敵なモノたちを再発見し、見える場所に置きなおす良い機会にもなる。

『 L'Écologie d'intérieur, vivre mieux avec moins(『内的エコ:より少ないものでより良くくらすこと』), 216 p., 25 €, Éditions Eyrolles.

text: Valérie de Saint-Pierre (madame.lefigaro.fr) translation: Hana Okazaki, Hide Okazaki

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