従順で親切な「ゴールデンレトリバー・ボーイフレンド」 は理想的? それとも不健全?

Lifestyle 2024.08.11

しばらく前からSNSでは新たに登場した恋愛概念が話題になっている。今回は女性たちにとって朗報かもしれない。新しい世代にとっての理想の男性像はかつてのバッドボーイと正反対。従順で、親切で、気持ちに寄り添ってくれる男性だという。

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いつも快活で、ガールフレンドに細々と気を配る。こんな付き合いやすい恋人を犬にたとえて「ゴールデンレトリバー・ボーイフレンド」と呼ぶらしい。photography: Getty Images

犬は最良の友とはよく言ったものだ。誠実、忠実で、愛情深く、いつでも快活。動物を愛する人にとって、犬は理想的なパートナーだろう。そんなわんちゃんたちのなかでも、見た目の可愛さと従順さでひときわ評判の高い犬種がゴールデンレトリバーだ。

そんなゴールデンレトリバーにたとえて、ガールフレンドに細々と気を配り、安定していて、付き合いやすいボーイフレンドを「ゴールデンレトリバー・ボーイフレンド」と呼ぶらしい。恋愛のあり方が一変し、SNSで話題になった概念に人々がすぐに飛びつくいま、Z世代の若い女性たちは、革のジャケットを羽織り、前髪をポマードでなでつけたバッドボーイとはかけ離れた、まったく新しいタイプの理想のパートナーに夢中になっているようだ。親切で、穏やかで、忠実で、オープンマインドな彼らが、いま若い女性たちの間で大人気だ。

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男性たちは新たなチアリーダー?

この用語がTikTokに初めて登場したのは2021年だが、テイラー・スウィフトとアメリカンフットボール選手のトラヴィス・ケルシーが公式に交際を宣言したのをきっかけに爆発的に広まっている。2023年11月29日付の英語版「Huff Post」に「テイラー・スウィフトが"ゴールデンレトリバー・ボーイフレンド"を手に入れた。いまや世界中の誰もが同じようなパートナーを欲しがっている」と題された記事が掲載された。「トラヴィス・ケルシーがスウィフトについて語る様子を見ると、彼はポップスターの恋人に深い愛情と、一途なまでの崇拝を抱いているようだ。ふたりは出会ってまだ日が浅いのだろうが、トラヴィスはさっそく恋人を盛り立てるチアリーダーになったようだ」と記事は伝えている。優しいボーイフレンドという役割を受け入れているのはトラヴィスだけではない。ゼンデイヤのパートナーのトム・ホランドもやはりこの「現代のケン」を体現しているという。

この用語のハッシュタグ #GRB の投稿数は中国のSNSで2億8000万件近くに上っている。SNSの議論を信じるなら、「GRB」と特に相性がいいのは、猫タイプの女性だという。つまり、猫のように内向的で独立心の強い女性「ブラックキャット・ガールフレンド」だ。一方が素直で他方がシニカルという対照性がカップルには理想の組み合わせなのだとか。

「ゴールデンレトリバータイプのボーイフレンドに惹かれる気持ちを理解するのは難しいことではありません」と恋愛コーチのハーレ・クインは「Huff Post」に語っている。「優しくて、信頼でき、こちらの気持ちに寄り添ってくれる。自信家で自己主張が強いゆえにもてはやされるバッドボーイとは正反対ですが、恋愛関係が長続きするかどうかを左右するのは、慈愛と思いやりです」。そう言って、彼女は次のように付け加える。「この人とデートをしてみてもいいなと思わせる要素と、長く付き合うパートナーを選ぶ時に決め手となることとの間には往々にして溝があるものです」。実際に「ゴールデンレトリバー・ボーイフレンド」は、健全な関係という、現代の若い女性たちが恋愛に求めるものを満たすあらゆる条件を備えている。いまは、昔のように強烈で破壊的な、情熱的な愛ではなく、調和と安定が重視される時代なのだ。

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個性の喪失

それはわかった。ただ、パートナーを犬にたとえるのは、相手に絶対服従を要求するようで不健全ではないのだろうか? 見方によっては、これも「有害な女らしさ」のひとつなのではないか? 恋愛セラピストのサラ・ヴァン・ペルトによれば、このタイプのパートナーは、自信がなく感情的に依存しがちな男性によく見られるという。ベルギーの日刊紙「メトロ・タイム」で、彼女はこうコメントしている。「こうした性格特徴には、見捨てられる恐怖や自分は相手にふさわしくないのではないかという恐れが隠れています。したがって、こうした男性が恋愛で自分を見失うリスクはかなり高いです。彼らは相手の幸福や要望、欲求だけに注意します。ですが恋愛とはそれ以上のものです。これではカップルの片方の個性が失われてしまいます」

さらに悪いことに、カップル間のこうした従属関係が有害な状況に転じることもあるとセラピストは強調する。実際に、こうした「思いやりのある素晴らしい男性」については不満が言い難くなるし、不満を漏らせば、周囲から恩知らずな女だと思われる可能性もある。しかし、こうした気遣いも度が過ぎると、鬱陶しい、さらには息苦しいものではないだろうか? この言葉が話題になって以来、多くのネットユーザーが自分を犬になぞらえて、この新たな現象を皮肉るコメントを投稿している。なかには「僕はバセットハウンド。地面にとても近いから人の靴を舐めてばかりで、もううんざり。僕はガールフレンドにすっかり夢中。いつも気にしてもらいたい。そうじゃないと大声で吠えてやる」という投稿もある。

text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr) 

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