ニュージーランドの草原を感じるワイン!? 屋外ランチで再発見した「クラウディー ベイ」の魅力。
Gourmet 2023.12.08
1985年にリリースされたソーヴィニヨン ブランがイギリスで高い評価を受け、ニュージーランドをワインの新しい名産地として世界に知らしめたワイナリーが「クラウディー ベイ」。2023年、新たなヴィンテージのリリースを記念して、特別なペアリングイベント「ワンダースケープ バイ クラウディー ベイ」が開催された。
「ワンダースケープ バイ クラウディー ベイ」は、クラウディー ベイが掲げる "The Art of Entertaining"(芸術的なおもてなし)を体験できるイベントとして、世界の主要都市で2023年からはじまったペアリングイベント。日本での初開催の会場となったのは、千葉県木更津にある農業、食、アートをテーマにした複合施設であるクルックフィールズだ。
11月の某日に行われたイベント当日、ゲストは目的地やコンテンツを知らされずに東京駅に集合した。都会の喧騒を離れ目的地に着くと、そこには風の吹き抜ける草の上に長い大きなテーブルが。インテリアスタイリストの石井佳苗が彩る花々が、食事の前から参加者の目を楽しませてくれる。
メニューを考案、監修したのは香港で行列が絶えないレストラン「CENSU(センス)」代表兼オーナーシェフの佐藤峻と、今年7月に日本支店としてオープンした「CENSU TOKYO」のシェフ金須郁幸。ワインペアリングのディレクターとしてMHD ワインブランド アンバサダーの冨永純子、ミュージック考案・演奏には映画音楽作曲家/シンガーソングライターの世武裕子が参加、共同ホストとして参加したプロデューサー、山本憲資のディレクションのもと、数ヶ月にわたる準備を経て特別なランチがスタートした。
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まずは乾杯のタイミングで、新ヴィンテージとなるクラウディーベイ ソーヴィニヨンブラン2023が提供された。ソーヴィニヨンブランはもともと、ハーブや草のような香りが顕著に現れる特性を持つ白ブドウ品種。ニュージーランドのソーヴィニヨンブランでは、そこにパッションフルーツなどのトロピカルフルーツの風味が加わることが多い。
2023年リリースのこちらのボトルを味わってみると、香りにレモングラスやハーブのしっかりとしたニュアンスを感じ、「これこれ、これこそソーヴィニヨン ブラン!」という期待値が高まる。口に含むと爽やかな酸味が口を洗い、飲み込んでみるとグレープフルーツのような柑橘を思わせる苦味を伴ってスッと余韻をひく。しっかりとしたミネラル感が口を覆い、ほんの少し塩味を感じる......まさに、食中酒にもってこいのワインではないだろうか。前菜として提供された生牡蠣に、ワインの酸味とミネラル感がこの上ない相性を見せる。酢を効かせたマリネと共に供された真鯛の刺身にもバッチリとはまり、ソーヴィニヨン ブランが和食にも合わせやすいことが伝わってくる。
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ソーヴィニヨン ブランがクラウディー ベイのフラッグシップとして名を馳せているが、他の品種も目を見張るものがある。
シャルドネというブドウ品種は、産地や醸造方法によってさまざまな表情を見せる品種だ。クラウディー ベイのシャルドネからは生き生きとした果実味を感じながらもしっかりとした酸味があり、またヨーグルトを思わせるまろやかな味わいに、樽熟成によって香るナッツのような芳香がある、複雑みを持った味わいが楽しめる。
これに合わせていただいたのがセンスの創作料理「キャラメルコーン」だ。もともと定番の組み合わせとして「シャルドネにポップコーン」はソムリエがよく例に挙げるが、このキャラメルコーンは焼いたトウモロコシにキャラメリゼした砂糖を上から垂らした、ある種デザートにも思える甘塩っぱいひと皿。これをクリーミーで芳醇なシャルドネと合わせることで、"大人のひと皿"が完成する。
また、ニュージーランドといえば近年、ピノ・ノワールの産地としても注目され始めている。この品種は皮が薄く、冷涼な産地でしか栽培が難しいという栽培家泣かせのブドウであり、その繊細ながら存在感のある味わいを求めるファンが世界中にいるという品種だ。標高の高いブドウ畑で育てられたクラウディー ベイのピノ・ノワールは、繊細ながらもしっかりとした骨格が感じられる。口に含むと若々しい赤いベリーのような果実感を楽しめ、それがスパイスのような余韻としっかりとした土を感じるニュアンスへと変化していく。タンニンはきめ細かく、口の中をそっと撫ぜるように洗っていく。
これに合わせたのは、和牛のステーキに舞茸を合わせたもの。ベリーのような酸味のある味わいが和牛の脂をうまく断ち切り、次のひと口を進めてくれる。また、ピノ・ノワールに確かに感じる土っぽいニュアンスに、キノコの味わいがとてもよく合うのだ。
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「ワンダースケープ バイ クラウディー ベイ」でロングランチを体験してみて感じたのは、「ワインって屋外で飲むと、また違った味わいを体験できる」という事実。レストランや自宅のテーブルから、グラスに注いだワインに思いを馳せることで旅をした気分に、ということはよくあるけれど、クルックフィールズの草原で風に吹かれて飲んだソーヴィニヨン ブランの味は、何年も前に自分が旅したとあるニュージーランドの草原の記憶を思い出す触媒になってくれた。このワインを風に吹かれて飲むという経験は、きっと一生忘れない思い出だ。
冬が明けたら、クラウディー ベイ ソーヴィニヨン ブラン2023をトランクに詰め、ちょっとした冒険に出かけてみてはいかがだろうか? 草原や海を見つめて飲むグラスは、きっとこのワインを育んだニュージーランドのブドウ畑にあなたを誘ってくれるはずだ。
text: madame FIGARO japon