シャンパーニュで過ごした夏至の1日。 モエ・エ・シャンドンの里、エペルネへ。

Gourmet 2022.07.13

6月21日、夏至の日。夏の太陽のもと、シャンパーニュ・メゾン、モエ・エ・シャンドンのお膝元エペルネに向かった。
洗練と祝祭を象徴する飲み物シャンパーニュは、フランスのこの地方で造られるブドウの発泡酒だけに許される呼称。醸造メゾンの瀟洒な建物がずらりと並ぶエペルネの町は、シャンパーニュの中心地である。

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シャンパーニュの呼称は、この地方の34000ヘクタールのブドウ畑から生まれる発泡酒だけに許される。

メゾン発祥の地でカーヴを見学。

モエ・エ・シャンドンは、シャンパーニュ地方の中でも、約1200ヘクタールのブドウ畑を要する最大のメゾン。そのエンブレムというべき「モエ アンペリアル」は、世界で最も親しまれているシャンパーニュだ。そして、エペルネの町の中心からのびるアヴニュー・ド・シャンパーニュに最初に居を構えたのも、モエ・エ・シャンドンだったという。
この日最初に訪れたのは、9番地にあるレジダンス・デュ・トリアノン。エペルネの市長も務めた3代目当主、ジャン・レミー・モエが建てた邸宅には、広い庭園とオランジェリー(迎賓館)がある。
「ミニ モエ」とピクニックバスケットのランチをいただいて、いよいよ、メゾン訪問が始まった。

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レジダンス・デュ・トリアノンのオランジェリー(迎賓館)。7月と8月の週末には、シャンパーニュ付きのピクニックプランも提案している。予約はフランスサイトへ。

カーヴ見学の入り口があるのは、通りの向かい側。1743年に創業者が居を定めて以来の本社、ホテル モエだ。前庭では、シャンパーニュ開発の功労者と言われるドン・ピエール・ペリニヨン修道士像が迎えてくれる。

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通りを隔てて向かいは、1740年代に創業者が最初に建てた家があった場所。3代目ジャン・レミー・モエの時代に現在のホテル モエに姿を変え、ナポレオン1世夫妻をはじめとする重要な顧客を迎えた。

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カーヴの入り口では、ドン・ピエール・ペリニヨン修道士の像が迎えてくれる。

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創業時から20世紀半ばまで、200年もの年月をかけて徐々に拡大した地下の醸造カーヴは、全長28キロメートルもの長さ。温度は年間を通して10〜12度。夏の太陽が輝く外界とは打って変わって、ひんやりした空気と、湿気を含んだ石灰岩の香りが満ちている。通路に沿って穿たれた深い横穴には、おびただしい数の瓶が積み上げられている。
収穫されたブドウは、一次発酵を経てワインとなり、醸造師の手でアッサンブラージュ(ブレンド)された後に瓶詰めされる。瓶の中で発酵が進んで泡が生まれ、さらに熟成されるのがシャンパーニュ。「モエ アンぺリアル」なら24ヶ月、ヴィンテージ シャンパーニュは6年〜7年ほど、瓶の中で熟成させるという。
ブドウの実がアルコールとなり、さらには細やかな泡をたたえた高貴な飲み物に変わる場所。整然と並ぶ瓶が果てしなく連なる迷路のようなカーヴでは、時間もゆっくりと流れているようだ。

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熟成中の瓶がぎっしり詰まったカーヴ。創業当時からの面影を残す。カーヴ見学は予約制。

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コーナーごとに、積まれた瓶の情報を記した札が。上段はシャンパーニュのタイプを記した秘密のコード、2段目はカーヴ内のアドレス、3段目はボトルの数だという。

気候変動と闘う、研究部門。

1900年、モエ・エ・シャンドンは、ブドウ畑を襲った病気と闘う、接ぎ木の研究のために、フォート・シャブロールを建設した。周囲は、シャンパーニュの材料となるムニエ、シャルドネ、ピノノワールの3種類のブドウが植えられた実験農園となっている。「ブドウ栽培業者を教育する場でもあったこの場所は、シャンパーニュ地方全体のラボラトリーであり、モエ・エ・シャンドンにとって非常に大切な場所です」というのは、醸造畑責任者のヴェロニク・ボネ。地球温暖化はブドウの栽培にも大きな影響を与えている。暑さと晴天続きの今年の収穫は8月末、例年より2週間ほども早い。フォート・シャブロールは、シャンパーニュの土壌を守り、持続可能なブドウ作りを行うための、シャンパーニュ地方全体の牽引車だ。
「ふたつの森に挟まれたぶどう畑の広がるエリアに植林し、昆虫や動物が生息するエコロジカル・コリドーを作っています」

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1900年に建てられた石造りの研究所は今も変わらぬ佇まい。

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醸造畑責任者のヴェロニク・ボネ。

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モエ・エ・シャンドンのエスプリとは?

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2005年以来、最高醸造責任者を務めるブノワ・ゴエズ

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世界で最も親しまれているシャンパーニュ「モエ アンぺリアル」。

モエ・エ・シャンドンのシグネチャーと言える「モエ アンぺリアル」の一定した味わいを守り、一方で個性あるヴィンテージを生み出す。最高醸造責任者のブノワ・ゴエズは、「モエ アンぺリアル」について、こう語る。
「モエ・エ・シャンドンには319のクリュからブドウがもたらされます。つまり、シャンパーニュ地方の土壌から生まれる味の80%をカバーする大きなパレットを持つ。すべてはこの多様性から生まれます」
その年に収穫したブドウを醸造したワインに、過去のワインも合わせてアッサンブラージュ(ブレンド)し、一定の味わいを実現するのが醸造家の技だ。「モエ アンぺリアル」のスタイルは、フルーティなブドウのフレッシュ&ピュア、エレガントな軽さと味わい、とゴエズは言う。「時代とともに、ブドウの栽培法や醸造技術、気候も人の好みも変わる。1869年に誕生した『モエ アンぺリアル』も、時とともに進化しています」。たとえば、彼が最高醸造責任者に就任した17年前に比べ、現在では最後に加えるドザージュの糖分が半分になってより辛口に、そして熟成にはより多くの時間をかけているのだそう。
「『モエ アンぺリアル』は一口飲んだだけですぐに喜びが感じられる、手の届きやすいシャンパーニュです。そのアクセシビリティやシャンパーニュのアンバサダーとしての性格を守りながら、エレガンスや味わいの解釈の変化とともに、進化していくのです」
一方、ひとつの年代のブドウだけを使ったヴィンテージ シャンパーニュは、最高醸造責任者のクリエイション。毎年誕生するわけではない、格別のシャンパーニュだ。
「ヴィンテージ シャンパーニュを造るための条件は、その年のブドウに、個性やカリスマ性があること。どのミレジメにもそれぞれの物語と固有の味わい、香りがなくてはなりません。『モエ アンぺリアル』が代表するモエ・エ・シャンドンらしさを基本に、もう少し大胆に、世界を押し広げる。ヴィンテージ シャンパーニュ造りは、驚きを生み出すこと。新しい味とアプローチを提案することです」

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シャトー・ド・サランの夕べ。

1日の締めくくりは、シャトー・ド・サランでのイベントとディナー。1801年からモエ・エ・シャンドン・ファミリーが所有するこの建物は、2019年に大改装を終えて、メゾンのホスピタリティを象徴するゲストハウスに生まれ変わった。クリスチャン・ディオール、ルイ14世、ロシア、日本、ハリウッドなどの名前のついた11のスイートは、それぞれに趣の違う内装。エレガントな18世紀スタイルと19世紀のエスプリを合わせた佇まいは、由緒あるシャンパーニュ・メゾンならではだ。

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丘の上のシャトーは、広い庭園とブドウ畑に囲まれている。

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ナポレオン生誕100年にちなみ、1869年に命名されたのが、モエ・エ・シャンドンの「モエ アンぺリアル」。アンペリアル・スイートはもちろんナポレオンにちなんだ内装。

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メインハウスのテイスティングサロン。ブロンド色のグラデーションがシャンパーニュを思わせる。

ブドウ畑を望むテラスでは、シャンパーニュの正しいサーブの仕方のレクチャーを受け、「アイス アンぺリアル」のテイスティングを体験。夏でもカジュアルにシャンパーニュを楽しめるようにと、アイスキューブを加えていただくために作られた「アイス アンぺリアル」は、さらにレモンやミントを加えるとどんどん味わいが変化する。

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テラスで行われたシャンパーニュのサーブと「アイス アンぺリアル」のレクチャー。

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広い庭園には、シャンパーニュのコルクをかたどった気球も。

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イベントには、Mattさんと女優の高梨臨さんも参加。

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シャンパンピラミッドに挑戦する、イラストレーターの渡邉香織さん。

エペルネの空がようやく色づきはじめるころ、最高醸造責任者のブノワ・ゴエズを囲んで、ディナーの席へ。料理長マルコ・ファディガが手がける季節の料理は、「モエ アンぺリアル」から「グラン ヴィンテージ2013」「グラン ヴィンテージ コレクション2004」にマッチングさせたもの。まさにシャンパーニュが主役のアンペリアル・ディナーで、エペルネの1日が締めくくられた。

カーヴ見学とテイスティング
アイコニックから
グラン ヴィンテージの4コース。
1時間15分〜1時間30分。大人26ユーロ〜50ユーロ
Moët & Chandon
20, avenue de Champagne 51200 Epernay
tel:+ 33(0)3 26 51 20 /https://www.moet.com/ja-jp/visit-us
開) 9時30分〜17時、見学は要予約。

夏の週末のピクニック
7月、8月のピクニックランチとディナー。シャンパーニュのハーフボトル付き。

Résidence Trianon
9, avenue de Champagne 51200 Epernay
詳しい日程と予約はhttps://www.moet.com/fr-fr/summer-event-2022
料金 大人75ユーロ
●問い合わせ先:
MHD モエ ヘネシー ディアジオ
https://www.moet.com/ja-jp

text: Masae Takata(Paris Office)

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