朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞が浄化される「オートファジー」とは何か?

Lifestyle 2025.05.22

Newsweek onlineより転載

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ulleo-pixabay

<毎日働いている細胞には、毒素や病原体、異常タンパク質、死んだ細胞の残骸が溜まっていく...。「自食作用」の重要性について>

ファスティングはツラいものではなく、やっていて楽しくなるもの。数々のダイエットに挫折してきた著者が、「ファスティング」を再定義。『シリコンバレー式 心と体が整う最強のファスティング』(CCCメディアハウス)より第1章「あなたならではのファスティングを見つける」を一部編集・抜粋。

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ファスティングは体内の自己清浄化プロセス、「オートファジー」(細胞が自分の一部を分解するので、文字どおり「自食作用」とも言う)を活性化させる。

毎日働いている細胞には、毒素や病原体、異常タンパク質、死んだ細胞の残骸が溜まっていく。そうした顕微鏡サイズのゴミにより細胞の正常な働きが損なわれ、きちんと分裂・再生しなくなる恐れがある。

オートファジーは、体内を掃除し、ゴミを集め、リソソームと呼ばれる極小の消化器官に捨てる一連の生体分子ツールである[*1]。細胞が順調に機能し続けるために、不可欠なプロセスだ。

ますます多くの研究が、オートファジーの活性化が老化を遅らせ、炎症を抑制し、体のパフォーマンス全体を向上させるのにも役立つことを示唆している。

ファスティングがなぜオートファジーを促すのか、研究者もまだ完全に理解しているわけではなく、研究のほとんどは人間でなくマウスを対象にしたものだが、生物学的メカニズムの機能は動物界ではあまねく同じと考えられる。

糖を運んだり脂肪を溜め込んだりするのに忙しくなければ、体はより多くのリソースを基本的なメンテナンスに利用することができる。

カリフォルニア州ラホヤにあるスクリプス研究所が行った最近の研究によると、ファスティング中の脳内では、古くなったニューロン(神経細胞)の清掃が活発に行われていた[*2]。

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そのしくみは複雑でいまなお検証が続いているが、ファスティングがあなたの体を、分子レベルでより効率的かつ円滑に機能させることを明らかにする研究は増える一方だ。

たとえば、日本人生物学者のグループの2019年の発表では、58時間の断食──マウスでなく、人間の!──は、脂肪を分解しタンパク質構造を制御する化学経路に関与する44種の化合物の血中濃度を高めた[*3]という。

断続的ファスティングは、強力な抗老化分子、ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)に影響を及ぼすことが証明されている。活性型NADはNAD+と呼ばれ、体内の化学反応がスムーズに進むように電子を伝達するという、一見単純に思える役割をもつ。

だが、この小さな分子はじつによく働く。NAD+のおかげで細胞はエネルギーを生成できるほか、NAD+はDNAのダメージ修復を助け、知的機能の低下を防ぐ鍵となる正常なタンパク質形成を促し、老化を進行させる大きな要因のひとつである容赦ない酸化ストレスから細胞を守る。

断続的ファスティングには、NAD+の血中濃度を高める効果がある。やったほうがいい。冗談抜きで。

ファスティングの生物学的利点に関しては、ひとつの文献をなんとか読み終えたと思ったら、そのそばから新しい情報が入ってくるので驚かされる。マサチューセッツ工科大学(MIT)が発表した最新の研究[*4]は、24時間の断食により幹細胞の再生能力が大幅に向上することを明らかにした。

また、脳内に新たに生まれたニューロンの成長を促し、刺激に対する脳の適応能力を強化するようだ。そればかりか、断食は腸内に存在するバクテリアなどの微生物群の生態系である腸内細菌叢(マイクロバイオーム)にもよい働きをする。

断食によってえさを与えられないと、腸内細菌は空腹時誘導脂肪因子と呼ばれるホルモンを分泌する。このホルモンが脂肪の蓄積をストップして燃やしはじめるよう体に指示を出すのだ。

ほとんどのケースで、前述したファスティングの効果を得るのに、食べ物を完全に断つ必要はない。2014年、僕は断続的ファスティングに苦もなくゆっくり慣れていけるようにするための、特別な方法について書いた[*5]。

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それを実践した人たちが落とした体重を合計すると、45万3592㎏になる。16:8ファスティング(編集部注:16時間ファスティング)に似た方法だが、決定的に違う点がある。

僕のやり方では、固形食を摂らない期間は、朝に「完全無欠(ブレットプルーフ)コーヒー」を飲む。これには脂肪が含まれているので、いつもの食事を断っても空腹を感じず、インスリン値とタンパク質代謝を抑制し続けることができる。

「バターMCTコーヒー断続的ファスティング」なんて気が利かないと思い、その方法を「完全無欠断続的ファスティング」と名づけてから10年以上がたつ。その有効性により時を経ても生き残り、僕の解説動画の再生回数は10万回を超える。

「完全無欠断続的ファスティング」では、摂取する脂肪の種類が重要だ。コーン油、大豆油、キャノーラ油、種子油には、炎症をはじめ望ましくない結果を引き起こす不安定な脂肪が含まれている。

牧草飼育(グラスフェッド)バターと中鎖脂肪酸(MCT)オイルのほうがうんと体にいい(MCTはmedium-chain triglycerideの略で、相対的に小さいため体に速やかに吸収され、エネルギーになりやすい脂肪分子のこと)。「完全無欠コーヒー」に入れるこれらの脂肪は、この10年僕の食生活になくてはならないものだった。

「完全無欠断続的ファスティング」なら、断食のインスリン安定化とオートファジーのメリットを有効にしつつ、それ以外のあまりうれしくない体への影響、そう、断食を始めたばかりでまだ体が適応できていないときに感じやすい、空腹と怒りに対処することができる。

それを引き起こすのは「爬虫類脳」と言われる脳の領域だ。爬虫類脳と格闘して自制心を保つのに多大なエネルギーを費やしてもいいし、一杯のクリーミーなコーヒーでそれを黙らせ、もっとだいじなことのためにエネルギーをとっておいてもいい。いずれにせよ、体にとっては断食したことに変わりはない。

僕が研究と実験を何度も重ねて編み出した、誰にでも効果的な方法でファスティングを始めることをおすすめする。朝起きたら、一杯の「完全無欠コーヒー」を飲もう。レシピはブラックコーヒーにグラスフェッドバター大さじ1杯、「C8 MCTオイル」小さじ1、2杯。どんなラテよりもおいしいはずだ。

【参考文献】
[*1] Danielle Glick, Sandra Barth, and Kay F. Macleod, "Autophagy: Cellular and Molecular Mechanisms," Journal of Pathology 221, no. 2( May 2010): 3-12.
[*2]Mehrdad Alirezaei et al., "Short-Term Fasting Induces Profound Neuronal Autophagy," Autophagy 6, no. 6(August 2010): 702-10.
[*3]Takayuki Teruya et al., "Diverse metabolic reactions activated during 58-hr fasting are revealed by nontargeted metabolomic analysis of human blood," Scientific Reports 9, no. 854 (2019).
[*4] Maria M. Mihaylova et al., "Fasting Activates Fatty Acid Oxidation to Enhance Intestinal Stem Cell Function During Homeostasis and Aging," Cell Stem Cell 22, no. 5 (May 2018): 769-78,(18)30163-2.
[*5] Dave Asprey, The Bulletproof Diet: Lose Up to a Pound a Day, Reclaim Energy and Focus, Upgrade Your Life( New York: Rodale Books, 2014)(デイヴ・アスプリー、『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』、栗原百代訳、ダイヤモンド社、2015年)

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デイヴ・アスプリー(Dave Asprey)
起業家、投資家、シリコンバレー保健研究所会長。「ブレットプルーフ」創設者。カリフォルニア大学サンタバーバラ校卒業。ウォートン・スクールでMBAを取得。シリコンバレーのIT業界で成功するも肥満と体調不良に。その体験から医学、生化学、栄養学の専門家と連携して膨大な数の研究を統合し、100万ドルを投じて心身の能力を向上させる方法を研究。バターコーヒー(ブレットプルーフ・コーヒー)を考案し、ダイエットに成功した体験を『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』(ダイヤモンド社)にまとめ、世界的ベストセラーとなる。ニューヨーク・タイムズ、フォーブス、CNNなど数多くのメディアで活躍中。著書に『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』『シリコンバレー式超ライフハック』(ともにダイヤモンド社)など多数。

text:デイヴ・アスプリー(起業家、投資家、「ブレットプルーフ」創設者)

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