残暑の身体にしみわたる、絶対飲むべき地中海の「島ワイン」4選。

Gourmet 2024.09.11

日本全国で、台風をはじめとする豪雨の印象が強かったこの夏。子どもたちの夏休みは終わり、大人たちも夏の浮かれた気分を引き締めなくてはと思う秋の入り口9月。しかし虫の声は聞こえても、まだまだ汗ばむどころか汗の流れる陽気が続くこの時期。そんな残暑の中で、さて何を飲もうか。

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3000〜4000円台の地中海から届いた美しいワインたちが大集合。今回はプレゼントもご用意、ぜひ記事を最後までお楽しみください。

「島ワイン」、遠い島からの波の音と潮風に、それぞれの夏を振り返る。イタリア、スペイン、フランス。ワインの中にほんのり塩を感じながら、するする喉を通る冷たさに、まだ暑さの中にいる身体を癒やす。......という予定だったのですが、思いの外、集めた島のワインがおいし過ぎて! するする飲むのがもったいなくなるような、旨味じっくりタイプも登場。

今回の試飲参加者:
浅妻千映子 J.S.A.認定ワインエキスパート。雑誌やウェブメディアで取材、執筆する傍ら、ワインスクールのアカデミー・デュ・ヴァンでワイン&クッキングクラスの講師をしていた経験も。『東京最高のレストラン』(ぴあ 刊)の採点者を約20年つとめている。好きなワインのタイプは海、汗、火花、キノコ、鉄棒、鉛筆など感じる、ミネラル系。

まりモグ フィガロジャポン編集部、本誌グルメ担当。2021年、J.S.A.認定ワインエキスパートを取得。幼少期から北京を拠点にアジア、欧米、太平洋の島々などを旅し、モンゴルの羊鍋からフランスのエスカルゴまで、さまざまな現地の料理を食べ歩く。特に香港は、多い時で年4回のペースで通うほどの"香港迷"。食べ過ぎ飲みすぎがたたり、28歳で逆流性胃腸炎を発症。好きなワインのタイプはブルゴーニュをはじめとした冷涼地系。

カナイ フィガロジャポン編集部、WEBグルメ担当。2023年、J.S.A.認定ワインエキスパートを取得。大学時代、元週刊プレイボーイ編集長で現在はエッセイスト&バーマンの島地勝彦氏の「書生」としてカバン持ちを経験、グルメの洗礼を浴びる。ホテルの配膳のバイト→和牛を扱う飲食店に就職した後、いろいろあって編集部バイトから編集者に。好きなワインのタイプはイタリアをはじめとした日当たり良好系。

>>これまでの「フィガロジャポン編集部の、ワイン本気飲み!」連載はこちら


カナイ まず一本目です。

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リゲア 2023 750ml ¥3,520(編集部調べ)/ドンナ・フガータ(クリオインターナショナル)

浅妻 レストランで出てきてすっかりとりこになった「ドンナ・フガータ」。いろいろ種類がある中で、島を感じるにはこれがいいかなって。エチケットからもうシチリアの海を感じませんか!

カナイ 23年ヴィンテージからラベルデザインとボトルデザインが一新されました。確かこれ、パンテレリア島だったのでは。シチリアのさらに西側にある小さな島。

浅妻 そうです、そう。ブドウはジビッポとあります。

カナイ マスカット・オブ・アレキサンドリアのシノニム(注:同じ品種の地域名)ですね。パッシートとか、甘くするタイプもある中で、これはドライのタイプです。

まりモグ この香り! 確かにマスカット系です。緑のブドウ。 飲むと......なんか甘味もあるのに、ちょっと苦みがあって、ミネラルがあって、最後に塩がきますね。

浅妻 すごい、目の前に海が浮かぶ。フルーティで華やかな香りに気分が上がり、飲むと海の水を感じるミネラルと塩。ああ、白と青と黄色の壁の部屋で青空を見ながら飲みたい。

まりモグ しっかり冷やして飲みたいですね。やっぱり魚介マリネとか、あとはフリットも絶対いける。イカ、タコ。

カナイ やっぱりちょっと苦みがある感じがしますね。なんかルッコラとか合う感じ。最近、家でシチリア産のオリーブオイルをめっちゃ使ってて。これもなぜか塩分をすごい感じるんです。サラダも肉も、お塩使わなくてもいけちゃう。イタリア人の知り合いに聞いたら、「現地人は多分、日本人が醤油使う感覚で使ってるかも」って言ってました。

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カナイ 2個目はまりモグさんの大好きなトロワザムールから。

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ソン・レブレ 2022 ¥4,620/カティ・リボット(トロワザムール)

まりモグ いまトロワザムールで「フィガロを見てきました」って言うと、2階のバーで1杯無料で飲めちゃいますよ。

カナイ (グラスを透かして)結構濃いですね。

浅妻 (香りを嗅いでひと口飲んで)なるほど。若干酸化のニュアンス? 香りの傾向はリンゴというか。

まりモグ ちょっと草っぽい感じ? 最初だけかな?

カナイ ちょっと開いてきてからのほうがいいかもですね。なるほどな。でも、確かにリンゴです。

浅妻 スペインはマヨルカ島。昔、マヨルカに別荘を持っている日本人の話を聞いたら「ビーチはみんなトップレス」と。それはもう30年前で、いまは違うみたいですが。いい時代、だったのか?(笑)

カナイ (スマホで調べながら)標高500メートルぐらいだから、意外と高いとこかもですね。なんかトレッキングが有名って書いてある。

まりモグ おそらく誰が飲んでもナチュールだってわかる香りです。

カナイ 「石灰岩質」って書いてあるから、飲んだ後になんかそれっぽいミネラルも。

浅妻 私的にちょっとシュナン・ブランとか近い。少し硬い感じというか。

カナイ それっぽい感じありますね、ロワールのシュナンみたいな。これちょっと置いといたら雰囲気変わるかも?

まりモグ そんな気がします。島っていう感じでもないかもしれないけど、ゆっくり飲んでいたら開いてきそうな。後でまた飲みましょう。

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浅妻 実はこれ、自称ロゼワイン推進委員を名乗る、ロゼ好きの仕事仲間お薦めの1本。君嶋屋さんで扱っているもので、その知り合い曰く、君嶋屋さんは昔からコルス(注:イタリア語ではコルシカ島)に力を入れてるとか。 そしてこの1本は、若干クセありと聞いています。コルス島北西部、海抜200〜400メートルにブドウ畑があって、降水量が少なく、強い日差しと風で畑の土はいつも乾いているそう。コルスの果樹園と言われるエリアだそうで、君嶋屋さんのページには「このロゼは地中海のサンセットを連想させる」とあります。

カナイ では早速。むむ。ちょっと還元香かもっていう、なんかあれかな、1回ぐるって回すといい感じになるかも......。

浅妻 うん、うちに秘めたミネラルがありそうなんだけど、それがくっと出てこないの。ナチュラルな造りだから、ご機嫌に左右されているのかも?

まりモグ この連載でも最初の頃にあった、自然派で還元がほんとに強い時の、あれですかね。しかし、ロゼ頼んでこれ出てきたらちょっとびっくりはするかも。いわゆるロゼに期待する要素はあまりないというか、するっと飲むより、腰を据えちゃう感じ? 

カナイ こっちも10分後に期待ですかね。

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エトナ・ロッソ 2021 750ml ¥4,600/トルナトーレ(セパージュ)

カナイ 次は、僕の好きな1本です。ネクストピノの方向性も狙ってるのかな、というエトナロッソ。ネッビオーロっぽくもあり。実際は、ネレッロ・マスカレーゼと、ネレッロ・カップッチョっていうエトナの品種です。(注:ネクストピノ......現在、気候変動や世界的な需要の高まりでブルゴーニュのピノ・ノワールの値段がどんどんと高騰しており、ピノ・ノワールに次ぐエレガントな淡い赤ワイン品種が注目を浴びている)

まりモグ (グラスに顔を近づけて)あ、もうスパイスが。

カナイ 本当、甘草とか。あと、たまに八角の香りがする時が。

浅妻 うん、漢方っぽいと感じる。そして飲み物というよりお料理っぽいというか。

カナイ ワイン評論家のジェームズ・サックリングもトルナトーレがすごい好きらしくて。今度日本で初開催される彼のテイスティングイベントでこの生産者も呼ぶって言ってました。

浅妻 きめ細かいタンニンが口に残る感じがすごいです。ピノっぽさというか高貴さって言うとちょっと違うかもだけど、とてもおいしい。

まりモグ そう、タンニンは印象的。でも本当に、緻密ですよね。ちょっとネッビオーロっぽいかな。

カナイ これで確か4600円ぐらいなんです。もう1個上のランクもあるんですけど、それはネレッロ・マスカレーゼ100%でもっとエレガント系になってきます。

浅妻 多分、ステーキとかと食べたら、脂をスッと、拭ってくれそうな気がします。強いワインで抑え込む感じではなく、スッと。そうしたら3人であっという間に瓶が空になりそうかも。

まりモグ チーズとかもいけそう。油っぽいやつと合いそうですね。

カナイ ちょっと上に油浮いてくるような感じの濃いチーズで。(飲みながら)もうちょい温度下がってもいいかもですね。

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カナイ ではおかわりタイムです。まずはリゲア。

まりモグ これはさっきの冷えた温度が良かったですね。温度が上がってくると、どんどん甘い印象になるかな。

カナイ 冷たいほうが心地よく飲めるけど、苦みと甘み、綺麗なバランスが見えて、これもなかなかですよ。アルコールは12%ぐらいですか。やっぱり元のブドウの糖度が高いからな、マスカット系は。

まりモグ 対してマヨルカのこちらは意外と度数が低かったですね。11.5%。

カナイ 元々、アルコール度数上がりやすい品種をそうでなく仕上げた、みたいなこと書いてありましたもんね。

浅妻 リンゴの匂いするやつって、ちょっとだけ温度高いほうがいいような気がする。 旨味が増してきましたね。そして出汁系の味の出現。

まりモグ おいしいです。旨味たっぷり。冷やして、ゴクゴクって感じではないかもしれないけど、じっくりと。なんか無性に沖縄そばとかと合わせてみたい。

浅妻 これまたピンポイントな(笑)。

カナイ コーレグースとかの酸味と辛さに合うかも。あと、アーサの天ぷらとか合うんじゃないですか。ミネラル感もあるし。なぜか沖縄を求めてますね。

浅妻 ならば島豆腐とかもどうですかね。余談ですけど、お家で麻婆の素を使わずに麻婆豆腐を作る時、島豆腐使うのお勧めです。水分も抜けているし、豆腐自体にほんのり塩味もついてるから味が決まりやすいですよ。

まりモグ やっぱナチュールって、毛細血管にこう、じわっていく感じ、あれにはまってナチュールに傾倒したっていうのがあるんで、まさにこういう感じだよな、みたいな。すごくいいなこれ。

カナイ ミネラル感、最後引っ張りますね。すごい口が引き締まって終わる。 マヨルカは石灰岩質って書いてありますね。

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まりモグ コルスのロゼ、チーズの香りする。なんか発酵してる感じ?

浅妻 この香り、嗅いだことあるな。ちょっと硫黄みたいな感じもある。

カナイ 品種はシャカレッロって書いてある。白ワインも造ってる黒ブドウですね。

浅妻 「丸みのある口あたり」って書いてあるから、多分こういうこと。なんだろう、味醂のような? なにかを合わせて食べるともっと良くなるのかもしれない。
<後日談>コルスには意外や意外、ハンバーグが合いました! 

浅妻 エトナ・ロッソ、なんだか野生味も出てきましたね。タンニンが少し落ち着いて、エレガントに。ネクストピノという方向では、ジュヴレ・シャンベルタンを連想しました。

カナイ そこまでお褒めいただけると......って、僕が造ってるわけでもないんですが(笑)。

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「ドンナ・フガータ リゲア 2023」を1名様にプレゼント!

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text: Chieko Asazuma

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