オイルやハーブ、スパイスは冷蔵庫で保存すべき?

Gourmet 2021.08.17

物理化学者のラファエル・オーモンと、冷蔵庫で保存するべき食品をおさらい。風味を損なわず、食品を長持ちさせるフランス流の保存方法を解説する。

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物理化学者が、冷蔵保存したほうがいいと思われるフルーツ、野菜、調味料についてリストアップ。Photo : Getty Images

20分。これは鮭や赤身肉の切り身を室温で放置した場合に、微生物が繁殖し始めるまでの平均時間だ。

「細菌は湿気と熱を養分にする生きた微生物です」と物理化学者でパリ=サクレ大学教授のラファエル・オーモンは説明する。1926年にフランス家庭の台所に登場して以来、冷蔵庫は食品に菌が増殖するのを抑制し、食べ物を腐敗から守ってきた。

肉や魚、乳製品のような傷みやすい食品を冷蔵庫で保存するのは健康のために当然のことだが、それ以外の食品でも冷蔵庫に入れたほうがいいものがある。

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香りの少ない果物や野菜、または乾燥させたもの

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ニンジンなど味は強いが香りがそれほどでもないものは、冷蔵庫で保管すれば味を損なわずに長く保存できる。photo : iStock

食べ物の味わいとは、匂いと味の両方が混じり合った総合的な感覚だ。食品によっては舌に訴えるものもあれば、逆に嗅覚の方をより刺激するものもある。

後者の代表がトマトとイチゴだ。「低温によって揮発性の匂い分子が破壊されることはさまざまな研究で明らかになっています。したがってイチゴやトマトのような香りのいい野菜や果物は室温で保存したほうがいい」とオーモン。

「逆に、皮を剥いていないニンジンやパネ(シロニンジン)のように、味は強いけれど香りはほのか、あるいはほとんどない食品は、冷蔵庫で保存すればより長く日持ちするだけでなく、味も損われません」

ただし、あらかじめ乾燥処理や焙煎が施された食品は匂い分子が消えにくくなるとオーモンは言う。したがって、乾燥トマトや、バジルやミントなどのハーブ類も乾燥させれば、冷蔵庫に保存して長く楽しむことができる。同じように、挽いたコーヒーは密閉容器に入れ、茶葉はキッチンペーパーで包んでから冷蔵庫で保存するといい。

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卵とチョコレートは温度変化に敏感

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卵を冷蔵庫で保存する場合は、使う分だけ取り出そう。 photo : iStock

卵は冷蔵庫に入れるべき? これはなかなか決着がつかない問題だ。物理化学者のオーモンによれば、どちらでも構わないが、冷所で保存すれば、より長く日持ちするという。「いずれにせよ卵は冷暗所で保管するべきです。キッチンの室温が高いと、卵の殻は半透性ですから、卵に含まれている水分が蒸発して、劣化しやすくなります」

一方、冷蔵庫で保存するしないに関わりなく、卵を温度変化にさらすことは禁物だ。「温度が一定であれば、化学反応は安定しています」とオーモンは説明する。「冷蔵庫の扉を頻繁に開けたり、料理をするときに10個入りパックを冷蔵庫から出して、結局3つしか使わなかったり。そんな場合は腐敗や化学反応が起きやすくなってしまいます」

チョコレートも温度変化の影響を受けやすい。「包装紙にきちんと包んでいなかったり、長時間室温で放置すると、糖分と脂質が固まって、表面に白く粉が吹いたようになります。食べるのに問題はありませんが、風味は落ちてしまいます」とオーモン。夏の暑い時期はとくに、板チョコを冷所保存するチョコレート職人を見習うといい。「チョコレートの詰め合わせも冷蔵庫で保管するといいでしょう。詰め合わによく入っているガナッシュには乳製品や卵が使用されているので、長くは持ちません」

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オイルやスパイスは光を避けて

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スパイスやオイルは冷蔵庫で保存しよう。 photo : iStock

熱や光は調味料やオイルにとって最も厄介な敵だ。物理化学者のオモンによると、フレッシュな一番搾りのオイルは、オリーブ、亜麻仁、バジル、アルガン、ヘーゼルナッツなど、原料に関わらず、温度にとても弱い。「冷蔵庫で保存するのが理想です。冷蔵庫なら温度が上がることもありませんし、食品を酸化させ、結果的に風味が損われる原因になるフリーラジカルの生成を防ぐ効果もあります」とオモンは強調する。

これと同じ理屈から、スパイスもガスコンロのそばではなく、冷蔵庫の扉に保管するのがいい。「薬やワクチンと同じように、ターメリックやクローブには繊細で壊れやすい有効成分が含まれているので、冷所で保管します。オリヴィエ・ロランジェをはじめ、偉大なシェフたちの間でも冷所保管は常套手段です。ロランジェはバニラなどあらゆるスパイスを湿度がしっかり管理されたワイン貯蔵庫に保管しています」

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冷蔵庫の構造を知り、中身を整理する

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冷蔵庫にとりあえず詰め込む...はNG。定期的に整理しよう。 photo : iStock

冷蔵庫は食品の保存を可能にする画期的な器具だが、使い方を間違ってはいけない。「冷蔵庫内は温度によって複数の空間に区分けされています」とオモンは指摘する。

多くの場合、温度が低いのは上段から真ん中の段で、肉、魚、乳製品など傷みやすい食品はここに仕舞うといい。下の段に行くほど、温度は上がる。「野菜室にぱんぱんに食品を詰め込む傾向がありますが、冷蔵庫の扉も長ネギやアスパラガスなどを保管するのに適しています」と専門家は提案する。

食品を長持ちさせるには、きちんと包装することも大切だ。「果物や野菜は食品用包装紙で包みましょう。水分が飛んでしまうのを防げますし、青果物の呼吸を妨げることもありません」

逆に、オイルやスパイスなどの調味料は結露しないように注意が必要だ。「小瓶や缶、あるいは不活性で密閉できる、遮光ガラスか金属の瓶に入れてから冷蔵庫で保管します」とオモン。近藤麻理恵のドレッシングルームも真っ青、の冷蔵庫を目指して、すべての箱に中に入っている食品の名前を記入するのも忘れずに。

text : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)

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