搾取され続ける関係。あなたは「助けたい症候群」に陥っていない?

Lifestyle 2024.07.30

他人を助けたい気持ちは立派だが、自分を犠牲にしてまでとなると、メンタルヘルスの問題が起きかねないと専門家は危惧する。

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極端な利他主義に走ると、自己犠牲を払ってまでも他人を助けようとしてしまう。photography : ilona titova/Getty Images/iStockphoto

用事がある時しか電話をかけてこない「友だち」もいれば、ほとんど初対面なのに突然、重たい打ち明け話をディナーの席でしてくる人もいる。そして上司から「君なしではこの仕事が終わらないんだ」と泣きつかれ、やむなく残業をすることもある。しかしながら常に自分よりも他人を優先し、家族や友人、同僚や配偶者を助け、自分のことは二の次にする人たちがいる。イギリスの心理学者のジェス・ベイカーとロッド・ヴィンセントは、こうした行動をする人たちに注目した著書『The super-helper syndrome(スーパーヘルパー・シンドローム)』(Flint Books刊)を2022年に出版し、いわゆる「助けたい症候群」について論じている。

ふたりの著者によると、この症候群に陥った人には共通点がある。それは、"良い人とみなされて愛され、承認を受けるには他人を助けることが唯一の道である"、"世界を救うことが自分の務めで、他人は自分の助けなしにはどうにもならない"、"本当にやりたいことは自分にない"といった考えを持っていることだ。

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肉体的精神的に疲弊

他人を助けたい気持ちはもちろん立派だが、行き過ぎるとメンタルヘルスのリスクが生じる。常に誰かを助けようとしていると肉体的にも感情的にも疲弊するおそれがあるとロッド・ヴィンセントは警告する。「与えてばかりいると自分が空っぽになってしまい、なにも与えられなくなります」。その結果、睡眠の質が低下し、身体の痛みや不安な気分に悩まされ、すぐにイラ立つようになる。

そうなると燃え尽き症候群やうつの一歩手前だ。どうしてそうなるかの理由は明快で、「他人を支えたいという欲望に限度がないため、自分を忘れてのめり込んでしまい、健康を害してしまうのです」とフランスの精神分析医のマルジョリ・リュガリは指摘した。

恨みと怒り

助けたい症候群のもうひとつの特徴は、常に他人のそばに寄り添い、話に耳を傾ける一方で、自分のためにはそうしてほしいそぶりさえ見せないことだ。でも何も求めなければ何も得られない。たとえばあなたがいつもそばで話を聞いてあげる同僚が日々何をしたかまであなたは覚えているけれど、同僚のほうはあなたの身の回りで起きたことにほとんど関心がなく、いつまでも自分の話をし続けるだろう。

このような一方通行の関係への恨みや怒りが積もり積もった挙句にある日、言葉や身体的暴力にエスカレートすることもある。「恨みというものはゴムをひっぱっているようなものです」と心理学者のジェス・ベイカーは言う。「引っ張りすぎると、パチンと切れて双方が痛い思いをします」

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搾取されるリスク

このようなアンバランスな人間関係は時に有害だ。「知らず知らずのうちに、助けてもらう側と、生きている実感を得るために助けようとしてしまう側の間に感情的な共依存関係が生まれてしまうのです」と精神分析医のマルジョリ・リュガリは説明する。「それはふたりの関係を毒し、双方の機能不全を助長します」

どうしてほしいかを決して口にせずに他人の望みを受け入れていると、とことん搾取されてしまうかもしれない。「助けたい症候群の人の意向などお構いなしに要求をどんどんエスカレートさせていく人もいます」と心理学者のジェス・ベイカーは言う。「助けたい症候群の人はどんどん弱り、極端な場合、ナルシスト的な変質者の餌食になることさえもあるのです」

自己批判は有害

助けたい症候群の人たちは、周囲の人たちに対する優しさにあふれている一方で、自分自身に対してはとても厳しい。「自分が疲れていると思っても、"もっと元気にならねば"と自分に言い聞かせます。人を恨む気持ちが生じると、"見返りなんか期待せずに与えるべきだ"と自分を叱咤します。そして搾取されていると感じると"自分が毅然とした態度を取るべきだった"と反省してしまうのです」とジェス・ベイカーは語った。

自分がもっとこうすればよかった、ああすればよかったと常に自己批判をし、自分に不満を抱き続ける結果、自尊心が蝕まれていく。

この傾向を逆転させるための3ステップ

ジェス・ベイカーとロッド・ヴィンセントによれば、助けたい症候群から立ち直るために大切なことは3つあると言う。

ひとつ目に、なぜ自分が他人を助けたいと思うのかを自問し、そうした考えから逃れるためにはどうしたらいいかを考えてみる。このステップは時間がかかるが、不可欠な作業だ。

ふたつ目に、誰をいつ助けるべきか、健全な範囲での基準を自分で設ける。たとえば母が食事の席で愚痴をこぼしたときは相手をするが、仕事中に電話をかけてくることはやめさせるなど。

3つ目に、自分にも欲求があることを認め、そうした欲求にこたえることで他人もよりよく助けられることを自覚する。

text: Lena Couffin (madame.lefigaro.fr)

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