「もう陸では歩けない」25年間、クルーズ船で過ごした「スーパーマリオ」と呼ばれる旅人とは?

Lifestyle 2025.02.26

今年1月、カリブ海を航海中のクルーズ船で船会社主催のとあるパーティーが行われた。パーティーの主役は乗客のマリオ・サルセド(74)。彼はこの会社のクルーズ船におよそ20年乗り続けており、この度なんと1000回目のクルーズを迎えたのだ。コロナ禍で船が稼働していなかった15ヶ月を除き、マリオはおよそ25年間クルーズ船で生活しているという。「世界で最も幸せな男」とも呼ばれるマリオの人生は、英デイリーメールなどでも取り上げられた。

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写真はイメージ。photography: Shutterstock

仕事に燃え尽きて...

マリオがクルーズ船に乗り始めたのは1994年のことだったという。キューバ出身のアメリカ人である彼は、ビジネスマンとして飛行機で世界のあちこちを巡る生活を送っていた。元々自宅よりホテルで過ごす時間の方が長いような状態だったそうだ。

しかしある日、仕事への情熱がぷっつりと燃え尽きた。衝動的にマイアミ港から出発するクルーズ船に乗り込んだマリオは、すっかり船旅に魅了されてしまったのだ。以後、マリオは人生のほとんどを船の上で過ごすこととなった。次第にマリオの存在は乗員や他の乗客にも知れ渡り、船長から「スーパーマリオ」のあだ名をもらうほどの有名人となった。

妻子のいないマリオだが、マイアミには自宅もある。しかし、船から降りて自宅に帰るのは毎年15日程度で、その間にやることといえば病院や銀行などの用事を済ますだけだそうだ。そんな生活を送っているため、マリオは「陸地ではまっすぐ歩けない」という。地面が揺れているような感覚が続いて体調が悪くなる下船病になってしまうのだ。「船にいることにすっかり慣れているから、陸上よりも船の方が快適ですね」とマリオは話す。

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お気に入りはプールサイド

さまざまなクルーズに参加したマリオだが、2000年代以降はロイヤル・カリビアン・インターナショナル社のクルーズに連続乗船するようになった。投資管理会社を経営する彼は、現在年1万ドル(約1500万円)以上かけてバルコニー付きの船室を借り切り、オフィスとしても使用している。プールサイドのデッキがお気に入りの作業スペースで、そこには「Super Mario's Office」のプレートも掲げられている。

船のWi-Fiを使ってオンラインで1日5時間ほど働き、あとは豪華なクルーズ船でのんびりと過ごす生活。「ストレスはゼロ」とマリオは語る。「世界最高の人生」と呼ばれるのも納得の生き方である。

マリオは界隈の有名人であり、マスメディアからの注目も浴びる人物であるにも関わらず、SNSのアカウントを持っていない。海の上での生活を心から楽しみ、それだけで十分に満たされているということだろう。「私が見つけることができた最高のライフスタイル」と、マリオは今後もクルーズ船での生活を続けていきたいと話している。

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text: Izuki Yoshii

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