世界のグルメたちが注目するタイのバンコクで、美食の最先端を味わう。
Gourmet 2024.07.25
郷土料理をベースに国内外の技法を取り入れ、美食都市に進化したバンコク。トップシェフによるファインダイニングと、家庭の味を体験できる名店へ。
Restaurant
Nawa|ナワ
最強チームが繰り出す、最新のタイ料理。
夏のコース4,200バーツから。6皿で構成するメイン。写真は2人前。中央の「Moo Hong Pork Ribs」は、タイ南部で食べられるムーホンというタイ中華がベース。
ファインダイニング80/20(エイティ・トゥエンティ)など、美食界を牽引するタイ人シェフのジョーと日本人パティシエのサキ。2023年に誕生したナワは最強の夫婦の新天地とあって注目の的。昨年末、早くもミシュラン1ツ星を獲得した。料理の原点はジョーが幼い頃から慣れ親しんだ味や伝統的なレシピだが、フレンチや、時には昆布締めなど和の技法も取り入れる。4〜5月の最も暑い季節には清涼感のあるパイナップルとココナッツのヤムなど、旬の食材を繊細なプレゼンテーションで提供。パンダンリーフのところてんを筆頭に和のエッセンスがほのかに薫るデザートも、この店を訪れたくなる理由だろう。
前菜2種。手前は細かく刻んだパイナップルやショウガ入りココナッツソースを、イカソーメンに絡めて食べる「Ka Nom Jeen Sour Nam with Squid」、奥はコブミカンが利いたレッドカレー味のイカのつみれ「Tod Mun Meuk」
ココナッツアイスにパンダンリーフのところてんを添えたデザート「Japanese Lod Chong」。もち米のデザートと一緒に。
シックなダイニングは全20席。
ナポール・ジャントラゲット(ジョー)|Napol' Joe' Jantraget(オーナーシェフ)
星野早紀|Saki Hoshino(オーナーペストリーシェフ)
ミシュラン1ツ星の80/20や予約の取れない人気店サムローなどを夫婦で立ち上げ。ナワでは、両店で活躍してきたスタッフと抜群のチームワークで店を切り盛りしている。
Park Lane Ekkamai, 18 Soi Sukhumvit 61, Klongtan Nuea, Wattana
tel:084-296-2442
ⒷEKKAMAI
営)18:00〜、20:30〜
休)火、水
※要予約 ※スマートカジュアル推奨
@nawa.thaicuisine
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Lahnyai Nusara|ランヤーイ・ヌサラー
シグネチャーはマッサマンカレーの再構築!?
料理は3,990バーツのコースから。土日のみ2,990バーツのランチコースがある。マッサマンカレーの新しい形を追求した「Massaman Curry, Fried Bread, 14 Day Aged Duck」
料理上手だった祖母の味をオマージュし、ヌサラーを星付きレストランに昇華したスターシェフ、トンが新店をオープン。全14席のみの瀟洒な邸宅のような空間が印象的だ。現場を任されたのはギリシャ出身の若きシェフ、モウディオス。ローカルフードの定番、マッサマンカレーがスペシャリテだ。鴨肉を入れた揚げパンを、甘さと辛さが同居するマッサマンソースにディップしながら食べるひと皿はまさに新感覚! コースの最後に供される8種のデザートワゴンサービスも圧巻。
前菜の「Laap」。もち米を揚げ、おかきのようなザクザク食感に仕上げた輪の裏側には、ほんのりスパイシーな牛のタルタルが詰まっている。
プライベート感ある店内には、トンシェフの家族写真が飾られている。
ディミトリウス・モウディオス|Dimitrios Moudios(エグゼクティブシェフ)
ギリシャ出身。ミュンヘンの2ツ星レストラン、アトリエをはじめ、デンマークやオランダの星付き店で修業。昨年6月にランヤーイ・ヌサラーのエグゼクティブシェフに就任。グループ店の監修も。
Lahnyai, 31 Soi Suanplu 2, Mahamek, Sathorn
tel:062-242-5966
ⓂLUMPHINI
営)18:00~20:40 最終入店(月、火、金)、12:00~、12:30~、13:00~、18:00~20:40 最終入店(土、日)
休)水、木
※要予約 ※祝不定休 ※スマートカジュアル推奨
www.lahnyai.com
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Potong|ポトン
伝統×革新を追求する、新星女性シェフ。
料理はすべて9,830バーツのコースから。メインの「アヒルずくめ」。熟成したアヒルのローストを中心に、肉をレモングラスと合わせてムースにしたものや、ミンチを使って麻婆風にしたものなどがのる。
ヤワラートの路地に立つ築120年の建物は、中国から来た彼女の先祖の家であり元薬局でもある。5代目であるパムのインスピレーション源は、この歴史から来ているという。「長い時間の中で定着したタイ中華をさらに進化させることが使命」と話すパムは、塩味、酸味、辛味、メイラード反応(香ばしさ)、食感を極めることで、新しい味を生み出す。シグネチャーのアヒル料理は、マリネ、火入れ、ドライエイジング、ローストなど、伝統と現代の調理法を織り交ぜて作り出した最高傑作だ。
前菜のカニ料理。手前のマッドクラブの甲羅裏には、カニの卵のジャムと黒コショウジャムが潜む。奥の渡りガニのペーストと、トーストに塗って楽しむ。
コンフィしたエビは、エビの殻やレモングラスなどを使ったトムヤムクン風スープと。タイ国旗を模した米粉の麺が目を引く。
かつては薬局だった趣が残るインテリア。
ピチャヤー・スントーンヤーナギッ(パム)|Pichaya' Pam' Soontornyanakij(オーナーシェフ)
ニューヨークのジャン・ジョルジュでフレンチの技法を学び、2020年に自身の店ポトンをオープン。24年、「アジアのベスト50レストラン」で最優秀女性シェフ賞を受賞。
422 Vinich 1 Road, Samphanthawong
tel:082-979-3950
ⓂWAT MANGKON
営)16:30~20:00 最終入店
休)火、水
※要予約
www.restaurantpotong.com
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Choen Restaurant|チョーエン・レストラン
薪火と炭火を駆使し、香りをエッセンスに。
コースは2,800バーツの1本のみ。3カ月に1回メニューが替わる。最初に、その日使用する食材をプレゼンテーション。タイを中心に、インドシナ半島の食材が集結。
2022年10月にオープンしたチョーエンでは、ガイヤーン(焼き鳥)などに代表される、炭火を使ったタイ料理に着目。遠火で長めに焼くものや脂を落としたいものには薪火、カレーなど煮込む料理は炭火と、コース料理のほぼすべてに活用している。ニンニクの芽と一緒に炙って香り付けをしたり、ラムヤイといった果物の木を薪に使ってフルーティな香りを纏わせたり、香りへのこだわりは随一。皮目をパリッと焼いたナマズの蒲焼きは、コクのあるカニの卵と辛味があるマメ科の植物を添えるなど、自由自在な組み合わせもおもしろい。
メインのひとつ「Goby Roulade」。川エビのすり身の周りにハゼを巻いてふんわり蒸し上げた。甘味のある梅や味噌、トウガラシのソースをお好みでつけてみて。
前菜の「Salted Crab Relish」。ナマズの蒲焼きとカニの卵、ワサビのような辛味があるマメ科の植物を混ぜて一緒に食べる。
タイ産のスジアラは皮目を薪で香り付け。ほんのり甘味のあるショウガ醤油がクセになる。
炭の香りが漂う店内は、木や石といった自然素材を生かしたインテリア。ゲストの到着時間に合わせて火を準備するため、基本は一斉スタート。
122-124 Soi Pantachit, Pomprap, Pomprap Sattruphai
tel:063-893-3663
ⓂWAT MANGKON
営)9:00~
休)月、火
※要予約
@choenrestaurant
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Wana Yook|ワナ・ヨーク
タイ南部にフォーカスした緩急あるコース。
料理は4,500バーツのコースから。メイン料理の「Gaeng Kua of Beef/Huang Fermented Pork」。白身魚やタケノコを入れた南部らしい激辛カレーや豚肩肉の煮込みが付く。アヒルの黄身の醤油漬け、鶏の黄身のナンプラー漬けは、バーミキュラで炊いた2種のご飯やおかずと。
100年前の屋敷をリノベーションした一軒家レストラン。タイ料理の中でも特に辛いことで知られる南部の郷土料理を、イノベーティブな前菜や伝統的な味を織り交ぜて展開。グルマンから人気を集め、昨年ミシュラン1ツ星を獲得した。ジャスミンライスの玄米、ジャスミンライスの新種、もち米、黒米のもち米の4種の米にもこだわりがあり、定食スタイルで供されるメインの要。一度食べると思考が停止するほど辛いカレーや、発酵豚肉の炒めものといったおかずは、どれもご飯にぴったり。鶏とアヒル、2種の味付け卵が料理をマイルドにしてくれる。
前菜の「Sour Orange Curry/Crab Roe Relish/Fried Sand Crabs」。サクサクしたスナガニの下にはもち米が潜む。ターメリック風味のチキンブイヨンを添えて。
コースに使われる4種の米。
2階の一室。店内にはオーナーが集めた絵画やオブジェなどアートコレクションが点在。
老朽化を防ぐため、雨よけの屋根を設置。
515 Victory, 5/15 Phayathai Road, Ratchathewi
tel:063-662-3598
ⓂVICTORY MONUMENT
営)18:00~、19:30~、20:30~
休)月、火
※リノベーション中のため5月末まで休業 ※要予約
@wana.yook
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●1タイバーツ=約4円(2024年7月現在)
●日本から電話をかける場合、タイの国番号66の後、市外局番の最初の0を取ります。タイ国内では掲載表記通りにかけてください。
●各紹介アドレスのデータ部分のⒷはBTSの駅、Ⓜは地下鉄の駅、Ⓢは国鉄の駅を示しています。
●掲載店の営業時間、定休日、商品・料理・サービスの価格、掲載施設の開館時間やイベントの開催時期などは、取材時から変更になる可能性もあります。
●商品・料理・サービスの価格は、表示価格とは別に消費税やサービスチャージがかかる店もあります。
●仏教の祝日は、アルコールの提供を控えたり休業になる店が多いためご注意ください。
*「フィガロジャポン」2024年7月号より抜粋
photography: Satomi Matsui (West Mountain), coordination: Sachiko Matsumoto (Chico Design)