セックスレスなのは私のせい?

Lifestyle 2023.12.01

性生活があるかどうかが、カップルの親密度のバロメーターと見なされることがいまだに多い。したい気持ちがなくなってセックスレスになると、不安な気持ちになったり、自分を責めて悪循環に陥ったり。フランスのマダムフィガロのリポート。

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性欲がなくなると不安な気持ちになり、自分を責める人もいる。photography : Youst / Getty Images

42歳の大学教員、フランス人のオロールが夫と最後にセックスをしたのは7ヶ月前のことだ。「レスになってから200日経ったけれど、やりたいと思わない」と言う。「セックス砂漠かしら」と冗談めかして言うものの、内心、今の状態を不安に思っているし、罪悪感もある。恋人だった頃を懐かしむ気持ちも。「仕事や育児、家事でくたくたになってベッドに入ると、今日も夫と愛しあわずに眠りにつく自分を責めることがよくあります」と言う。

性欲がないことに罪悪感を覚える。それはオロールのように自ら感じる場合もあれば、パートナーからそう感じるようにプレッシャーを受ける人もいる。「罪悪感とは一般的に、法律や道徳規範に違反して、悪いことをしたときに生じるもの」と言うのは、臨床心理士でカップルセラピストのエリザベス・ド・マドルだ。罪悪感という言葉の意味を改めて問い直すことは意味がある。この場合の罪悪感は百害あって一利なしだからだ。「実際には何も悪いことをしていない。なのに犯人探しをしてしまい、いまの状況から抜け出せないという悪循環」とエリザベスは憂慮する。やるべきは犯人探し、ではなく、こう自分に問いかけることだ。「あなたは自分のセックスライフ、あるいはセックスレスライフをどう思っていますか?」

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夫婦の義務という(あまりにも)根強い概念

「ポスト"me too"の時代となり、同意のあるなしが重要な時代になったのに、いまだに夫婦の義務という概念が社会に根強く存在している。つまり、夫婦はお互いに性的満足を与える義務があるという考えだ。でもそれは違う。相手に性的奉仕をする義務などない」とデヴァ・ブロンシーは言う。彼女はセックスとカップルを専門とするセラピストだ。「カップルの基盤はセクシュアリティではなく、コミットメント。お互いに成長するために一緒にいたいという気持ちがふたりの絆を育む」とデヴァは言い、性欲がなければ異常と決めつける社会のハイパーセクシュアル化を批判する。「これは異常ではない。生物学的に、生殖期間が終わると性欲は減退する。これは男も女も同じ。いつまでも元気で精力が強く、完璧なセックスライフを送るなんて単なる投影や幻想に過ぎない。現実は違うのに、誤った規範に何としても合わせようとするのは非常に乱暴な話だ」

オロールもそんなことは分かっている。少なくとも頭では理解している。臨床心理士のエリザベスは「まず自分のせいではないということを受け入れては」とアドバイスする。ではその次のステップは?セラピストのデヴァによれば、「セックスレスの状態を嫌と思う気持ちが性欲を取り戻す第一歩」だそうだ。ただし、「カップル間で性欲の低下はよくあること。妊娠、多忙、仕事上の悩み、過労など、レスになる要因は多い。性欲を保つのはなかなか大変なこと」なのだそうだ。性欲を復活させるには、自分に次のように問いかけることが必要だと精神分析医で心理療法士のパスカル・アンジェは言う。「自分はどう感じている?誰にも性欲がわかないのか、それともパートナーに対してだけ?自分とパートナーはどんな関係?コミュニケーションはうまく取れているだろうか?」と。

考えてみれば、オロールは7ヶ月前にレスになったときよりも前から、セックスをしたいと思わなくてなっていた。夫は2歳年上で出版社を経営している。夫から責められたことはない。「妊娠、慣れない育児......2番目の子どもが3歳になり、ようやく育児も一息ついて仕事に目が向くようになった。男性の同僚に遅れを取ったのを取り戻そうと、研究や発表をしなければと焦った」とオロール。臨床心理士のエリザベスは、「夫婦は"パパとママ"になってしまうことがある。まずは恋人同士に戻るべき」と言う。心理療法士のパスカルも冗談半ばに、「子供が生まれたら社会保険で週一度のデートの際のベビーシッター代ぐらい出すべきだよね」と言う。

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ふたりで話し合うこと

まずは恥ずかしいと思わずにふたりでセックスのことを話しあう時間を作る。必要であれば、医師やセラピストの客観的な意見を求めるのもありだ。なんらかの生理的な原因がみつかり、薬が処方されるケースもあるかもしれない。心理療法士のパスカルは、相手に優しい言葉をかけ、行動による愛情表現をしてみようとアドバイスする。「今の社会は、セックスでも何でも、パフォーマンスが重視される風潮がある。だが性欲イコール挿入ではない。愛情も重要な要素だ。変化し、進化する自分のセクシュアリティを受け入れよう」

臨床心理士のエリザベスは、「私はエロティシズムに大いに賛成。お互いによく話し合ったり、デート前にワクワクしたり。結婚前のようにホテルへ行くのだっていい。セクシュアリティというのはじっくり準備して開発すべきものだから!」と言う。まずは自分だ。「相手に性欲を抱くには、自分がセクシーな気分にならないと。気分が乗らないのに、相手とやりたいなんて思える?」とエリザベスは言うとこう続けた。「自分のために時間を使うこと。読書したり、外出したり、息抜きをすること。それから、自分の身体の知識を持つこと。いまさらであっても。最近、28歳の女性のカウンセリングをしたら、彼女はクリトリスについて全く無知だった。性について学ぶのに遅すぎることはない」

text : Caroline Lumet (madame.lefigaro.fr)

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